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3.10 船外機
 船外機の外観は2・355図に示すような構造になっている。
 
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2・355図 船外機の外観
 
1)トップカウリング・ボトムカウリング
 トップカウリングとボトムカウリングは運転時及び保管時に海水や雨水がパワーユニットにかかるのを防いでいる。トップカウリングにはエンジンが消費する空気を取り入れるエアダクトが設けられている。この空気通路はチルトアップして保管されている時でも雨水の浸入を防止できる形状となっている。
 トップカウリングは前後のフックとクランプによってボトムカウリングヘ組み付けられている。接触部はゴム製シールによって防水対策が施されている。防振対策のため、ボトムカウリングはグロメット(フレキシブルマウント)を介してアッパケーシングに連結している。またカウリング内に水が浸入しても速やかに排出されるように、ボトムカウリング下面に数個の水抜き孔が設けられている。
2)ブラケット
(1)小型機種
 トランサムボードヘクランプブラケットを載せ、クランプハンドルを手で確実に締め付けて船外機をボートヘ固定する。
 左右のクランプブラケットとスイベルブラケットはクランプブラケットボルトによって結合され、これを支点にしてチルトアップ、ダウン操作を行う。スイベルブラケットにはステアリングピボットシャフトが組み付けられ、この首振りによって舵切り操作を行う。ステアリングピボットシャフトはダンパマウントを介してボトムカウリングとアッパケーシングに連結している。
 スイベルブラケットに働く前進のプロペラスラスト反力はチルトロッドで受け止められる。後進の反力は逆方向に働くので、跳ね上がりを防ぐためチルトロックプレートがチルトロッドに噛み合っている。チルトアップ操作時または水中障害物への衝突時にはこの噛み合いが外れて船外機が跳ね上がる。
 浅瀬航行レバーを動かしてチルトロッドに当てるとプロペラが少し引き上げられ、前進方向にのみ浅瀬航行ができる。
(2)フルピボット式
 小型機種の一部にフルピボット式が採用されている。
 アッパケーシングとスイベルブラケットは上下部に組み付けられた輪型のマウントラバーを介して連結され、パワーユニット、アッパケーシングとロワーケーシングは一体となって360°回転できる。前進(または前進と中立)のみシフト可能な機種では前進状態から180°回転させることによって後進状態となる。
 輪の一部を切断した形状のマウントラバーはエンジンの振動がボートに伝わるのを防ぐ。マウントラバーの内側に組み付けられるブッシュはグリース潤滑されアッパケーシングの回転を容易にする。
 後進状態ではアッパケーシングに設けられたカム部によってチルトロックプレートがチルトロッドに噛み合い、スラスト反力による跳ね上がりを防ぐ。前進状態ではこの噛み合いが外れるので、水中障害物に衝突すると容易に跳ね上がる。
(3)中、大型機種
 35kW以上の機種ではプロペラスラストが増大するので、クランプハンドルを手で締め付ける方式では船外機を安全に固定することができない。従って、トランサムボードにクランプブラケット取付ボルト穴を加工し、ボルトとナットを使って確実に締め付けて固定する。これらの機種では「脱着容易」という船外機の特徴はなくなる。
 クランプブラケットの上部ボルト穴は4個あり下部はスリット状になっているので、トランサムボードに加工した穴の位置を変更することなく船外機の取付高さを変える(ハイマウントする)ことができる。また、ボート内への浸水とトランサムボードヘの吸水を防ぐためボルトにシール剤を塗って取り付けることが必要である。また、クランプブラケットにはハイドロチルト、パワーチルト、パワートリム&チルト等の付属装置も取り付けられる。
3)アッパケーシング
 アッパケーシングの外観を2・356図に、また断面を2・357図に示す。
 アッパケーシングはグロメットを介してボトムカウリングと連結され、ロワーケーシングとはボルトによって結合されている。
 アッパケーシングの内部にはエキゾーストマニホールドが組み込まれ、この周囲に放出される冷却水と排気ガスが混ざり合ってロワーケーシングから水中へ排出される。アイドリングまたはトローリング時、水面の上昇による排圧増加を防ぐため、アッパケーシングに設けられたアイドルリリーフホールから排気ガスは空中へ排出される。
 ステアリングピボットシャフトの下部にはダンパマウントが組み付けられている。これはアッパケーシングに伝わるエンジン振動を遮断しプロペラスラスト反力を受ける。
 
2・356図 アッパケーシング
 
2・357図 断面図
 
4)ロワーケーシング
 ロワーケーシングの外観を2・358図に、断面を2・357図に示す。また、ロワーケーシングの構成部品を2・359図に示す。
 
2・358図 ロワーケーシング
 
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2・359図 構成部品
 
 ドライブシャフトに伝えられる動力はベベルギヤ(ピニオンと前、後進ギヤ)によって減速及び方向転換が行われ、プロペラシャフト、プロペラヘと伝達される。ドライブシャフトとプロペラシャフトはボール、ローラ、テーパローラ、ニードル、ブッシュ等のベアリングで支持されている。このベアリングは駆動反力によるラジアル荷重とスラスト荷重を受ける。
 シフト機構でドッグクラッチを動かすことによりプロペラの回転方向を変え前進、中立、後進の状態にすることができる。
 冷却水はドライブシャフトで駆動されるウォーターポンプによってウオータインレットから吸い上げられ、加圧された海水(航行水域の水)はパワーユニットに送られる。ロワーケーシングには水道水でエンジン内部を洗浄するためのウオータインレットプラグが設けられている。中、大型機種は水洗キットを使用する。
 ロワーケーシング内はオイルレベルゲージ位置までオイルが満たされ、内部のギヤ、ベアリングを潤滑する。ドライブシャフトの回転によってこのオイルは循環する。オイル漏れと海水の浸入を防ぐため、ドライブシャフトとプロペラシャフト、シフトシャフトにはオイルシールが組み込まれている。
 アンチキャビテションプレートの下面にはロワーケーシングの電飾を防止するアノード、トリムタブが取り付けられている。
 ピトー管式スピードメータ用動圧取出部が設けられている機種もある。







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