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(2)スロー系統
 エンジンの回転速度が低いときは、ベンチュリを通過する空気の流速が遅く、また、メーンノズル先端がフロートチャンバの油面より高いのでメーンノズルから燃料を吸い出すことが出来ない。スロー系統はこのようにエンジンの低回転速度時に必要な燃料を供給するためのもので、2・153図に示すように、スロージェット、スローエアブリード、アイドルポート、スローポート、アイドルアジャストスクリュウなどで構成されている。
 
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2・153図 スロー系統
 
 スロージェットはスロー系統における燃料の流量を計量するものであり、スローエアブリードはスロージェットで計量された燃料に空気を混合させて泡状にし、燃料の微粒化を促進させるためのものである。
 アイドルポートはスロットルバルブより下側(インレットマニホールド側)に設けられ、スロットルバルブが閉じられ、メーンノズルやスローポートから燃料が噴出しないアイドリング時に燃料の供給を行うものである。アイドルアジャストスクリュウはアイドルポートの面積を変化させ、アイドリング時にアイドルポートから吸い出される燃料の微調整を行うもので、先端はテーパ状に仕上げられ、外部からドライバなどによって調整できるようになっている。
 スローポートは全閉時のスロットルバルブよりもわずか上側(エアホーン側)に設けられており、低速回転速度時にスロットルバルブが開き始めた時にアイドルポートと共に燃料を供給し、メーンノズルから燃料が十分に噴出するまでの間のエンジン回転を円滑にするものであり、その形状はスロットルバルブが開くに従いポートの面積が増すように造られている。
(3)メーン系統
 メーン系統は通常航走時における燃料の供給を行うもので、2・154図に示すようにメーンジェット、メーンエアブリード、メーンノズル、ベンチュリなどで構成されている。
 メーンジェットはメーン系統における燃料の流量を計量するもので一般にフロートチャンバ内の下部に取り付けられている。
 
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2・154図
 
 メーンエアブリードは2・155図に示すように空気を計量するジェットと外周に数個の穴があいたエマルジョンチューブからなっており、メーンノズルから吸い出される燃料の微粒化を促進するために、メーンジェットで計量された燃料に空気を混合させて泡状にしている。
 メーンノズルは主燃料を供給するもので、その先端部は内側ベンチュリ最狭部付近に取り付けられている。
 ベンチュリは燃料を吸い出すために空気の通路を絞って、流速を速くして負圧を発生させるところで、一般に燃料の微粒化を良くするために2・156図に示すようなダブル(二重)またはトリプル(三重)ベンチュリが用いられている。
 
2・155図 メーンエアブリード
 
2・156図
 
(4)パワー系統
 一般にメーンジェットの口径は経済混合比を保つような大きさなので、高出力時に要求される濃い混合気を形成する燃料供給が出来ない。このような時に補足の燃料を供給するのがパワー系統である。パワー系統は高負荷時に要求される濃い混合気を供給するために、メーン系統に燃料を補足するもので2・157図に示すようにパワージェット、パワーバルブ、バキュームピストンなどで構成されている。
 
2・157図 パワー系統
 
2・158図 パワーバルブの作動
 
 バキュームピストンの上部には、スロットルバルブ下側の吸入負圧が導かれており、この負圧が規定値以上の時にはスプリングのバネ力にうち勝ってピストンを上方に吸い上げている。スロットルバルブの開度が大きくなって吸入負圧が規定値より下がる(大気圧に近づく)と2・158図に示すようにスプリングのバネ力によってピストンを下に押し、パワーバルブを開いてパワージェットで計量された燃料をメーン系統に追加供給する。またパワーバルブの開閉をスロットルバルブに連動するリンク機構で行う機械式のものもある。
(5)加速系統
 加速系統のスロットルバルブを急激に開いた場合に、一時的に混合気が薄くなるのを防ぐと共に加速時に必要な濃い混合気を加速ポンプを用いて供給するもので、加速ポンプは2・159図に示すようにピストン、シリンダ、チェックバルブ、加速ノズル、リンク機構などで構成されている。
 チェックバルブにはインレットチェックバルブとアウトレットチェックバルブがある。インレットチェックバルブはシリンダ下部に設けられピストン下降時に閉じてシリンダ内の燃料がフロートチャンバヘ逆流するのを防ぎ、アウトレットチェックバルブはシリンダと加速ノズルの中間に設けられ、ピストン上昇時に閉じて加速ノズルから空気が吸い込まれるのを防いでいる。
 
2・159図 加速系統
 
(6)始動系統
 始動系統は、寒冷時の始動を容易にするもので、キャブレータ内部に独立した機構を設けたもの(スタータ式)とベンチュリ上部にチョークバルブを設けたもの(チョーク式)があり、通常時よりも濃い混合気をインレットマニホールドに供給するものである。
 ここでは自動式チョーク機構について説明する。
 冷えている機関の始動は燃料の気化が悪いため点火が困難であり、多量のガソリンを供給する必要がある。2・160図に示すように、ベンチュリ上部に設けられたチョークバルブを閉じて空気量を制限すると、チョークバルブ下流の圧力は低下して多量の燃料(ガソリン)を吸い出すことができ、始動が容易となる。従って、チョークバルブは始動時以外は全開にしておくバルブである。
 自動式チョークバルブはオートチョークと呼ばれ、その作動はバイメタル製のサーモスタットスプリングを用い、排気ガスの熱でスプリングを膨張させて、この伸びでチョークバルブを開くものと排気ガスの熱を電気量に変換してチョークバルブを開くもの及びバッテリからの電流によりチョークバルブを開くものなどがある。
 2・160図は電気加熱式自動チョークの一例で電熱コイル、正温度特性サーミスタ、チョークリレーなどで構成されており、チョークバルブはバイメタルにより規程温度以下では全閉している。この状態でエンジンを始動すると、充電装置から電圧によってチョークリレーの接点が閉じて電熱コイルにバッテリから電流が流れ、バイメタルが加熱されて温度が上がると、チョークバルブは次第に開く。バイメタルが十分に加熱されると、チョークバルブは全開となるがサーミスタによって電熱コイルに必要以上の電流が流れないようになっている。
 
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2・160図 電気加熱式自動チョーク







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