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4.3船外機仕様諸元
 船外機の仕様諸元には、通常のエンジンでは出てこない項目がある。ここでは、特に特徴的な諸元(項目)に付いて簡単に説明する。
1)トランサム高さ
 トランサム高さは、ボート及び船外機の両者にあり、この両者のトランサム高さを適合させることが必要である。
 船外機のトランサム高さは1・20図の様に、船体に取り付けるブラッケトの内面(トランサムボードの上面)からプロペラ上部のアンチキャビテーションプレート下面までの寸法をいう。又船外機のトランサム高さには5種類ある。
 ボートのトランサム高さは、船外機を取り付けるトランサムボードの高さを垂直に測った寸法である。
 
2)全開回転域
 船外機はスロットル全開で使用される機会が多い。スロットルを全開した時に船及びエンジンが最適な状態になるようにプロペラピッチを選択する。その結果、エンジン回転数がその範囲内になるように決められているのが全開回転域です。
 
1・20図 トランサム高さ
 
1・21図 チルトアップ角度
 
3)トリム角度
 船外機艇も浅瀬を航行したり、航行中の船の角度を変更させたりする必要が生じる。この時に船外機のロアーケース部分を前側に送り込んだり、後ろ側に跳ね上げたりして調整する。この調整可能範囲角度のことをトリム角度という。
 
4)チルトアップ角度
 船外機艇は浅瀬に係留したり、陸上に上架したりする時にロアーユニットが邪魔にならないように船外機本体が跳ね上げられるようになっている。チルトアップ角度はその跳ね上げ可能な角度を表す。1・21図において(1)がトリム角度、(1)+(2)がチルトアップ角度である。
 
5)ステアリング角度
 船外機艇には舵は付いていない。つまり船外機で舵を切る構造になっている。船外機本体を左右に振ることでプロペラの向きも同時に変わり、その時の推力で船が方向を変えるという仕組みになっている。ステアリング角度とはその船外機が左右に何度振れるかという角度を表している。1・22図参照
 
6)ギヤシフト位置
 仕様諸元表のギヤシフト欄にF・N・Rといった記号が書かれている。
 F:前進 N:中立 R:後進を表している。F(前進)の表示がないものはギヤシフトができない。従って、エンジンが始動すると直結でプロペラは回転している。また、R(後進)の表示がないものは船外機そのものを回転させてプロペラの向きを変えて船を後進させる。
 
1・22図 ステアリング角度
 
1・23図 ギヤシフト
 
7)クラッチ形式
 ロアーケース内で動力伝達の切替を行う形式で、一般的には1・24図に示すようなドッグクラッチが採用されている。ドッグクラッチは回転しているドッグ(ギヤの歯)に停止しているドッグをかみ合わせる形式で、素早くシフトすることが重要である。
 
1・24図 ドッグクラッチ
 
1・25図 プロペラ回転方向
 
8)プロペラ回転方向
 プロペラが左右どちらの方向に回転するかという表示で、プロペラの後方から見た回転方向で表す。一般的には1・25図に示すように右回転であるが、船外機を2機取り付ける場合は一方のプロペラを逆回転にするのが一般的であるため、左回転のものを揃え
た機種もある。
 
9)プロペラ駆動方式
 これはプロペラシャフトヘのプロペラの固定方法を表し、二つの方法がある。1・26図に示すシアーピン方法と1・27図に示すスプライン方式がある。スプライン方式はまさに直結であるが、ダンパーラバーが入っていて緩衝材となっている。
 
1・26図 シアーピン方式
 
1・27図 スプライン方式
 
 
4.4 船外機構造の特徴、特異性
1)水中排気で消音効果
 船外機の排気は水中排気が一般的であり、水中に排気することで消音効果が得られる。
このことにより、近年環境問題への対応から4サイクルエンジンが主流になりつつある。
 
1・28図 水中排気
 
2)フルピボットで自由自在
 リバースギアのシフトがない機種はフルピボットと言って船外機が1・29図に示すように360°方向どこでも回転させられる様になっている。これはリバースの操作のみでなく船をその場旋回させられるなどの特徴を持っている。
 
1・29図 フルピボット
 
1・30図 ラニヤード付エンジンストップスイッチ
 
3)操船者が席を離れるとエンジンストップ
 船外機にはラニヤード付きのエンジンストップスイッチが付いている。ラニヤード(線)の先端の金具を1・30図のように操船者の身体の一部に取り付けて操船する。万一、操船者がシートから落ちたり、落水したりした場合は、線がエンジンストップスイッチの一部を作動させ、接点を接触させてエンジンがストップする仕組みになっている。
 
4)スピードメータは水圧式
 船外機のロアーケースに1・31図のようにセンサが付いたものがあり、そこから水圧を読みとりスピードメータの針を作動させる。ロアーケースに付いているものは船底にセンサを付けている。センサはピトー管で水圧を感じ取りスピードメータの針を作動させる。
 
1・31図 スピードメータ
 
1・32図 冷却水の確認
 
5)冷却水の確認
 エンジン冷却水はポンプで船外の水を吸い上げているが、水が本当に上がっているか簡単に確認できるように、1・32図に示すように船外機のボトムカウリングの下に水の噴き出し口があり、水が出ていれば冷却水は汲み上げられる。







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