2)摩耗
摩耗は、(1)相互結合面の凝着と剪断、(2)接触面での合金化、(3)移着片の疲労、(4)新しい露出面の酸化、(5)酸化摩耗片による摩減、(6)化学的腐食、などを含み、加工硬化、アラサの変化、接触面での新しい相の生成や合金化などが伴なう複雑な現象であるとされる。
ここでは微視的な(1)キズ、(2)焼付、(3)疲労、(4)ハクリ、(5)腐食、(6)浸食、などの現象の結果としての材料微小片の離脱の累積が、ある面積的な比較的スムースな拡がりをもつものを摩耗とする。この摩耗が急激過ぎたり、寿命前の寸法変化が大き過ぎたりした場合を、事故、損傷的な摩耗とする。これらは何時でもその原因となった(1)〜(6)の損傷に拡大、復帰する可能性がある。典型的なものは多量の異物による表面層の摩耗、片当り(ミスアライメント、偏荷重、端部当り)などによる摩耗がある。摩耗の特徴は断面組織にほとんど変化が認められないことであろう。
補・23図 摩耗の例
通常摩耗痕
偏摩耗痕(焼付の兆候)
3)焼付
油切れ、起動、停止、過小スキマ、過低速、高速、高温、高荷重、片当りなどによって、摺動面間の固体接触となり、過熱、表面流動、カジリ、内部摩擦が急速に激しくなると、激しい発熱、ひきちぎれ、振動を伴ない、凝着による回転抵抗が急増する。
こうして回転トルクにうちかって摺動面の完全固着、即ち焼付に至ったり、摺動面の移動、即ちハクリや裏金面でのすべりを生じたりする。
過熱、表面流動、カジリ(線状キズ)は焼付の初期現象であるが、摩耗、キズと混同されることがある。焼付では表面層の凝着、硬化から内部摩擦過大となり、組織深部に至る流動、剪断、キレツ、ハクリなどに至る。
焼付組織は一般に、(1)低融点金属の脱出、(2)凝着、摩擦部の流動、(3)高融点金属の硬化、ハクリ、などが見られる。焼付はキズ、摩耗を伴いやすく、最終的にハクリとなりやすいが、通常前述の(1)、(2)で焼付と断定できる。即ち明らかな組織の変化を伴なう。
補・24図 焼付の例
焼付外観
焼付部の断面組織
4)疲労
「軸受の疲労は、繰り返し荷重の摺動摩擦による」が定説となっている。寿命がつきる場合の軸受の損傷は、この疲労か、「摩耗による機能の漸減」となろう。母材によるひずみの拘束効果は被膜厚さが減少する程、また被膜の弾性率が母材の弾性率に比べて小さい程大きいとされる。
これはホワイトメタルの薄合金化の効果、三層メタルの表面メッキの効果を説明し、さらに通常の疲労キレツの進展が表層部らか内部に至る機構をも示唆する。
疲労は通常、摺動方向直交のキレツが入り、接着面近くで強い側の拘束を受けて平行に移り、となり合うキレツがつながるとモザイク状に脱落するに至る。このキレツの方向は組織の弱い部分を走るのが通常である。
疲労は、応力勾配を少なくしたり、衝撃エネルギを吸収すれば軽減できると思われ、表面メッキによるなじみ効果や、アルミメタルの大きい伸びはこれらに相当するであろう。疲労を起した場合、必らずキレツを伴なうのが外観、組織上の特徴となる。
補・25図 疲労の例
合金疲労外観
ハクリ部断面
キレツ部断面
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