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2.6 排気ガス色の異常
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1)白色煙がでる
(1)燃料不良
 白煙は水蒸気が大気中に放出される時の現象であり、特に気温の低い朝などに顕著に表われる。燃料油の含有水分が多くなるとこの現象が表われるので、油水分離器やフィルタなどで水分をできるだけ除去しなければならない。また暖機運転後に白煙が消滅する場合は正常である。
 含有水分は重量比で0.5%以上になるとプランジャやニードル弁などの腐食摩耗を促進するなどのトラブルを生じ易く、燃焼反応により硫酸や塩酸などの有害な無機酸を生成し、主要部の腐食摩耗を促進する。
(2)冷却水漏れ
a)シリンダヘッドの亀裂
 触火面の亀裂が進展し、水ジャケットまで達すると冷却水が燃焼室へ流入して、始動時水滴が飛散したり運転中に白煙を出す。排気集合管に異常がなければシリンダヘッドを点検し交換修復する。
b)ヘッドガスケットの破損
 シリンダヘッドガスケットが損傷して、冷却水が燃焼室へもれ、燃焼ガスと共に水蒸気となって排出され白煙現象が表われる。シリンダヘッドのわん曲などを点検し修正しなければならない。
c)シリンダライナの亀裂
 ライナが運転中に振動を生じ、つば下部分に疲労破壊による亀裂を発生する。この亀裂が貫通するとジャケット内の水が燃焼室に流入して、白煙を排出する。
d)シリンダライナの孔あき
 外周面にキャビテーションエロージョンを発生すると、小さな凹みや小孔(ピンホール)などが無数に発生する。これらが進行して貫通すると、冷却水もれを生じて白煙を排出する。ライナ外周(冷却水の流入する反対側)にその徴候が見られる場合は、予防対策処置をしなければならない。
e)排気集合管の水もれ
 水冷式エキゾーストマニホールドの場合は、腐食や亀裂による水もれを起こすことがある。冷却水が排気ガス通路へもれると水蒸気となり、白煙を排出す。
 いずれにしても、冷却水がもれて燃焼室内へ流入すると白煙現象を生じるだけでなく、水量が多くなるとウォータロック現象を生じ、足出しなどの大事故を発生するので十分注意しなければならない。特に停止中に冷却水がもれて、燃焼室その他へ流入すると、錆付きなどの不具合も併発する。
 始動前には必ず冷却水の点検をして、水量が減少していないか確認しなければならない。
(3)着火ミス
 噴射した燃料が着火せず、細かな油滴となって排出されると、排気ガスが灰色になって見え、黒い細かな油滴が排気出口から飛散するので、周囲が汚れて運転不調となる。
(4)タイミング不良
 噴射タイミングが早過ぎたり、遅過ぎたりすると着火ミスによる白煙や灰色煙を排出し、運転不調となる。
 カム山やタペットなどの異常摩耗を始め、噴射タイミングを点検しなければならない。
 
2)青白色が出る
(1)オイル下がりが多い
 バルブガイドやステムシールが摩耗すると、ロッカ室内の潤滑油がバルブを伝わって燃焼室内へ流入したり、給気ポートや排気ポートで燃焼して炭化する。
 潤滑油が低い温度で燃焼すると白煙となり、高い温度で燃焼する青色煙を排出する。
(2)タービンの油漏れ
 シールリングの摩耗や折損により、潤滑油がタービンホイール室内へ流入し、高温の排気ガスに触れて燃焼すると白煙や青色煙を排出する。
 このような場合、タービンホイールが、カーボンにより軽く円滑に回転できなくなるので、ブースト圧力が低下して出力が低下する。
(3)オイル上がりが多い
 シリンダライナ、ピストンリングなどが摩耗したりピストンがスカッフを起こしたり、ピストンリング折損や膠着などを起こすと、オイルコントロール不良となり、燃焼室内へ多量の潤滑油がライナ壁を伝って上がり、燃焼する。従って排気ガスが青色味を帯びたものとなる。減筒テストにより不良シリンダを探して修復しなければならない。
 これらの原因以外に、オイル上がりが増加する原因としては、潤滑油の油面アップ、オイルジェットの吐出圧力変化や方向狂いなどがあるので、その辺も合わせて点検修復しなければならない。
(4)過冷却
 寒冷時においては気温水温ともに低く、運転中に冷却水温度が70℃以上にならないことがある。この様な場合は、主要運動部の熱膨張が不足し、摺動スキマが適正化せず、大きなスキマで運転されるため、オイル上がりやオイル下がりなどにより、潤滑油が燃焼室内で燃えて排気ガスが青白色化する。
 このような場合は、冷却水の温度が70℃以上になるように、サーモスタットを寒冷地向用に取替えたり、ヒートエクスチェンジャの海水量をバイパスしたり、絞るなどにより、冷却水温度を上げて運転しなければならない。







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