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3)黒煙が出る
(1)酸素不足
 噴射燃料が完全に燃焼するためには、噴射燃料に見合うだけの酸素、つまり空気が必要となる。空気中の酸素は標準状態で重量比23%程度である。
a)気温の上昇
 空気の温度が上昇すると、空気は膨張し、その分だけ密度が低下するので、酸素量が減少する。
 通常の場合、機関室内の温度上昇は最高で45℃までが限度であり、それ以上の場合は、完全燃焼に必要とする酸素量が確保できなくなり、不完全燃焼となる。また給気温度が上昇すると、ベース温度が上がるため、燃焼温度が上昇し、過大な熱負荷が加わることになる。燃焼温度は測定出来ないが、ヘッド出口の排気ガス温度は、室温が1℃上昇すると、通常約2.5℃上昇する。
b)エアクリーナの汚れ
 エレメントの汚れによる目詰まり、オイルバス式のオイル入れ過ぎなどがあると、吸入抵抗が増加して空気量が減少する。従って酸素不足による不完全燃焼となり、出力が低下して黒色排気煙となる。
 エアクリーナのエレメントやプレクリーナのスポンジシートなどは定期的に清掃又は交換しなければならない。
(2)過給機不良
a)タービンホイールの汚れ
 タービンホイールやケース内にカーボンが付着堆積すると、排気ガスの熱エネルギを十分吸収できなくなり、タービン効率が低下して回転速度が減少し、充分なブースト圧力が得られなくなる。定期的にタービンホイールやケース内を清掃しなければならない。
b)コンプレッサホイールの汚れ
 ホイールの表面やケース内面に汚れが付着すると効率が低下し、十分なブースト圧力が得られなくなる。
 従って定期的に清掃しなければならない。また少量の水を吸入させて清掃する場合は、必ず高速高負荷運転中に行なうようにしなければならない。
c)シールリングの不良
 シールリング膠着や折損、カーボン付着などが起こると、回転摺動抵抗が増加して回転速度が低下するのでブースト圧力が減少する。
d)メタル摩耗、焼付き
 ロータの軸受メタルやスラストメタルなどが摩耗や焼付きを生ずると円滑に回転できなくなり、ホイールとケースの干渉、ロータ軸の曲がりなどの重大事故を誘発する。従って定期的に点検すると共に、異音などが発生した時は直ちに点検しなければならない。
e)ブレードの損傷と曲がり
 タービンやコンプレッサホイールのブレードなどに損傷や曲がりを生じた場合は、率が悪化して、ブースト圧力が低下すると共に、タービンの振動や異音が発生する。振動や異音などが生じた場合は直ちに運転を止めて点検しなければならない。
f)過給機故障による運転不能
 振動発生やロータ回転不能などを生じた場合は、タービンホイール及び、コンプレッサホイールなどが逆に抵抗となり、運転不能となる。従って無過給接手に取替えて、1/2以下の負荷回転で緊急航行し帰港しなければならない。
 これら過給機の故障を発生すると排気ガスは黒色となって、排出する。
g)空気冷却器の汚れ
 過給機の故障ではないが空気冷却器の冷却フィンや冷却管内のスケール付着により、冷却効率が悪化すると、給気温度が高くなり空気の密度が低下して、酸素不足による不完全燃焼となり黒色排気ガスとなる。
 さらに排気温度も上昇し、熱負荷が大きくなり事故を生じ易くなるので、空気冷却器は定期的に清掃しなければならない。
(3)燃料不適
 燃料が機関の仕様に合っていなかったり、粘度が違っていたり、水分やその他の含有量が多過ぎる粗悪燃料であったりすると、プランジャやノズルの損傷摩耗が早く、出力不足となり高負荷時に排気ガスが黒色となる。また噴霧不良を生じ不完全燃焼となり、黒色の排気ガスを発生する。
(4)排気抵抗大
 排気管の背圧が大きくなると、シリンダ内におけるガス交換がうまくできず、一部の燃焼ガスが残ったり、排気タービンの効率が大巾に低下して、燃焼ガスの排気不良を招き、燃焼が悪化するので、排気ガスが黒色化する。
 排気抵抗は、管径に反比例し、曲がり個数や角度及び管長などに正比例する。また消音器の構造によっても大きく異なるので、機関の据付けに当たっては、排気管の計画図を画き、排気抵抗を計算し、許容限度を越えぬように、十分検討しなければならない。
 排気抵抗は、排気管の背圧(バックプレッシャ)を次図に示すように、測定して知ることができる。
 排気集合管又は過給機の出口エルボに、プラグが設けられているので、そこに排気ガス取出接手を取付けて、水柱マノメータヘ、パイプを接続して、測定する。排気ガスの熱により、ビニールパイプなどが解けないようにできるだけ、取出口より離れた所へ、マノメータを設置して、途中をビニールパイプで接続すると良い。
 
 
(5)圧縮漏れによる燃焼不良
 バルブシートの摩耗吹抜け、ピストンリングやライナの摩耗による圧縮もれが多い場合は、当然ながら燃焼不良を生じて、排気ガスが黒色化するので、圧縮もれを修復しなければならない。(圧縮圧力の測定方法は187頁参照)
(6)噴射不良による燃焼不良
a)噴射タイミングが早すぎる
 シリンダ内の赤熱空気温度が低く、着火遅れが大となり、着火と同時に多量の燃料が一時に急激に燃焼して、燃焼最大圧力が高くなり、ノッキングを起こす。また余りにも早過ぎると、上死点前で最高圧力となるので、逆転し易くなり、そのための出力損失が大きく、円滑な回転が難しく、過負荷運転状態に等しくなり排気ガスが黒色化する。
b)噴射タイミングが遅すぎる
 シリンダ内の圧縮温度が十分上がったところで噴射が始まるので、着火遅れが小さくなり、最高圧力が下がって、静かな運転ができる。しかし、噴射終りが大巾に遅れるので、燃焼時間が長びき排気が始まるまでの膨脹期間中燃焼が継続する(後もえという)ため、排気ガス色が黒色化する。又、排気温度の上昇など排気損失が増えて、熱効率が下がり出力が低下し熱負荷過大となるので注意しなければならない。
 シリンダ間の噴射タイミングにバラツキが生じると、機関全体として、出力不足となり、排気ガス色が悪化し、黒色となるので減筒テストで、不良シリンダを探して修正しなければならない。燃料カム及びタペットの摩耗などについても十分点検しなければならない。
c)噴射量のバラツキ
 負荷分担の大きなシリンダが、過負荷状態となり全体として排気ガスが黒色化する。減筒テストで不良シリンダを探して修正するか、ユニットポンプの場合は、シリンダヘッド出口の排気温度のバラツキを定格運転時、30℃以内に入るように修正する。
d)噴射圧力の低下とバラツキ
 噴射圧力は、使用につれて徐々に低下し、規定圧力より、大巾に低下(約1MPa(10.2kg/cm2以上)すると、噴霧不良や噴射量が減少するので、シリンダ間の燃焼にバラツキを生じ、排気ガスが黒色化する。
e)ノズル不良
 噴孔の腐食拡大及び変形、カーボン噛み込みや詰まり、ニードル弁とシートの摩耗、ニードルの摩耗や腐食などが起こると、噴霧不良となり、燃焼が悪化するので、排気ガスが黒色となり悪化する。
 不良シリンダのノズルを減筒テストにより探し出し、点検修正又は交換する。
f)送出弁の不良
 デリベリバルブ及びシートの不良、送出弁バネの折損などを起こすと、噴霧切れが悪く、あとだれなどを生じるので、排気ガスが黒色となり悪化する。
 減筒テストにより不良シリンダを探して修正又は交換する。
g)プランジャの摩耗
 噴射ポンプのプランジャが摩耗したり、腐食及び損傷すると、燃料圧送時のもれを生じ、噴射量が減少するので、出力不足となり、シリンダ間のバラツキを生じて排気ガスが黒色となり悪化する。減筒テストで不良シリンダを探して、修正又は交換する。
(7)バルブタイミング不良
 バルブクリアランスの調整不良、カム山及びタペットの摩耗などにより、バルブタイミングに狂いを生じると出力不足となり、排気ガスが黒色となり悪化する。
a)バルブクリアランスの調整不良
 基準値より減少すると、弁開時期が早くなり、弁閉時期が遅れる。また運転中の熱膨張により、バルブクリアランスが、更に減少し極端な場合は、バルブが突き上げられて、閉じなくなる。
 バルブクリアランスが大きい場合は、弁開時期が遅れ、弁閉時期が早くなると共に、作動時の衝撃が大きく摩耗を促進し、騒音を発生する。
b)カム山及びタペットの摩耗
 カム山やタペットが摩耗すると、バルブクリアランスが、大巾に増加して弁開時期が遅れ、弁閉時期が早くなると共に、弁リフト量が減少する。従って大巾に出力が低下するので、排気ガスが黒色となり悪化する。
c)バルブの突き上げ
 バルブクリアランスがなくなり、バルブが突き上げられると、ピストン頂面との干渉、圧縮不良、ガスもれとなるほか、バルブの熱伝動が悪化して、傘部が溶損したり亀裂を起こし、大事故を誘発する。
d)吸気弁の開閉時期の狂い
 弁開時期が早過ぎると、燃焼ガスが吸気管側へ逆流して、バックファイヤを生じ易くなる。
 弁開時期が遅れるとオーバラップが不足するため、シリンダ内のガス交換が不十分で燃焼不良となり易い。
 弁閉時期が早過ぎると、十分な吸気慣性が得られ難く、酸素不足による不完全燃焼となり易い。
 弁閉時期が遅れると、圧縮もれを生じ易く、十分な圧縮圧力が得られず、始動不良や出力不足を生じ易い。
e)排気弁の開閉時期の狂い
 弁開時期が早過ぎると、燃焼エネルギの損失が増加して出力不足となり易い。
 弁開時期が遅れると、燃焼ガスの排気損失が増加して熱効率が低下する。
 弁閉時期が早過ぎるとシリンダ内のガス交換が不足し、排気ガスが残り易くなる。
 弁閉時期が遅れると、吸気不足となる。
f)オーバラップ
 吸気弁、排気弁の両者共に開いている期間が設けられており、これを弁のオーバラップ時期と呼んでいる。オーバラップする期間の長短は、その機関のガス交換を行なう上で、重要なタイミングであり弁開閉時期が狂うと、オーバラップ期間が狂い、ガス交換が不十分となるので、出力が減少する。
(8)オーバロード
 定格出力以上の負荷運転状態を、オーバロードと呼んでいるが、このような状態は、負荷が大きいため、機関が無理な運転をしているので、排気ガスが黒色に悪化する。







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