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2.5 負荷運転中の回転不整
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1)燃料系統不良
(1)燃料供給不足
a)燃料不足
 燃料タンク内の燃料が少なくなると空気が混入して不整回転を生じ、停止する。
b)燃料配管径の細過ぎ
 パイプ内径が規定寸法以下の場合は、最大出力付近での運転中に回転が不整を発生することがある。
 これは機関が必要とする燃料の量が瞬間的に不足して回転低下し、その間に必要量が充足されて回転上昇復帰し、再び不足となり回転低下する。この繰り返しにより、回転が整定しなくなるので、燃料配管内径は必らず規定寸法以上のものを用いなければならない。
c)燃料濾器の詰まり
 フィルタエレメントの目詰まりは、通過面積が大巾に減少するので前項同様に回転不整現象を起こす。
 エレメントの清掃又は交換する。
d)フイードポンプの不良
 ポンプのピストン、バルブなどが摩耗すると、大はばに吐出性能が低下するので、必要量を供給充足できなくなり、回転不整現象を生じる。フイードポンプを交換するか、又は分解修正しなければならない。
(2)空気の混入
 燃料タンクから、フイードポンプまでの間は、大気圧以下になり、燃料を吸入している。この間に微細な燃料油もれがあると、空気を少しづつ吸入して、回転不整となり、やがてはプランジャによる噴射圧力が得られなくなり、停止する。
 配管途中の燃料油もれは完全に修理しなければならない。
 噴射ポンプの余剰油戻しパイプは、通常、フイードポンプの入口へ接続しているが、フイードポンプの吐出量低下や噴射量増大した場合は、余剰油の戻り量が極端に減少してくる。この時にフイードポンプのサクション力により、本来プランジャで圧送すべき燃料がフイードポンプヘ、若干吸い戻されて回転不整を生じることがある。
 特にPme(正味平均有効圧力)を上げた高性能高過給形機関に、この傾向が生じ易く、フイードポンプの吐出量を増すか、余剰油戻しパイプを燃料タンクヘ接続しなければならない。
(3)噴射不良
a)噴射圧力の低下
 噴射圧力が1.0MPa(10.2kg/cm2)以上低下すると、噴霧不良となり、燃焼が悪化する。この傾向は多孔式ノズルに特に顕著に表われ、各シリンダ間に燃焼のバラツキを生じて、不整回転を起こす。減筒テストを行なって不良シリンダを探がし、噴射圧力を修正する。
b)噴霧不良
 ノズル不良や送出弁の不良により、噴霧が悪化して各シリンダ間に、燃焼のバラツキを生じると回転不整となる。この傾向は前項同様に、直接噴射式に用いられる多孔式ノズルで発生し易いので、定期的にノズルの点検をしなければならない。
 噴霧不良は前項同様に減筒テストにより、不良シリンダを探がして、修理する。
(4)噴射ポンプ不良
a)シリンダ間の噴射タイミング狂い
 燃料カム山及びタペットが摩耗すると、シリンダ間のタイミングが大巾に狂い不整回転を生じ易くなる。
 ユニットポンプの場合は、ある程度の範囲内で、それぞれのシリンダ毎にタイミングを調整して修正できるが、列形ポンプに於ては、ポンプテストスタンド上で修正しなければならない。いずれにしても摩耗量が0.5mm以上の場合は、カム山表面の焼入れ硬化層が殆ど失われているため、カム軸を交換しなければならない。
b)シリンダ間の噴射量不均等
 プランジャの摩耗、膠着、バネ折損のほか送出弁や送出弁バネ折損を生じた場合は、各シリンダ間の噴射量に大きな差異を生じて、不整回転を起こす。
 減筒テストにより、不良シリンダを探がして修理しなければならない。
 プランジャの摩耗や腐食、膠着などは交換修理しなければならないが列形ポンプの場合は、テストスタンド上でタイミング、噴射量などを調整しなければならない。噴射量は±3%以内に各シリンダ共に入るように修正する。
 ユニット式の場合は、交換修理後に各シリンダのヘッド出口における排気ガス温度を30℃以内に入るように、微量調整しなければならない。いずれも定格又は、連続最大出力及び回転速度で調整する。
c)コントロールラックの作動不良
 コントロールラックはどの位置においても、円滑に軽く作動しなければならない。コントロールラックの作動に渋りがあると、円滑に作動できないので、回転不整を生じる。
 コントロールラックに渋りがある時は、ピニオンギヤとの噛合い不良、摩耗破損、ラックの曲がり、他との干渉の有無、プランジャの膠着、戻しバネ折損などを点検し、修正しなければならない。
d)リンク及び連結桿の不良
 曲りやこじれ、連結ピン摩耗などがあると、円滑に作動できなくなり、不整回転を起こす。
 V形機関の場合は、左右のシリンダに設けられた噴射ポンプのコントロールラックを接続する連結桿の取付調整不良があると、左右シリンダの噴射量にバラツキを生じて、回転不整となることがある。







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