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6)ガバナ故障
(1)ガバナスプリングのへたり
 バネ力が減衰してくると、フライウエイトとのバランスが崩れるので、コントロールラックの移動量が少なくなり、噴射量が不足する。従って出力低下となる。
 スプリングを交換するか、シム調整するか、アジャスティングスクリュにて、ガバナの種類に応じて適当に修正をしなければならない。
(2)オイルフィルタの詰まり
 専用フィルタが設けられており、エレメントが目詰まりすると、油量が不足して油圧が低下するので、出力が低下する。フィルタは定期的に点検清掃すると共に、エレメントを交換しなければならない。
(3)リリーフ弁の膠着
 リリーフ弁からのリーク量が多い状態で、スティックすると、油量不足となり油圧が低下するので、出力が減少する。リリーフ弁の分解修理が必要となる。
(4)ガバナの調整不良
 ガバナは機関の出力及び回転速度をコントロールする重要な機能を持っている。スモークセットや高速ストッパ位置、及びトルクスプリングやアダプタスプリング力などは、全で動力計により所要の性能スペックに合せて調整し、通常は、これら調整をむやみにできぬように封印をして工場から出荷されている。
 これらは機関の品質を所要の性能スペックで、メーカが保証できる条件として、また機関の安全運転を確保する条件として制限しているものであり、万止むを得ない場合を除いては、絶対に、これら制限装置の封印を切ってはならない。スモークセットや最高回転速度の制限封印を万止むなく解除して再調整しなければならぬ場合は、次の要領に従って実施しなければならない。
(1)メカニカルガバナ(RSV、RSUV形)
(ア)スモークセットの調整
 その機関が許容している最大出力及び回転速度で、動力計の荷重を合わせ、安定した運転ができる状態で、右図の燃料最大噴射量位置をフルロードストッパネジで調整する。
 
 
 但し、その時の気温並びに大気圧力により出力を修正し、その修正出力に応じて動力系の荷重を算出しなければならない。
(イ)無負荷最高回転速度の調整
 その機関の仕様により無負荷最高回転速度が異なるが、一般的には下記の範囲になるよう調整しなければならない。
・発電機セットの場合
 定格回転速度の108%以内とする。
・一般動力用の場合
 定格回転速度の115%以内とする。
 この調整中は機関がオーバランとなることがあるので、十分注意しなければならない。
 
 
(2)メカニカルガバナ(RUV、RQUV形)
(ア)スモークセットの調整
 図示のラックセットの位置を若干移動して、調整する。噴射ポンプ側へ移動すると噴射量が増加し、反対側へ移動すると減少する。
 修正出力に応じて動力計の荷重をセットしなければならない。
(イ)無負荷最高回転速度の調整
 図示のスピードコントロールレバーの動きをストッパボルトで調整する。オーバランをせぬように十分注意しながら行わなければならない。
 
 
(3)油圧ガバナ(PSG、RHC、UG形)
(ア)スモークセットの調整
 修正出力に応じた動力計の荷重と許容負荷最大回転速度で運転を安定させた状態で、それ以上、コントロールラックが燃料増加方向へ移動しないように、ストッパボルトで制限する。
 ユニットポンプの場合は各シリンダに設けられた噴射ポンプのコントロールラックが、それ以上燃料増加方向へ移動しないように、それぞれのコントロールラックをシム調整して制限する。
(イ)無負荷最高回転速度の調整
 無負荷運転をしながら、スピードコントロールレバーを徐々に高速側へ動かし、回転速度を上げてゆき、規定の最高回転速度以上に、コントロールレバーが移動できぬように、ストッパボルトで制限調整する。
(4)電気式ガバナ(EG、DYNA−1形)
(ア)スモークセットの調整
 修正出力に応じた動力計の荷重と負荷最大回転速度で、運転を安定した状態にし、それ以上の噴射量にならぬよう、コントロールラックの動きを、ストッパ又は、シムなどで制限調整する。
(イ)無負荷最高回転速度の調整
・EG形の場合
 アクチュエータとして油圧ガバナを用いているので、前項(3)−(イ)により制限調整する。
・DYNA−1形の場合
 図示のトップカバー(1)を外し、各ポテンションメータのセット位置を確認して、下記の状態で規定の回転速度が得られるようにする。
 A:3時
 D:10時
 I:8時
 GAIN:9時
 L:10時(工場で調整済み)
 
7)機関焼付き
(1)ピストン張付き、スカッフ
(1)ピストン張付き
 急速にピストンが膨張した場合は、ライナとのスキマが殆どなくなり、ピストンが摺動できなくなり、停止する。この時に過負荷運転をしていると、ピストンが無理に押し下げられ、ライナ壁と局部的に、こすり合い、スカッフを生じる。
 ピストンが急激に膨張して、ライナに張付きを生じて、停止した場合は、自然に冷えるのを待って再び徐々に負荷を上げながら運転を続けることが可能である。
 この時にブローバイガスが多量に発生し、円滑な回転が得られぬ場合は、ピストンスカッフを起こしているため修理が必要となる。
(2)ピストンのスカッフと焼付き
 小規模な面積でライナ間に焼付きを生じ、摺動により局部的に溶着し、すれ合ったようなものをスカッフと云い、これが広い面積に亘ってライナヘ溶着、停止した場合を焼付きと呼んでいる。いづれも運転時に多量のブローバイガスを発生する。
 いずれもピストンとライナの摺動摩擦抵抗が増加するので出力が低下する。
(2)ピストンリング膠着
 ピストンリングが、リング溝内でカーボン介在、潤滑不良などで、円滑に作動できなくなると、リングが溝内に固着してしまう。これをリングの膠着と云い、これが発生すると、リングによるオイルコントロールはもとより、ガスもれ侵入などを生じ、リング折損、ピストン焼付きに至る。いずれにしても、ブローバイガスが多量に発生し、出力が低下し、最後には運転不能となる。
(3)バルブスティック
 シート面へのカーボン噛込み、当り不良、ガイド摩耗による着座不良などにより、カーボンなどがバルブガイドとステムのスキマに介在して熱伝導がさまたげられ、バルブが過熱膨張して、ガイドに固着し摺動できなくなる。これをバルブスティックと呼んでおり、2次的にピストン頂面へのスタンプ、バルブ傘部の溶損、欠損及び折損、ステムの曲がり、突棒の曲がり、カム山やタペットの摩耗損傷などを誘発することがある。
 バルブスティックを起すと、圧縮不良やガスもれとなるので燃焼不能となり、出力低下は勿論のこと運転不能になる。
(4)ブッシュ焼付き
 ピストンピンブッシュ、カム軸ブッシュ、タイミングギヤのブッシュ、その他ブッシュが軸に焼付くと軸と一体となり、ハウジング内で摺動するため、摩擦抵抗が極端に増加して発熱すると共に、大巾に出力が低下する。
(5)メタルスカッフ損傷焼付き
 クランクピンやジャーナルメタルと軸のスキマに異物が介在し、メタルを引掻損傷したりスカッフを生じたりする。メタルが摩耗してスキマ過多になると衝撃力が過大となり、メタルスカッフや焼付きを起こすほか極端な場合は曲げ力が作用して、メタル焼付きやクランク折損などの事故に発展することもある。メタルがスカッフしたり焼付くと発熱を伴い出力が低下するほか、ピンメタルの場合は足出しなどの大事故に発展することもある。
(6)ベアリング摩耗損傷
 ボールベアリングやローラベアリングなどが摩耗損傷すると円滑に回転できなくなり、異音や発熱を伴い最終的には焼付きに至る。この間は摩耗による軸芯の狂いを生じて軸の曲がりや歯車の噛合いバックラッシュが大きくなり、衝撃音を発生してギヤが摩耗損傷することもある。いずれにしても出力が低下する。
 
8)オーバロード
(1)過大負荷、過大作業機
 運転中に、その機関が持つ最大出力以上の過大な負荷が加わると、回転が最大トルク付近まで急速に低下し、真黒い排気ガスを出して回転を続けようとする。
 負荷が大き過ぎる場合は、スピードコントロールレバーを高速側へ一杯に上げても回転が上昇せずに機関が止まってしまうので負荷を軽減しなければならない。
 また機関性能以上の過大な負荷を吸収できる作業機をセットした場合は、過大負荷が常に加わり易くなり、機関は過負荷運転で常用されるため、運転不能となるか機関事故の発生原因となる。作業機とのセットは性能にマッチングしたものを選択し、常に作業機の負荷が機関の定格出力以下で使用できるように選択することが、事故防止を図る上で、また経済的にも最重要なことである。
(2)軸芯の狂い、曲がり
 作業機を含めた軸系の芯出し不良や狂い及び軸の曲がりなどがある場合は、損失馬力が大きくなり作業機や軸系の軸受けに無理な力が加わり発熱や振動を伴う。
 また機関のクランクジャーナルメタルにも同様な力が加わり摩耗や発熱を伴うほか、クランク軸に大きな曲げ力が働くため、クランクアームのデフレクションが過大となり、クランク軸が折損する。
(3)作業機等の故障
 作業機やその駆動軸系に焼付きなどの故障があると、損失馬力が大きくなり、極端な場合は作業機を駆動できず機関停止する。
(4)スタンチューブのグランド締めすぎ
 グランドパッキン部は航行中に若干の海水が船内に流入する程度にグランド締付力を調整しなければならないが、締め過ぎると海水の流入は、止まり軸受けの潤滑不能となり、軸との摩擦抵抗が極端に大きくなり、発熱し損失馬力が大きくなると共にグランドパッキンが損耗する。
 停船中はグランド部からの海水流入を防止するため通常はグランドを締め、航行時に弛めるようにする。







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