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第6章 運転状態の診断とトラブルシューティング
1.修理(点検)要因図
 点検、整備の必要性と相まって、故障に対して内容を適格に把握し、適切なる処置をすることが必要である。そのためには、内容について、部品毎に発生が予想される不具合を、現象別に把握しておくことが必要である。これを整理し修理要因図として、6・1図に示す。
 
6・1図 ディーゼル機関の修理要因図
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2. 運転時の不調とその処置
 なお、本項は主に高速機関を中心にまとめてある。また、数値については機種により異なるので、当該機種のメーカ指定数値に置き換えて活用されたい。
2.1アイドリング回転中のハンチング
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1)ガバナ調整不良
(1)回転速度の下げすぎ
 アイドリング回転速度は、機種及び仕様により若干異なるが、550〜650min-1(rpm)であり、標準で600〜650min-1程度である。これ以下にアイドリング回転速度を低下した場合は、ハンチングを起こしたり、負荷投入時にエンジンストップを起こすことがある。なお2次以下の危険な捩り振動の回転域を避けるために、アイドリング回転速度を高めにセットしたものもあるので、みだりに下げ過ぎぬように注意しなければならない。特に長時間スロー運転を続けるような場合は注意しなければならない。
(2)アイドリング回転の調整不良
 アイドリング回転速度の調整不良の場合は、ハンチングを起こすので、正しく調整しなければならない。
 調整する場合は、冷却水温度及び潤滑油温度はいずれも十分暖気された状態(例えば70℃以上)で行うことが大切である。
(1)RSV、RSUV形ガバナ
  遠隔操縦用ケーブルなどを外して、コントロールレバをフリーの状態にする。
  低速回転ストッパボルトで、550〜600min-1に下げてハンチングが起こる場合は、アイドリングサブスプリングをハンチングが止まる寸前まで締め込む。
 低速ストッパボルトをネジ込み600〜650min-1にセットし、負荷投入時に機関ストップしないことを確認する。エンストを起こす場合は、さらに回転を上げる。
(2)RQUV形ガバナ
 低速ストッパボルトをネジ込み、アイドリング回転を600min-1とする。負荷投入時にエンストしないことを確認する。エンストを起こす場合はさらにネジ込み回転速度を上げる。700min-1以上でもハンチングしたり、エンストを起こす場合は低速バネその他の故障である。
(3)PSG形ガバナ
 アイドリングスピードアジャスティングスクリュで回転速度を600min-1にする。ハンチングが起こる場合は、ニードル弁を2〜3回開らき空気が完全に抜けるまで約30秒間程度、ハンチングをさせてから徐々にニードル弁を閉じてゆき、ハンチングが止まるまで閉める。但しニードル弁は全閉にせず1/4回転以上は開けておくこと。
 ハンチングが止まらない時は、アジャスティングスクリュをネジ込み600〜650min-1とし、負荷投入時にエンストを起こさないことを確認する。
(4)EG形ガバナ
 外部ランプスイッチを開き、機関回転速度を下げ、規定のアイドリグ回転速度になるように、ローアイドルスピードのポテンションメータで調整する。
 この時コントロールラックの最少燃料目盛位置より上の位置で、ローアイドルスピードのポテンションメータによる設定で制御していることを確認する。
 ハンチングする場合は、ゲイン及びスタビリティのポテンションメータで調整する。ゲインはできるだけ時計方向へ回し、不安定になる寸前で止めたあと、スタビリティで安定するように調整する。
(5)DYNA−1形ガバナ
 電源スイッチは、オフで機関停止させコントローラのトップカバーを外し、各ポテンションメータのセット位置を確認する。
A:3時
GAIN:9時
D:10時
I:8時
L:10時(工場で調整)
 電源スイッチ及びスタータスィッチを入れて始動し、スピードポテンションメータで、アイドリング回転を600min-1にする。スピードポテンション
メータは20回以上ターンしないこと。
 ハンチングが発生する場合は、Aをアクチュエータレバーが急速に振動する(ハンチング状態)まで時計方向へ回し、その後、ハンチングが止まるまで反時計方向へ戻す。
 アクチュエータのハンチングが止まらぬ場合は、ゲインを、徐々に反時計方向へ回して止める。アクチュエータがハンチングしない場合は、ハンチングを始めるまで、ゲインをゆっくり時計方向へ回し、次にハンチングが止まるところまで、反時計方向へ徐々に戻す。
 
2)取扱不良
(1)エア抜き不十分
 燃料系統内部にエアが残っていると、燃料噴射量にバラツキを生じ、ハンチングを起こすことがあるので、各部のエア抜きを十分に行うことが大切である。
 特に燃料タンク内の燃料が少ない時はエアを吸い込み易くなるので、補給してからエア抜きを完全にする。
(2)燃料漏れ
 燃料もれを生じている箇所があると、そこからエアを吸い込み易くなるので、燃料もれは完全に修理しなければならない。
(3)フィルタの詰まり
 燃料濾器のエレメントが目詰りを起こすと、流量が極端に減少するため、ハンチングを発生する。定期的に燃料濾器の清掃や、エレメントの交換をしなければならない。
(4)ドレン抜き不足
 燃料中に混入する水分が多くなると、燃焼に影響しハンチングを起こすことがあると共に、ニードル弁やプランジャなどが腐食摩耗して、種々のトラブルを誘発する。従って、燃料タンク、沈澱槽、濾器などに沈澱する水分は定期的に、完全に排出させなければならない。







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