2.3 動弁装置
機関の高速化、高出力化に対応して、動弁装置も設計、生産の技術向上が図られているが、最近の高速機関では潤滑油の選定と管理が重要であり、メーカの指定する潤滑油を使用する必要がある。
特に、指定粘度を下回る潤滑油においてカム、タペット(ローラ)の摩耗の不具合が発生することが多い。
整備に当っては、潤滑油孔の異物による閉そくや潤滑油の劣化等、潤滑条件に充分留意して整備する。
1) 点検および整備
3・9表 動弁装置の点検、整備による。
3・9表 動弁装置の点検、整備
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)カム軸 |
(1)吸排気カムおよびカム軸受部の異常摩耗、損傷の有無点検 |
軽微なものは修正し、異常摩耗があるときは交換 |
(2)カム軸基準部軸幅を計測 |
使用限度以上は交換 |
(3)キー溝およびキーのガタを点検 |
修正不可能なものは交換 |
(2)カム軸受および位置決めボルトの損傷および摩耗の有無を点検 |
修正、修正不可能なものは交換 |
(3)カム軸受部の外径、軸受の内径を計測、スキマ計測 |
使用限度以上のものは交換 |
(4)カムとタペットの接触面の偏摩耗、荒れかじりなど異常がないか点検 |
油砥石により修正する。異常なものは交換 |
(5)タペット摺動部の損傷、摩耗の点検およびスキマ計測 |
使用限度以上のものは交換 |
(6)弁押棒(プッシュロッド)の曲がり、損傷および上下端部の摩耗の有無点検 |
修正し、修正不可能なものは交換 |
(7)動弁腕軸と軸受の摩耗、かじりの有無を点検およびスキマ計測 |
軽度のものは修正、はなはだしいものは交換、スキマ使用限度以上のものは交換 |
(8)歯車 |
(1)各歯車のかみ合いのままバックラッシュを計測する |
使用限度以上は調整、または交換 |
(2)各歯の摩耗の有無、歯当り(ピッチング)の状態、亀裂、腐食の状況点検 |
修正、摩耗のはなはだしいものは交換 |
(3)歯車軸受面の当りおよび摩耗、軸および側面のスキマ点検、計測 |
片当りは修正、スキマが使用限度以上のときは交換 |
(4)ボルト類のゆるみ点検 |
締直し |
(5)軸受(玉軸受)などのガタ点検 |
洗浄、ガタのあるものは交換 |
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1)点検および整備
(1)潤滑油ポンプ
3・10表 潤滑油ポンプの点検、整備による。
3・10表 潤滑油ポンプの点検、整備
(1)歯車式潤滑油ポンプ
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)歯車の歯面:摩耗状況、ピッチング、キャビテーションなどの発生の有無調査 |
修正ならびに有害な傷、摩耗があるときは交換 |
(2)歯車の外周および側面の摩耗状況調査 |
摩耗のはなはだしいときは交換 |
(3)軸と軸受の摩耗状況、スキマ測定(玉軸受のときはガタ点検) |
摩耗、ガタの大きいときは交換 |
(4)オイルシールやOリングなどの損耗、老化、変形などの有無を点検 |
老化、損傷のはなはだしいものは交換 |
(5)安全弁などの弁および弁座、弁ばねおよびガイドなどに異常がないか点検 |
作動不良の場合修正または交換 |
(6)ポンプ本体内面に傷、摩耗、腐食などがないか点検 |
摩耗のはなはだしいものは交換 |
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(2)トロコイド式潤滑油ポンプ
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)アウタロータの外周、側面、歯面に有害な傷や摩耗がないか調査 |
傷、摩耗のはなはだしいものは交換 |
(2)インナロータの歯面、側面などに有害な傷や摩耗がないか調査 |
同上 |
(3)インナロータ内面のキー溝もしくはスプライン溝に損傷がないか点検 |
ガタ、摩耗のはなはだしいものは交換 |
(4)軸と軸受部、オイルシール部などに異常摩耗や損傷がないか点検 |
ガタの大きいものは交換や損傷 |
(5)ポンプ本体のロータ摺動面に有害な傷や摩耗がないか点検 |
損耗のはげしいものは交換 |
(6)オイルシール、パッキンまたはOリングの損傷の有無を点検 |
損傷のはなはだしいものは交換 |
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(2)潤滑油冷却器、潤滑油こし器、油圧調整弁
3・11表 潤滑油冷却器、潤滑油こし器、油圧調整弁の点検、整備による。
3・11表 潤滑油冷却器、潤滑油こし器、油圧調整弁の点検、整備
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)潤滑油冷却器 |
(1)水側通路のよごれ、つまり、スケール点検 |
洗浄 |
(2)油側通路のよごれ、つまり、スケール点検 |
洗浄 |
(3)冷却水側両カバーの腐食状況点検 |
はなはだしいものは交換 |
(4)ボルト類のねじの損傷 |
修正または交換 |
(5)冷却用管(チューブ)の損傷、状況点検 |
はなはだしいものは交換 |
(6)冷却用管(チューブ)のカシメ部のゆるみ |
増締め不能のものは交換 |
(7)防食亜鉛、パッキン類の老化、破損 |
限度以上(防食亜鉛1/2以上損耗)のものは変換 |
(8)ボルトねじ部の損傷 |
修正不能のものは交換 |
(2)潤滑油こし器 |
(1)切換えコックの摺動面のごみ、異物のかみこみによる損傷点検 |
洗浄、修正不能のものは交換 |
(2)ケース類に亀裂の有無点検 |
亀裂あるものは交換 |
(3)油圧調整弁 |
(1)ばねのへたり、亀裂の点検 |
亀裂あるものは交換 |
(2)シリンダおよびピストンのかじり、摩耗点検 |
はなはだしいものは交換 |
(3)付属接手、管(パイプ)のよごれ、もれ、亀裂損傷の有無点検 |
洗浄、修正、傷のはなはだしいものは交換 |
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備考 |
油圧調整弁について 潤滑油圧力が標準値より低下しているときは、ポンプなどの作動不良や油もれのないことを確認した後に、圧力計を見ながら調整弁で圧力を調整する。 調整弁を調整しても十分油圧が上がらない場合のみ分解、修正し、通常は分解しない方がよい。 |
1)点検および整備
1)冷却水ポンプ
3・12表(A、B) 冷却水ポンプの点検、整備(1、2)による。
3・12表(A) 冷却水ポンプの点検、整備(1)
(1)ヤブスコ式回転ポンプ
海水ポンプ用として用いられる。
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)ゴムインペラの損傷、異常摩耗があるか点検 |
損傷、摩耗のはなはだしいものは交換 |
(2)ポンプ本体(ポンプハウジング)の内側とゴムインペラとの摺動部の損傷、摩耗状況点検 |
修正または摩耗のはなはだしいものは交換 |
(3)ポンプ本体両側面のウェアプレートのゴムインペラ摺動部の損傷、段付き摩耗の状況点検 |
ウェアプレートを裏返して再使用できるものは実施または交換 |
(4)軸および軸受の異常摩耗やガタの点検 |
ガタのはなはだしいものは交換 |
(5)メカニカルシールやオイルシールなどの損耗状況点検 |
損耗のはなはだしいものは交換 |
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(2)渦巻式冷却水ポンプ
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)ストレーナがついている場合は不具合がないか調整 |
清掃、修正 |
(2)羽根車の回転が円滑かどうか点検 |
修正または交換 |
(3)羽根車とポンプ本体のスキマが適性かどうか点検 |
使用限度以上のものは交換 |
(4)羽根車取付け部がさびていないか、取付けボルトがゆるんでいないか調査 |
修正または交換 |
(5)羽根車やポンプ本体の腐食やキャビテーションの有無点検 |
有害な腐食のある場合は交換 |
(6)軸および軸受の異常摩耗やガタの点検 |
ガタのはなはだしいものは交換 |
(7)メカニカルシール、オイルシールなどの損耗状況、老化、変形などの有無を点検 |
損耗のはなはだしいものは交換 |
(8)水抜き管、コックに不具合がないか点検 |
清掃、修理できないものは交換 |
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3・12表(B) 冷却水ポンプの点検、整備(2)
(3)往復式冷却水ポンプ
点検計測内容 |
整備内容 |
(1)プランジャもしくはピストン、ピストン棒、プランジャガイドなどの外径摺動部に有害なすり傷や段付き摩耗などの有無を調査 |
軽微な傷は修正し、摩耗のはなはだしいものは交換(スキマの使用限度以上は交換) |
(2)プランジャもしくはプランジャガイドのピン穴、ピンとのスキマ点検 |
スキマのはなはだしいものは交換 |
(3)連接棒の大小端軸受部の焼付き、当り不良およびピンとのスキマ点検 |
軽微なものは修正し、スキマのはなはだしいものは交換 |
(4)グランドパッキン、ゴムパッキン、オイルシール、0リングなどの損耗状況、老化、変形などの有無を点検 |
老化、損傷のはなはだしいものは交換 |
(5)水室および空気室の腐食の有無点検 |
腐食のはなはだしいものは交換 |
(6)吸入弁、吐出弁の弁と弁座の当り、ガイド部などの摩耗、損傷の有無点検 |
片当りおよび損傷のはなはだしいものは弁と弁座を交換する |
(7)吸入弁、吐出弁の弁ばねの損傷へたりを点検 |
へたりのはなはだしいものは交換 |
(8)防食亜鉛の減り具合点検(他の型式のポンプも同じ) |
限度以上(1/2以上損耗)のものは交換 |
(9)安全弁の作動点検 |
清掃、修正する |
(10)水抜き管、コックに目詰りや不具合がないか点検 |
清掃する。腐食のはなはだしいものは交換 |
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備考 |
(1)グランドパッキンにグリスを塗り、ねじれないように切口をずらし挿入する。 (2)パッキングランドを締めすぎにならないように注意する。 |
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