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2)連接棒
 連接棒は圧縮、曲げ、引張りの変動荷重を受け、しかも高速運動を繰返し、熱や振動も受ける重要な部品である。それだけに、取扱いには充分注意し、作業中に傷を付ける様なことがあってはならない。
 整備上、最も留意すべきことは、連接棒ボルトの取扱いと締付けである。絶対に傷を付けない様にするとともに、マニュアル通り締付けること。
(1)点検および整備
 3・6表 連接棒の点検、整備による。
 
3・6表 連接棒の点検、整備
点検計測内容 整備内容
(1)連接棒ボルト
(1)分解前にボルト(ナット)のゆるみおよび座金などに異常がないか点検 座金は再組立て時交換
(2)ねじ部、リーマ部のガタおよび焼付き、締付け面の当り点検 軽度のものは修正、ボルト使用限度時間以上のものは交換
(2)連接棒大端部
(1)セレーション面または合わせ面にたたかれ傷、歯底の傷などの異常がないか点検(カラーチェック) 軽度のものは修正、できないものは交換
(2)軸受(メタル)内面の当り状況(変色、焼付き、摩耗、腐食、オーバレイ消滅) 修正または使用限度以上のものは交換(オーバレイ30%以上消滅は交換)
(3)メタル背面の当り爪、ノック部の損傷状況点検 軽度のものは修正、損傷はなはだしいものは交換
(4)ねじ部、リーマ部、締付け面のむしれおよび損傷状況点検 修正または修正できぬものは交換
(3)連接棒小端部
(1)軸受止めボルト装備の場合は、止めボルトや座金のゆるみ点検 締直し、または交換
(2)軸受のゆるみ点検 ゆるみの有るものは交換
(3)軸受内面のたたかれ傷、焼付け、異物による損傷、異常摩耗、当り点検 修正不能のもの、使用限度を超えるものは交換
(4)連接棒本体
(1)変形、損傷、亀裂の有無点検(カラーチェック) 亀裂のあるものは交換
(2)油孔の目づまり点検 洗浄
(3)各軸受の内径寸法計測 使用限度以上のものは交換
(4)連接棒倒れ、ねじれを計測(異常爆発、ウォータハンマなどの事故があった場合) 使用限度以上のものは交換
 
(2)連接棒ボルトの締付け
 従来ボルトの締付けは、トルク法が一般的で、トルクレンチにより締付けトルクを管理していた。しかし、トルク法は座面やネジ部の摩擦係数の影響を受け易く、慎重に作業しても、ボルトの軸力のバラツキが発生するのが実状であった。
 近年、このトルク法の欠点を補うため、3・10図に示す弾性域・角度法が採用されてきている。
 
3・10図 連接棒ボルトの荷重と伸び
 
 図は、横軸にボルトの伸び、縦軸にボルトの締付ける力を表したもので、弾性域・角度法ではボルト座面の肌付きからの回転角を管理するので、座面やネジ部の摩擦に関係なくボルトの伸びが決まるので、締付け力のバラツキが少なくなる。
 さらに、塑性域・回転角度法によって回転角(ボルトの伸び)に鈍感な範囲まで締め付ける方法も採用されてきている(連接棒ボルトのみ)。
 
3)ピストン、ピストンリング、ピストンピン
 ピストンは燃焼室の一部を構成するため、熱負荷と高い燃焼圧を受ける運動部品であり、燃焼圧を連接棒を介してクランク軸に伝えるとともに、シリンダ内を往復しながら、燃焼ガスをシールする機能を有している。
 したがって、高温度、高い熱応力や機械的な応力、潤滑不良などによって、燃焼面、リング溝、ピストンピンボスの亀裂、燃焼面の焼損、リングスティック、ピストン摺動面の焼付きなどの不具合発生の可能性がある。
 これらの不具合は、ピストンの冷却不良、燃焼不良(異常燃焼)、ブローバイ(ガス漏れ)の増加、潤滑油の劣化によることが多く、整備にあたってこれらを考慮した充分なチェックが必要である。
(1)点検および整備
 3・7表 ピストン、ピストンリング、ピストンピンの点検、整備による。
(2)ピストン燃焼面の異常
 ピストンの不具合に焼付きや燃焼面の亀裂があるが、その原因はピストンの冷却不足であることが多い。整備に際しては、ピストン冷却用ジェット、ピストンの冷却ギャラリ出入口のチェックに留意する。
 燃焼面の亀裂については、冷却面へのカーボン堆積による冷却不足から起きる亀裂の他に異常燃焼によるものがあり、燃料油によっては異常燃焼を起こすものがあり、アルミピストンでは燃焼面がえぐられることもある。こうした場合は、燃料噴射状況(噴射時期、噴射圧、噴霧の状況)をチェックするとともに使用燃料油の分析を行う必要がある。
 
3・7表 ピストン、ピストンリング、ピストンピンの点検、整備
点検計測内容 整備内容
(1)分解したままの状態で点検
(1)ピストン燃焼面の状況目視 カーボンの掃除
(2)ピストン上部(リング溝、油穴)のカーボン堆積状況を目視 溝、穴部の洗浄
(2)カーボン掃除、洗浄後の点検
(a)ピストン
(1)ピストン頂部の腐食および傷の有無点検(カラーチェック) 軽度のものは修正し、はなはだしいものは交換
(2)リングトレガ、リング溝および内側のリブ、ボス部のクラック有無点検(カラーチェック) トレガの接着不良は外周1/4以上、その他のクラックがあるものは交換
(3)ピストン摺動部の傷および当り状況点検 軽度のものは修正、はなはだしいものは交換
(4)ピストンピン穴部の傷および当り状況を点検 軽度のものは修正、はなはだしいものは交換
(5)ピストン寸法計測(外径、ピン孔、リング溝) 使用限度以上のものは交換
(6)組立式ピストン・ピストンヘッド合せ面および締付けボルトねじのゆるみ点検 合せ面当り不良は軽度のものはオイルストーンで修正、ボルトゆるみのはなはだしいものは交換
(b)ピストンピン止め輪
ピストンピン止め輪(またはカバー)の点検 変形、弾力の低下したものおよび使用限度以上(例えば10000時間)は交換
(c)ピストンピン
(1)ピストンピン表面の当り、焼付き、異物による損傷、クラック発生および摩耗状況の点検と計測 軽度のものは修正し、使用限度以上のものは交換
(2)ピストンピン端面の傷・亀裂の有無 軽度のものは修正し、はなはだしいものは交換
(d)リング
(1)リングの破損、こう着、異常摩耗の有無 異常の有るものは交換
(2)リング摺動面上下面の当り焼付き点検および寸法計測 当り不良、焼付いたもの、摩耗はなはだしいものは交換
 
4)バランサ装置、ダンパ(減衰器)
(1)バランサ装置
 4シリンダ機関は2次慣性力を抑え、機関振動を低減するため、2次バランサを装着したものが多い。バランサの組立て時には必ず歯車の合マークを確認し、バランサ軸の位相を合わせること。いずれか2シリンダ分のピストンがトップ位置(TDC)にあるとき、バランサ軸のウエイト部が最下位になるようにクランクギヤからの合マークを合わせること。位相がずれるとアンバランスとなり、振動が増加する。
 また、バランサの取付ボルト、ナットの締付トルクを厳守すること。
(2)ダンパ(減衰器)
 ダンパは、ゴム、粘性液などで振動エネルギを吸収しているため、劣化は避けられない。
 メーカの指定した交換時間には必ず交換し、ねじり振動によるクランク軸折損事故を起こさないようにする事が整備の要点である。 
 ダンパからの油漏れ、あるいはシリコンダンパのカバーの膨らみ、シリコンラバーダンパのラバーの亀裂はダンパが劣化したことの表れであり、整備を要する。
(3)点検および整備
 3・8表バランサ装置、ダンパ(減衰器)の点検、整備による。
 
3・8表 バランサ装置、ダンパ(減衰器)の点検、整備
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