日本財団 図書館


未利用・低利用の地場資源を活用した特産品化
 
ア 活用すべき地場資源
 
村内の既存商品:水、山野草、米、木材(杉・ヒノキ)、猪、鹿等の未利用・低利用の自然資源
  
 
 本村では、自然資源を活用した特産品づくりが十分に行われてこなかった。しかし、耳川の源流水、豊富な山野草、清水で育成された米、杉・ヒノキの森から産出される高品質の木材、猪・鹿などの希少性のある食肉など、本村の地域性を反映した自然資源を豊富に抱えている。
 
イ 展開方向
 本村において自然資源を活用した既存商品は少なく、今後、利活用の多角化・高度化が求められる分野である。自然資源の多くは、新しい椎葉らしさのイメージに最も合致するものであり、商品化によって本村の地域イメージの向上などにも寄与することが期待できる。したがって、本村の地域イメージを発信できる「椎葉らしさ」を確保した商品を特産品化していく。
 
(1)商品づくりに向けた体制づくり
 未利用・低利用の地場資源の活用を通じた本村のモノづくりは、これまで商品企画から販売まで、すべて生産者に委ねられていた。商品の企画力・販売力のある村内事業所においては、独自の開発を行い一定の成果をあげているところもあるが、加工グループ、農林業者のモノづくりは、加工食品にみられるように、消費者ニーズと大きく乖離した商品企画・内容になっているものが少なくない。したがって、今後の本村のモノづくりにおいては、商品の企画、生産、販売の各段階において、村内の関係機関・関係者が機能分担、役割分担を見直し、消費者ニーズなどの市場動向にマッチしたモノづくりを進めていく必要がある。
 本村の資源活用のあり方などやモノづくりの方向については、関係機関(有志・JA・商工会等)、行政などがプロデュース機能を発揮し、特産品開発の基本方針、資金の調達、関係機関の調整などを図る必要がある。
 しかし、具体的な商品づくりにあたっての資源発掘、商品のコンセプト化、企画設計、生産コーディネイト(原材料の調達、生産業務の発注等)といった役割は、商品づくり、モノづくりに精通した専門の担当者によって専属的に担われるべきであり、こうした担当者が専門家の助言を受けながら、ディレクターとしての機能を果たすことが重要となる。ディレクターの人材としては、村内物的・人的資源に精通していること、高齢者などの生産者を支援できる行動力を確保していること、消費者ニーズヘの敏感な対応が図れることなどの観点から、若い年齢層や都市圏からのUターン者などが想定される。
 商品の生産活動は、村内に新たな労働力を確保し、作業などを委託。労働力としては生産グループ、農林業者(閑散期)、高齢者・女性といった潜在化している村民層を想定する。
 
(2)椎葉オリジナルの知的資源の創出
 本村のモノづくりを考えるうえで、デザイン、機能、伝統技術といった知的資源についての関心が低く、モノづくりの中で重要視されてこなかった。元来、本村には、焼畑農法に代表される山間地のマイナス面を補う知的資源が多数あった。未利用・低利用の地場資源を活した特産品づくりを志向するためには、今後は新しい知的資源を創出していくことが重要となる。
 
(3)村内の地場資源を活用した椎葉らしさを体現した新規の特産品づくり
 「椎葉らしさ」を確保するため、村内の未利用・低利用の地場資源を最大限に活用した商品づくりを行う。流通先としては、食品の場合は平家本陣などの村内の物産施設に加え、都市圏の生協、スーパー、ふるさと物産館(KONNE、むらからまちから館)などを想定する。非食品の場合は都市圏の百貨店、専門店などを想定する。
 
図表6−64 
低利用・未利用の地場資源を活かした特産品化の考え方のフロー
(拡大画面:76KB)
 
ウ 具体的展開のイメージ(木材を活用した場合)
(1)現状
 椎葉産の木材は、輸入木材におされ、近年、良質の商品であっても販売が低迷し、林業生産者は大きな苦境にたたされている。従来の木材としての流通以外に、木材を活用した木工品づくりなどの検討などが行われてきたが、大きな成果をみせていない。
 その一方で、金属、プラスチックといった加工に高い技術が求められる素材と違い、木材はノミ一本でも加工できる素材としての柔軟性から、木材を活用した特産品づくりが、全国で見直されてきている。
 
(2)展開イメージ
 本村は、山間地であり、優れた森林文化に培われた商品を産出していくことは、椎葉らしさを村外に発信することも可能である。このため、椎葉産木材を活用した特産品化を図るため、村外意匠家に商品のデザインなどの設計仕様の製作を委託し、村内においてディレクターが村内の生産者、高齢者などとの連携によりモノづくりを行う。
 
●木材関連開発組織の発足
・椎葉産木材を活用した特産品づくりを行うため、資金の調達、関係機関の調整など、商品づくりの環境づくりを担う開発組織を発足する。組織形態は、既存の組織(行政、森林組合等)内に体制を構築していくことや、新たな会社組織、組合組織などを発足させることなどを検討する。
 
●木工関連の意匠家と村との協働した新しい知的資源の創造
・消費者ニーズに精通し、かつ本村の生産環境(生産者、木材素材、生産基盤)に沿った商品デザインの提案、商品の試作などを行える工業デザイナー、意匠家と契約し、本村の新しい木工品を創出し、新たな知的資源とする。木工品としては、木製玩具、木製生活用品(ガーデニング関連品、台所用品等)を想定する。
・開発組織で決定した方針に従い、意匠家との交渉、村内生産体制の確保、関係機関との調整、販売ルートの開発など、具体的な商品の企画・開発・生産・販売の実務を担う、木材開発ディレクターを確保する。村外・村内の双方との交渉・調整を果たすためにも、年齢の若いUターン者などを確保する。
 
●シルバー人材センター等の高齢者の就業機会の確保
・木工品を製作する新たな生産者として高齢者、女性などを確保するため、新たな就業機会の確保に努める。高齢者の場合は、シルバー人材センターの創設などを検討する。
  
 
図表6−65 木材関連商品の開発フロー
(拡大画面:93KB)
 
図表6−66 木材を活用した玩具のデザインと販売額の例
(拡大画面:388KB)
資料:(有)木







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION