ア 活用すべき地場資源
本村では、モノづくりに活用できる優れた伝統技術・文化が残されているが、中には消失の危機にさらされているものも少なくない。また、商品化に利・活用できる優れた技術・文化でありながら、その価値を村民自身が十分に理解していない場合もある。
イ 展開方向
本村の伝統文化・技術を特産品づくりの資源として活用する。焼畑、山茶といったモノづくりに活かされてきた伝統文化・技術のみならず、神楽、狩猟文化などの有形・無形の文化資源についても、積極的に活用を図る。
特産品づくりの展開としては、「未利用・低利用の地場資源」と同じ方向性が考えられるが、さらに椎葉民俗芸能博物館をシンクタンク機能として位置づけ、本村の伝統的なモノづくり情報の収集、伝統文化・技術の新たなモノづくりへの活用などへの検討などを行う。
(1)伝統文化・技術を活かした商品の抽出
本村の伝統文化・技術によって産出される商品(雑穀類、山茶等)について抽出を行う。その場合に、都市における消費者ニーズ、商品ニーズを十分に把握した上で、一定の需要が見込める商品を抽出する。そして、本村のイメージである「椎葉らしさ」を十分に訴求できる商品づくりを行い、こうしたイメージによって販売を促進させていく。
(2)椎葉民俗芸能博物館のシンクタンク化
商品化に利・活用できる地場資源について、椎葉民俗芸能博物館がもつ情報、マンパワーを活用し、同博物館が本村のモノづくりのシンクタンク機能を果たす。
(3)非食品分野の重点化による新たな特産品開発
地域産品・特産品の8割以上が食品で占められ、非食品の占める割合は2割以下となっている。
食品は、地域の食材を活かし、生のまま、あるいは加工食品としてなど、多様な商品づくりが可能であり、また、食という人の最も身近な生活に直結するものだけに、大量に消費され、市場規模が極めて大きい。しかし、食品分野は競合相手が多く、特に加工食品については、様々な商品が開発・販売されているため、新規の商品参入は、厳しい競争を強いられる。また、消費者の飽き、競合商品の登場など、消費者ニーズや市場環境の変化によって、販売の安定性を確保することが極めて困難な状況にある。
これに対して、非食品分野は、伝統工芸品や家具等の高価格のものが多いことや、デザインや大きさなどが都市型生活とミスマッチを起こしているなど、独自の課題を抱え、市場規模は食品分野と比較すると極めて狭小なものとなっている。しかし、非食品分野には、競合相手は少なく、また、一度商品の体裁、品質、イメージが確立すると、ライフサイクルが長く、安定性が高いというメリットがある。また、商品によっては、閑農期等の労働力の確保が容易な時期に集中的に生産を行うことも可能である。
したがって、伝統文化を活用した特産品づくりでは、一定の需要が確保でき、本村の生産体制とも調和する非食品分野に比重をおいた開発の取組みの方向性をもつことも重要である。
図表6−67 伝統文化を活用した特産品化の考え方のフロー
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ウ 具体的展開のイメージ(伝統行事を活用した場合)
(1)現状
本村では、歳時に応じた神事・儀式などの伝統行事が、今もなお日常生活の一部として息づいている。
一方、都市では、クリスマス、バレンタインデー、ハロウィーンといった輸入型年中行事が定着し、楽しまれているものの、日本の伝統・文化に根ざさないため、表面的な楽しみ方にとどまったり、本来の意義が見落とされているものも少なくない。
こうした輸入型の年中行事では物足りなくなり、日本本来の伝統・文化に根ざした年中行事を暮らしに取り入れ、歳時を楽しむという生活スタイルが登場しはじめており、都市型生活とも調和する和モノの生活用品(季節の盆栽ブーム、和家具、畳文化等)が注目されている。
こうした動向の中で、神楽に代表される本村の年中行事・伝統行事がもつ、パワーや文化的正当性は、都市の住民からみて、非常に魅力や刺激のある資源となることが考えられる。こうした伝統行事に関連した本村の地域産品としては、現在、七草が好評を得ている。
(2)展開イメージ
椎葉村の伝統文化を付加した日本の伝統行事関連商品を開発し、都市部において販売する。
●都市向け伝統行事商品の考案
・わが国固有の伝統行事・年中行事が正当に守られている本村のイメージを活用し、日本の伝統行事に即した商品を都市向けに産出する。具体的には、正月飾り、七夕飾りといった、本村の生産可能な商品づくりからスタートする。特にマンション等の都市型集合住宅やさまざまな国際文化が混在する都市型生活様式にも対応できる商品づくりを目指す。
図表6−68 日本の伝統行事
歳時 |
行事 |
関連商品 |
1月 |
正月、初詣、七草、鏡開き、小正月、初釜、歌会始 |
門松、正月飾り、神棚、床飾り、鏡餅、おせち料理、祝い橋、屠蘇、雑煮、七草 |
2月 |
節分 |
節分豆、 |
3月 |
ひな祭り、彼岸 |
雛人形、精進料理、線香、おはぎ |
4月 |
花祭り、花見 |
酒 |
5月 |
端午の節句、八十八夜 |
節句人形、兜飾り、鯉幟、柏餅、ちまき、茶 |
6月 |
衣替え、入梅 |
梅干 |
7月 |
七夕、暑中見舞い、土用 |
七夕飾り、はがき、うなぎ |
8月 |
盆 |
盆棚、線香 |
9月 |
重陽の節句、秋分の日、月見 |
菊、菊酒、菊膳、おはぎ、秋の七草、月見団子、ススキ |
11月 |
酉の市、立秋 |
熊手 |
12月 |
冬至、すす払い、大晦日 |
かぼちゃ、ゆず、そば |
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●伝統文化の発掘と人材づくり
・伝統行事・商品の正当性、正真性を訴求するため、椎葉民俗博物館からの情報により、ものづくりの技法、人材等の伝統文化の発掘を行う。また、村内の人材(伝統文化保持者)と村外の人材(意匠家等)の協働により、本村の伝統文化に裏打ちされた都市向けの商品企画を行うとともに、こうした商品の生産を担う、契約農家、高齢者・女性等の人材の確保を行う。
●椎葉民俗博物館による商品の情報化
・伝統行事の由来、商品の正しい使用法など、伝統行事・年中行事系の品の情報化について、椎葉民俗芸能博物館がもつ情報、マンパワーを活用する。具体的な情報化の方法としては、パンフレット、マニュアル等の作成が考えられる。
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図表6−69 正月飾りの制作のフロー
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