日本財団 図書館


6. 交通需要予測モデル
6−1 調査の前提
(1)対象地域
 大阪市を中心とする概ね半径50kmの範囲で、京都市、神戸市の交通圏を含む地域とする。「近畿圏」の範囲は運輸政策審議会答申第10号で設定された「大阪圏」を基本に、最近の国勢調査通勤・通学圏を参考にして再設定する。答申第10号の「大阪圏」の範囲は、次の条件のうち1つ以上を満たす市町村としており、本調査においてもこの考え方を基本として設定する。
(1)前回答申予測の対象地域
(2)直近の国勢調査結果における3大都市への通勤・通学5%以上依存圏
(3)直近の国勢調査結果における3大都市への通勤・通学500人以上依存圏
次頁に、答申第10号で定義された大阪圏の平成12年における拡大状況を示す。
(2)目標年次
(1)全国総合開発計画、近畿圏基本整備計画等国土計画において、整備目標を10年〜15年に設定していること。
(2)鉄道整備において、調査・計画から完成までに概ね10年以上を要していること。
(3)運輸政策審議会答申第10号及び答申18号(東京圏)において、整備目標を15年に設定していること。
 等を勘案し、本調査の整備目標年次を答申第10号の目標年次である2005年(平成17年)から15年後の2020年(平成32年)とする。
(3)調査対象交通機関
 調査対象交通機関は、鉄軌道及び乗合バス、自家用自動車とする。
 
(拡大画面:151KB)
図 6−1−1   予測対象地域(近畿圏)
6−2 需要予測モデルの全体構造
(1)従来の需要予測の問題点
 交通需要予測の方法としては、1950年代より四段階推定法が開発され、広く実務的に適用されてきた。四段階推定法とは、以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である。
四段階推定法
将来人口を出発点に、
(1)発生集中交通量 (交通が、どこで発生し、どこへ集中するか)
(2)分布交通量 (どこから、どこへの交通がどれくらいか)
(3)交通手段別交通量 (どの交通手段をどれくらい利用するか)
(4)鉄道路線別交通量 (どのような鉄道路線の経路をどれくらい利用するか)
に分けて予測を行う方法
 
 四段階推定法は、その問題点の一つとして、モデル内での交通サービス変数の不整合が知られている。すなわち、たとえば発生集中交通量の予測の際に、その説明変数に交通サービスを含めていることはまれであったり、また、分布・分担・配分の段階においては、交通サービス変数を組み込んでいるものの、各段階での交通サービス変数の整合がとられていない。そのため、交通サービス水準の上昇に伴う発生集中や分布など、上の段階の変化が充分加味されていない。
 
(拡大画面:20KB)
図 6−2−1   交通サービスの強化による上位段階への影響例
(2)本調査モデルの全体構造
 本調査における需要予測モデルは、四段階推定法をベースとした以下のフローで表されるモデル構造とする。すなわち、各段階における効用値を上位の段階における説明変数とすることで、路線別交通量の予測に用いられる説明変数が、交通手段別交通量、分布交通量、発生集中交通量の予測にフィードバックされるモデル構造となっている。したがって、鉄道や道路ネットワークの変更などの交通サービス条件が交通手段・目的地選択・発生交通の各段階において整合の取れた形で反映出来るモデルと言える。
 なお、生成交通量については、例えば鉄道整備により外出機会自体が増えるなど、鉄道整備による誘発需要の発生も考えられるが、誘発需要の予測については実績データに乏しく現況再現性が難しい。また、マクロ的には交通条件の変化が生成量そのものに影響することはモデルとしての不安定さを招くことから、生成交通量については交通条件によらず一意に定まるものとする。
 
(拡大画面:37KB)
図 6−2−2   本調査モデルの全体構造







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION