「近畿圏における高速鉄道を中心とする新たな交通のあり方に関する調査」
委員会委員名簿 |
〈敬称略・順不同〉 |
委員長 |
斎藤峻彦 |
近畿大学商経学部教授 |
委員 |
青山吉隆 |
京都大学大学院工学系研究科教授 |
〃 |
松澤俊雄 |
大阪市立大学経済研究所教授 |
〃 |
森津秀夫 |
流通科学大学情報学部経営情報学科教授 |
〃 |
新田保次 |
大阪大学大学院工学研究科教授 |
〃 |
西川直輝 |
西日本旅客鉄道株式会社総合企画本部部長(設備投資) |
〃 |
中辻康裕 |
近畿日本鉄道株式会社鉄道事業本部業務局企画部長 |
〃 |
安山邦雄 |
南海電気鉄道株式会社経営政策本部経営企画部長 |
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(福田順太郎) |
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〃 |
井関隆政 |
京阪電気鉄道株式会社鉄道企画部長 |
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(上田成之助) |
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〃 |
原田兼治 |
阪急電鉄株式会社取締役鉄道事業本部長 |
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(山内義夫) |
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〃 |
野々内弘美 |
阪神電気鉄道株式会社鉄道事業本部運輸部長 |
〃 |
河原崎正次 |
関西鉄道協会専務理事 |
〃 |
南部宏幸 |
滋賀県理事 |
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(栗原秀人) |
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〃 |
中村彰 |
京都府企画環境部長 |
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(竹内賢樹) |
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〃 |
丸岡耕平 |
大阪府土木部交通道路室長 |
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(岡村隆) |
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〃 |
西村良二 |
兵庫県県土整備部企画調整局長 |
〃 |
谷川正嗣 |
奈良県企画部長 |
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(小滝晃) |
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〃 |
北山俊二 |
京都市都市計画局都市企画部担当部長 |
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(西晴行) |
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〃 |
箕田幹 |
大阪市計画調整局計画部長 |
〃 |
遠藤幸一 |
神戸市企画調整局参事 |
〃 |
南谷敏一 |
日本鉄道建設公団大阪支社計画部長 |
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(儀満和紀) |
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〃 |
大竹重幸 |
国土交通省総合政策局交通計画課長 |
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(赤井裕司) |
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〃 |
室谷正裕 |
国土交通省総合政策局交通消費者行政課長 |
〃 |
中田徹 |
国土交通省鉄道局都市鉄道課長 |
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(柚木浩一) |
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〃 |
大須賀英郎 |
国土交通省鉄道局財務課長 |
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(前田隆平) |
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〃 |
山下章 |
国土交通省鉄道局業務課長 |
〃 |
福代倫男 |
国土交通省鉄道局施設課長 |
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(山下廣行) |
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〃 |
羽尾一郎 |
国土交通省自動車交通局総務課企画室長 |
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(石指雅啓) |
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〃 |
藤田耕三 |
国土交通省近畿運輸局企画振興部長 |
〃 |
馬場崎靖 |
国土交通省近畿運輸局交通環境部長 |
〃 |
萩原武 |
国土交通省近畿運輸局鉄道部長 |
〃 |
和田浩一 |
国土交通省近畿運輸局自動車交通部長 |
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(大塚洋) |
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〃 |
佐野正道 |
国土交通省近畿地方整備局企画部長 |
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(事務局)財団法人関西交通経済研究センター |
(作業協力)社団法人システム科学研究所 |
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注:( )は上段の前任者 |
「近畿圏における高速鉄道を中心とする新たな交通のあり方に関する調査」
需要予測ワ−キンググル−プ委員名簿 |
〈敬称略・順不同〉 |
委員長 |
青山吉隆 |
京都大学大学院工学系研究科教授 |
委員 |
内田敬 |
大阪市立大学大学院工学研究科助教授 |
〃 |
中川大 |
京都大学大学院工学系研究科助教授 |
〃 |
橋爪栄 |
国土交通省総合政策局交通計画課都市交通対策企画官 |
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(杉田利昭) |
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〃 |
段原二郎 |
国土交通省鉄道局都市鉄道課課長補佐 |
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(鈴木史朗) |
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〃 |
君塚秀喜 |
国土交通省近畿運輸局企画振興部交通・観光計画調整官 |
〃 |
足立基成 |
国土交通省近畿運輸局企画振興部企画課長 |
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(事務局)財団法人関西交通経済研究センター |
(作業協力)社団法人システム科学研究所 |
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注:( )は上段の前任者 |
1. 調査目的と全体構成
1−1 調査背景と目的
平成元年に策定された運輸政策審議会答申第10号(「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」)については、答申から既に14年あまりが経過し、目標年次である平成17年まで2年程度となっている。
これまで答申に位置付けられた路線についてそれぞれ整備が進められ、また、路線の高速化等既存ストックの有効利用、さらに乗車券のカード化等による乗り継ぎ利便性向上が図られてきたところであるが、全国的にも停滞傾向にある都市地域の活性化、益々深刻化する環境問題への対応、高齢者等移動制約者の社会参加機会確保といった観点などから、優れた都市基盤施設として都市鉄道網の整備に対する国民ニーズは一層の高まりをみせている。
一方、近畿圏においては、少子高齢化の進展や経済の停滞等を背景として公共交通利用者は著しく減少しており、鉄道、バス事業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。他方、国及び地方自治体の厳しい財政事情において、上記のような社会的要請に対応した、費用対効果の高い交通体系整備を行うことがますます必要となっている。また、平成12年に策定された運輸政策審議会答申第19号(「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策について」)では、新たな政策目標として、さらなる混雑の緩和や鉄道ネットワーク全体の利便性向上等が示された。さらに、同年に策定された答申第20号(「21世紀初頭における総合的な交通政策の基本的方向について」)では、様々な都市住民の移動ニーズに応えるため、混雑率の改善とネットワークの完成を図るとともに、シームレス化の推進により交通機関相互の乗り継ぎ利便性を高めるべきことが、政策目標として明確化された。これらの状況を踏まえると、今後の近畿圏における鉄道整備は、新線整備による量的拡大から既存ストックの有効活用やモード間連携等による輸送サービスの質的向上のための整備へとその重点をシフトすることが特に重要となっているといえる。
本調査は、上述の運輸政策審議会答申第19号(「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策について」)及び同答申第20号(「21世紀初頭における総合的な交通政策の基本的方向について」)に掲げられた政策目標の達成に向け、また、近畿圏が抱えている交通課題や社会情勢の変化、さらに将来における近畿圏の都市構造のあり方、自家用自動車交通との適切な役割分担のあり方等も幅広く考慮しつつ、近畿圏の経済活力と質の高い市民生活を支える高速鉄道を中心とする公共交通体系のあり方について、新たに顕在化してきた課題及び利用者ニーズに対応すべく、総合的に調査・検討を行うものである。
1−2 調査の全体構成
(1)調査フロー
調査の検討フローは次のとおりであり、調査内容の概要を示している。
(拡大画面:99KB) |
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(2)調査内容
a)昨年度調査の概要
平成13年度においては、「大阪圏における新たな高速交通体系のあり方」に関して、過去の都市交通審議会ならびに運輸政策審議会答申の現時点での評価と課題の整理、現在の大阪圏が抱える交通の課題の整理を踏まえ、下記に示す3つの項目に主眼をおいて、今後の近畿圏にふさわしい高速交通体系のあり方について検討を行った。
(1)運輸政策審議会答申第10号の検証
運輸政策審議会答申に明記されている政策目標の評価や整備状況の検証と未整備路線についてはその課題を整理した。
大阪圏については、10号答申に示された早期に整備すべき路線を中心に着実に整備がすすみ、平均混雑率が政策目標をクリアするなど一定の成果を挙げている。一方、開発計画の遅れや建設・運営主体についての関係者合意、導入空間の確保などを課題とする未整備路線が残されている。
(2)近畿圏における鉄道を中心とする交通の現状
次に、現在の近畿圏における鉄道を始めとする交通の現状について、既存資料や自治体・事業者アンケート結果をもとに整理を行った。少子高齢化や経済活動の低迷など、近年の社会情勢の大幅な変化のもと、鉄道需要については伸び悩みを見せており、他方自動車の急速な普及による交通手段分担の変化が見られる。
一方、鉄道サービス水準については、混雑の軽減、速達性の向上、乗り継ぎ円滑化などへの課題が見られるほか、鉄道不便地域におけるアクセス性の向上なども課題として挙げられた。また、地域別に交通に関する課題を整理し、輸送サービスの高度化、地域との連携、利用しやすい鉄道サービスの提供のための施策についての課題と関係主体の認識についてもあわせて整理を行った。また、鉄道施設整備の現状と今後の展望についても整理を行った。
(3)今後の近畿圏における鉄道整備の基本的な方向
近畿圏における今後の鉄道整備の基本的な方向について、国土計画等の上位計画やベイエリア開発整備などの地域計画等の整理、自治体における長期計画と交通計画の考え方について整理を行った。
さらに、社会経済動向や交通構造の変化、また近年重点的な対応が求められている地球温暖化問題など環境と交通のあり方を踏まえ、今後の公共交通のあり方について考察を行った。最後に、近畿圏が抱える交通課題について、「社会的にみた課題」「利用者からみた課題」「事業者からみた課題」に分類し、その中で鉄道整備に求められている基本的な方向について検討を行った。
b)本年度調査の内容
(1)利用者の鉄道に対するニーズの把握
今後の鉄道整備に向けて、ターミナル駅等におけるアンケート調査ならびに意見募集の実施による鉄道サービスに対するニーズを把握し、鉄道サービス改善のための課題を整理した。
(2)鉄道を中心とする交通の現況分析
前年度に引き続き、鉄道を中心とした交通の現状分析を行った。特に、鉄道需要に影響を与える要因として、社会経済情勢、交通機関利用特性、土地利用特性という3つの視点から見た定量的な分析を行った。また、路線別、地域別の鉄道需要と各社会指標等を用いて調査圏域の類型化を行い、地域別の課題について考察した。
(3)鉄道整備に対する自治体、事業者の計画及び意向
今後の鉄道整備に向けての検討路線の抽出にあたり、関係自治体及び鉄道事業者から、長期計画や施設改良計画、ならびに今後の鉄道整備に対する考え方等について、ヒアリング・アンケートを行い、検討路線の抽出、整理を行った。
・ 鉄道を中心とした交通の現状と問題点および解決策
・ 乗合バスの方向(問題点および対応策)
・ 検討中の将来鉄道ネットワーク
・ 交通ネットワーク機能向上に資する施策の提案
・ 既存ストック活用に関する施策の提案
・ 鉄道整備に向けた財政支援の見通し、要望等
・ 自治体から鉄道事業者への要望
・ 需要喚起策、割引乗車券、ICカード導入意向
・ 環境問題への取り組み
・ 鉄道整備に関する今後の課題・提案・要望 |
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上記で収集した回答については、項目別に整理した上で、今後の鉄道整備に対する関係主体(自治体・事業者)の認識を明らかにし、近畿圏にふさわしい鉄道ネットワーク・施設整備のあり方を検討する上における基礎資料とした。
(4)運輸政策審議会答申第10号の検証
前年度調査に引き続き、運政審答申第10号に基づいたこれまでの鉄道整備状況について計画実現化方策の検証など、総括的な検証を行い、今後に残された課題の整理を行った。
(5)将来の鉄道ネットワーク整備の基本的方向
前年度調査結果や利用者・自治体・事業者アンケート結果などから得られた、鉄道整備や交通政策に関する課題を整理し、運輸政策審議会答申第19号(H12年8月)に示された政策目標と照らしながら、今後における鉄道を中心とする交通政策の方向性を検討した。
(6)鉄道整備計画(既存ストック活用、新線整備など)
多様化・高度化する国民ニーズに対応し、かつ厳しい財政状況下等におけるふさわしい効率的な鉄道整備を行うため、まず既存ストックの活用策について、その必要性と主な施策メニューの提示を行った。また、自治体・事業者アンケートにより提案された鉄道路線(以下、提案路線)について、その概要と整備目的を整理した。
(7)交通需要予測
近畿圏における交通需要予測モデルを構築すると共に、目標年次における将来人口を予測し、予測した人口を前提として、将来の交通流動予測、提案路線の需要予測、及び輸送サービス向上施策毎の需要予測を行った。
【将来人口の予測】
予測する人口種類は、交通需要予測において必要とする「常住人口、就業人口、従業人口、就学人口、従学人口」とする。
【需要予測モデルの構築】
調査対象地域の目的別交通手段別交通量、及び提案路線の需要量が得られるよう、目的別に対象交通機関の需要量を予測する。
予測方法は、将来人口を予測した後、(1)発生集中交通量、(2)分布交通量、(3)交通手段別交通量、(4)鉄道路線別交通量に分けて予測する4段階推定法とする。モデル構築に当たっては、今後の鉄道需要に大きな影響を与えると考えられる指標について、評価が出来るようなものとする。取り上げる指標としては、例えば少子高齢化に伴う年齢構成の変化や就業率の変化、免許保有率といった社会経済指標の変化、鉄道施設のシームレス化、バリアフリー化などの交通施設改善などが挙げられる。
【将来鉄道需要の予測】
提案路線を組み入れた上で、目標年次における需要予測を行う。
予測結果は以下のような整理を行う。
・ 近畿圏全体の交通需要・鉄道需要の動向→ブロック別鉄道発生量・分担率など
・ 提案路線の交通需要→輸送密度・利用者便益
【感度分析、政策シミュレーション】
長期的な計画立案においては、年々変化する社会経済環境等の前提条件により本来「幅」のある予測値とすべきであるが、本調査において予測される鉄道需要は、将来の不確定要因に対して一定の仮定をおいたものである。このため、本調査では、前提条件の変化が鉄道需要に対して、どのような影響を与えるかを事前に把握するための「感度分析」を行った。また、政策シミュレーションとして、第5節で整理した既存ストック活用策について、需要予測および利用者便益の試算を行った。
(感度分析の対象とする前提条件の例)
□高齢者・女性の社会進出・テレワーク進展などによる自宅外就業率の変化
□就業率、自動車保有台数等社会経済指標の変化
□都心回帰 等
(政策シミュレーションの対象とする施策の例)
□表定速度向上等輸送サービス改善
□バリアフリー、シームレス化
□フィーダー交通機関の改善
□乗り継ぎ運賃 等
【検討対象路線・ネットワークの評価】
今後における少子高齢化社会では、これまでのような大幅な需要増加が見込めないこと、導入空間の制約等による建設費の高騰、国や地方自治体などの厳しい財政状況などを背景にして、大規模な鉄道投資に対しては多角的観点からの厳しいチェックが必要となる。
このような観点から、より効率的な需要顕在化を図るために、提案路線のグループ化を行い、ネットワーク全体としてのマクロ的評価を行った。
○政策課題からみた評価(時間短縮、乗換回数等の改善等)
○利用者便益の算出
(8)近畿圏における新たな交通ネットワークのあり方の検討
近畿圏における鉄道需要は近年減少傾向を示しているが、定時性、高速性、大量性など鉄道の持つ特性は都市機能向上等において引き続き重要であり、一方でエネルギー効率性、道路混雑緩和、地球環境保護などの観点からも、自動車交通と鉄道など公共交通との適切な分担が必要である。
高齢社会への進展や都市構造の変化等に伴う利用者ニーズの高度化・多様化に対応した輸送サービスが求められていること等をふまえ、今後の鉄道整備においては、新線整備による鉄道ネットワークの拡大、すなわち鉄道ストックの「量的」拡大から、既存の鉄道施設の使いやすさの向上等「質的」向上を図ることが重要である。
その具体的な課題としては、鉄道サービスのシームレス化やバリアフリー化、案内情報システムの高度化、駅前周辺整備との連携による駅の魅力向上等があげられる。
2か年に亘るこれらの整理ならびにニーズの把握をふまえて、地球環境、高齢化社会および都市構造変化に対応した近畿圏におけるハード・ソフトの両面にわたる鉄道を中心とする公共交通サービスの高度化に向けての方向性について検討を行った。
(9)高速鉄道を中心とする新たな公共交通を目指して
ここでは、2か年に亘る調査結果をふまえた計画の具体化に向けた課題の整理を行うとともに、今後、国、地方公共団体、各交通事業者等が取り組むべき方向を示した。
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