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6.民間の情報化、EDI化普及・推進組織の対応
 民間における国際貿易、国際物流業務に関わる商取引や手続の電子化、EDI化の進展状況については、既に「2.1民間EDIネットワーク」の項で触れました。各々のネットワーク運営組織は、普及・推進に必要な対応策を講じています。このうち、TEDIクラブやボレロ・インターナショナルの普及推進活動については、別章「貿易取引電子化の最新動向」をご参照いただくとして、ここでは、「港シ協」の普及・促進対応状況について概説します。
6.1 POLINETのインターネット対応
 情報化、EDI化の鍵は、いかにして中小事業者が参加しやすいネットワーク環境、EDIセンター機能をつくり、廉価な利用料で提供できるかにあります。そこで、「港シ協」は、下図に示すようなインターネットを活用した「Cyber-POLINET」および「Web-POLINET」を開発し、2001年3月よりサービスを開始しています。
 
 Web-POLINETは、社内システムがなくてもパソコンとISP(インターネットサービスプロバイダ)との利用契約があれば、容易に安く利用できます。Web-POLINETは、ウェブ・ブラウザにより入力画面を呼出し、手入力します。その後、この手入力負荷を軽減させるため色々な入力支援機能を用意するとともに、データの保存、保存データの再利用(修正、照会)、CLPデータの自動生成などの追加機能を組み込んでいます。
 Cyber-POLINETは、従来のEDI方式と同じですが、セキュア・インターネット(閉じたネットワーク)を基盤にしているので利用料を約40%下げることが可能となりました。
 EDIセンターは、UN/EDIFACT、POLINETおよびWebの各電子書式を変換する機能を標準サービスとして組み込んだので、利用者は相手先の電子書式に配慮することなくデータ伝送できるようになりました。
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港シ協のインターネットEDIとセンター機能イメージ図
6.2 港シ協のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービス
 ASPサービスとは、標準的な業務処理システムをサーバ経由で契約ユーザに有償で期間貸するサービスのことです。
 港シ協は、海貨業務システムのASPサービスとして下のイメージ図に示す「eForwarder」を2002年3月より提供すると発表しています。この「eForwarder」は、社内システムを持てない、持つことが非常に難しい中小の海貨事業者(50社〜100社程度)に廉価で提供されます。
 「eForwarder」の利用メリットは、自前で開発するのに比べて5分の1程度のコストで済み、保守費用もかからず情報化投資負担が軽減されること、インターネットとウェブブラウザを使うので通信コストも安いこと、POLINETとのデータ交換、Sea-NACCS用メッセージの生成も自動化できること、などが挙げられます。
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 この「eForwarder」標準機能として、船舶スケジュールデータベース(毎日更新)を利用したスケージュール管理、輸出入業務全般、下払い・立替え払い管理、請求書作成、実績統計管理、経理伝票・データ作成、POLINET・NACCSデータ作成等があり、追加選択機能として、Air輸出入業務、倉庫業務が用意されています。
 「eForwarder ASP」は、社内業務システムのアウトソーシングですから、利用者(海貨業者兼通関業者)は、この「eForwarder」から直接Sea-NACCSとインターネット接続をしてデータのやりとりができることを望んでいますが、まだ法律上の問題とかルール上の問題で認められておりません。今後の大きな課題として残ります。
6.3 トランスレーションASPサービス
 企業がPOLINETを介して取引先とデータ交換する場合、POLINETが採用している標準電子書式に変換して送受信しなければなりません。一口に変換システムと言っても社内業務システムの環境によって変換システム導入の難易度が異なり、導入初期費用も安くないので、EDIを阻害する要因の一つになっています。
 港シ協は、この変換システムに必要なマッピング(社内ファイルと標準書式のデータ項目紐つけ作業のこと)、トランスレーションソフト、データ通信機能をASPサービスで提供する計画です。ユーザは、自社固有のフラットファイルをASPセンター送るだけで、ASPセンターで書式変換を行い、Cyber-POLINETに接続して指定した相手先にデータが送信されます。
6.4 ドットインパクトプリンターによる帳票印刷機能は必要か?
 今や、ビジネスシステムもインターネット、ウェブブラウザの利用が主流となりつつあります。印刷方式も、レーザープリンタやインクジェットプリンタを使ったカット紙印刷が主流です。
 情報化、EDI化促進の目的の一つとしてペーパーレスがありますが、取引相手先の対応次第で書類ベースの手続処理も並行して行わなければならない状況にあることも事実です。例えば、海貨業者から船社、ターミナルへ提出するドックレシート(D/R)、コンテナ積み付け明細(CLP)は、EDI対応船社、ターミナルへはデータ伝送できますが、非対応船社、ターミナルへは書類を持ち込まなければなりません。
 この2つの書式は、7〜8枚セットしたワンライティングフォームとなっており、ドットインパクトプリンターにより印字しなければなりません。しかも、船社ごとに少しづつフォームの仕様が異なっており、各項目の印字位置をプログラムで調整させるため、120〜150種類の船社フォームに対応させる必要があることから、特別仕様のドットインパクトプリンターの導入、フォーム印刷ソフト開発、導入費用が大きな負担となっています。
 港湾物流分野における各種手続は、書類受渡から電子手続に移行していきますが、完全電子化までの経過期間はどうしても電子化と帳票印刷の併用型とならざるを得ません。しかし、前述のコスト負担を軽減させるためには、現在のワンライティングフォームの他に簡便に導入できるカット紙にフォーム印刷する統一標準書式を認めてもらう必要があります。








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