5.EDI化促進のための方策
前述した国土交通省の「港湾物流分野における中小事業者の情報化促進のための調査」報告書は、民間EDIの促進方策について次のように纏めているので紹介します。
港湾物流分野における民間EDIの現状は、「取引相手企業の民間EDI参加率が低いことが民間EDIへの投資意欲を減じ、それが更に民間EDI加入を躊躇させる」という悪循環構造に陥っているとしています。
つまり、EDIを阻害している要因というのは、互いに関連・影響し合っているということ、単一の要因ではないということです。左図の楕円形の中に示すとおり、阻害要因は互いに鶏と卵の関係にあります。
大きな阻害要因である「相手業界の参加者が少ない」という原因を探ってみると、その事業者にとって「EDI導入メリットが少ない」とか、「書類搬送のほうがコスト的にも効率的にも有利だ」とする事業者がいます。それから、EDIの前提条件である社内業務システムがなければ、EDIデータを自動的に生成できません。ところが「この社内システムがない」とか、社内システムを作ろうにも「情報化投資負担が重過ぎて実現できない」という事業者がいます。こういう複合的な要素が絡み合って「取引相手業界の参加者が少ない」ということにつながっています。
このような現状を打破し、爆発的な普及をもたらす「クリティカルマス」(連鎖的な普及が始まる臨界数量)に至る好循環構造(民間EDI化率が上がる→効果が高まる→更に民間EDI化率が上がる→更に効果が高まる)へ転換し、民間EDIの促進を図るためには、企業、民間EDIネットワーク運営組織、業務ソフトを販売するソフトウェアベンダー、関連業界団体、行政等関係者が一丸となり、それぞれの立場に応じた以下に示す対応策を同時並行的に講ずる必要があると指摘、提言しています。
[1]民間EDIネットワーク運営組織に求められる対応策
社内業務システム未導入の事業者には、より安価なWeb-EDI(パソコンとインターネットで行う簡便なEDI)を提供する。また、社内業務システムから民間EDIへのメッセージのトランスレーション機能をASPサービスにより安価に提供する。
[2]民間EDIソフトウェアベンダー企業に求められる対応策
港湾業務パッケージソフトを開発・提供する民間EDIソフトウェアベンダー企業は、民間EDIネットワークに対応した低価格で良質なソフトウェアを販売し、ユーザ企業が民間EDIと接続するためのトランスレーション機能の開発費負担を解消する。
[3]民間EDIユーザおよび関連業界団体に求められる対応策
Web-EDIなどを利用することにより、民間EDIシステムの構築、運用の負担を軽減する。社内業務システムと民間EDIとを接続するためのトランスレーション機能を共同で開発し、費用負担を軽減する。
[4]行政に求められる対応策
民間EDIと行政手続のEDIとの接続を支援する。また、民間EDIの普及に対する支援を行う。