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別添1
"UK Marine Industries World Export Market Potential (2000年10月)"の結論(概要)
 
1. 海事産業18は英国経済にとって重要な位置を占める。GDPへの寄与率は3〜4%(主に原油価格による変動)。オフショアの石油・ガス産業だけでも航空産業(170億ポンド)に相当する。今後10年間、グローバルな海事産業の経済的重要性は増加し、輸出においてもビジネス機会が増えるものと思われる。
 
2. 英国海事産業は、推計423,000人の労働力を生み出す主要な雇用創出産業である。68,800人の海軍関係者を除いても、労働力は354,200人であり、他の主要な雇用創出産業(農業297,000人、電気・ガス・水道産業136,000人、航空産業155,000人)に比べても大きい。
 
3. 英国の最大の海事産業のいくつかはあまり明確ではない。海底電話線や海事サービスがその例である。また、海洋レジャー産業も英国の主要な市場である(レジャーボート市場は軍艦造船市場より英国経済への寄与が大きい)。
 
4. 実際上、ある産業はその経済指標よりも重要なものがある。英国海事教育産業における外国学生からの収入は1000万ポンドでしかないが、この産業は将来の意志決定者に対しそれを大きく上回る影響力を有する。
 
5. 世界市場のグローバル化は、国際貿易を増加させ、海事産業の需要を増大させる。一方、そのデメリットは、英国の製造業が益々海外の低賃金地域と競争しなければならず、論理的にはより多くの英国企業がそれらの地域に下請けに出し、英国の海事製造ベースを減らすことになる。それゆえ、低賃金地域の活用の傾向は、英国の事業に脅威とはならないが、英国製造の雇用には脅威となる。我々が実施してきた他の調査でも、一般的に海事産業の顧客は、[1]製品が目的に合い、[2]ライフサイクルサポートの要件に合う評判の良い供給者から売られ、[3]適正な価格であれば、製品がどこで作られたかは問題にしない。
 
6. マーケットシェアを維持し延ばすには、英国の海事産業界は、益々以下の3点に依存する必要がある。即ち、[1]ロー・ボリュームでハイテクで高価値の製品、[2]開発並びに製品デザインと基礎技術の所有権に基づく収入、[3]サービス産業の拡大。
 
7. 海事産業における国際競争は増大し、英国企業が成功するには、英国企業が欧州各国と同様な政府支援を得られることが不可欠である。
 
8. 造船業のような基盤産業のマーケットシェアを高めるためには、英国企業と政府は革新技術を生み出すために協力しなければならない。そのためには、次の手段が有効かも知れない。即ち、[1]船舶建造への造船事業者の参加機会の公平性の確保、[2]完成船舶ではなく船舶のフラットパックの提供、[3]多数の船舶建造注文を取り扱うための造船所間の協力。
 
9. 英国財政制度の変更も大きな影響をもたらす可能性がある。オランダでは、1996年に新しい税制度が開始され、最初の3年間で、自国籍船が約40%、雇用が5,000人から28,000人増加し、船舶建造注文も4倍になったと報告されている。
 
10. 英国海事産業への大きな脅威は、オフショア石油・ガス生産量の将来の減少である。多くの企業に対する影響は大きく、包括的な他の産業への転換プログラムはない。
 
11. 英国海事産業への政府等の支援は、競合する多くの国に比べ非常に少ない。英国貿易産業省は、いくつかの国では政府と民間企業間がより強い連携を持っており、米国及び日本は主要なプロジェクトへの効果的な政府支援が行われていることに言及している。
 
12. 海事産業分野では多くの情報が出されているものの、多くは曖昧で一貫性がなく、統計上の考察に使えず、業界分析に使用できない。この事実が、海事産業の重要性の理解を妨げ、投資を思い留まらせる要因となっている。
 
13. 軍事支出は海事産業に直接的、間接的(新技術や特殊製品の開発)に大きな影響を持っている。米国ではこれが特に顕著であり、多くの商業製品が米国海軍技術からスピンアウトしてきている。これに加え、米国政府は小さなハイテク企業から製品やサービスを購入しており、この事実がこれらの企業の世界市場における競争力を保証している。
 
14. 技能不足が英国海事産業の発展の制約になりつつある。これを解決するためには、海事産業の活動に関する大衆の理解を高め、あるいはキャリア機会を向上させ、トップレベルの学生を採用する必要がある。
 
15. 石油・ガスや海底電線等の巨大資本プロジェクト分野において、設計からエンジニアリング、購買、建造、プロジェクト管理に至る製品とサービスの完全統合パッケージの購入が増えている。英国は、このような"One-Stop-Shop"を提供する海事産業全体をカバーする企業がほとんどなく、これが英国を不利にしている。この問題の一面は、小さな英国舶用技術企業が成長した場合、英国での活動を継続しない可能性のある外国企業の傘下になることがしばしばあることに現れている。
 
16. 統合契約の他の一面には、次のようなものがある。石油会社等のエンドユーザーが研究開発への直接関与から次第に撤退してきている。今や新しい顧客である主契約者は研究開発を自分の役割と考えてきていない。食物連鎖末端の小さなハイテク企業は研究開発の直接投資不足を益々感じている。
 
17. オフショア産業においては、ハイテクの技術開発の多くは、国営石油会社の支援を受けたフランス及びノルウェーでなされた。
 
18. 多くの外国海事組織は、英国の海事専門技術の膨大な基盤に頼り、国際運営の場所として英国を選ぶ。これを発展させるため、英国は事業を行う良い場所であり続けなければならないが、これは本報告書の範疇外である。
 
19. 我々の報告書では、英国海事産業は、経済上重要な産業であるものの、業界を代表する意見を表明する組織がなく、業界内部の各事業分野間のまとまりがないことが判明した。英国海事産業は、政府や世論とともにシティーにおける同産業の地位を高めるだけでなく、若い世代に大きな将来性のあるエキサイティングで、高度技術の国際的産業であることを売り込むことのできるプロダクト・チャンピオンを欠いている。
 








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