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II. NSRP ASEの概要
 NSRP ASE(旧MARITECH ASE)は米国造船業の奨励により創設された。初代MARITECHプログラムは、生産性向上を促進する上で米国造船業者に相当な支援効果があったと考えられていたが、MARITECHは5ヶ年プログラムであり、1998年にはあと一年を残すばかりとなっていた。ASEは、初代MARITECHの研究結果を基にして発展する後続多年度プログラムとして立案された。1998年に、4億ドルの5ヶ年ASE技術開発事業が開始された。
II-1. MARITECH ASEからNSRP ASEへの名称変更
 1998年の発足当時、本プログラムはMARITECH ASEと呼ばれていた。2000年10月に、エグゼクティブ・コントロール・ボード(II-4を参照)はプログラムの名称をMARITECH ASEからNSRP ASEへ変更した。この名称変更の目的は、初代MARITECHプログラムとMARITECH ASEプログラムの根本的な相違を反映することであった。両プログラムの名称が似通っていることで、混乱を招き、ASEプログラム開始の際の方針転換を反映していないと考えられたのである。
 エグゼクティブ・コントロール・ボードによれば、初代のMARITECH研究開発事業は個々の造船所に限定された設計、建造戦略、先進技術の開発に焦点を当てたものであった。プロジェクトは、特定の造船所に対して予算が与えられ、成果は、それぞれのプロジェクトに直接参与した企業以外とは共有されないのが常であった。対照的に、ASEプログラムは、共同作業を通じて米国造船業全体の商業競争力の改善を図ることを主眼としている。ASEプログラムにおける研究開発予算は、通常、個々の企業ではなく、造船所、サプライヤー、研究機関で構成される多様なチームに与えられ、結果は業界全体に公開されるのである。
II-2. NSRP ASEの使命、理想、目標
 同プログラムの使命は、全米造船研究開発資金を運用し、米国海軍の艦艇建造コストを低減し、米国の国際競争力を確立し、契約獲得プロセスを改善する共同フォーラムを提供する技術に焦点を当てることと定義されている。
 プログラムの理想は、船舶技術・建造工程両面の改善に資する共同開発により、2006年までに米国造船業が次にあげるような活気のある自立した産業となることである。
◆ 国際競争力のある造船所として、船舶を能率的かつコスト効率よく建造する能力があると認められ、商船市場におけるシェアを大幅に拡大する。
◆ 海軍艦艇建造コストを大幅に削減するとともに、艦艇建造量の大幅な減少に対応し、かつ、将来海軍艦艇建造が必要とするインフラストラクチャーを確保する。
◆ 顧客の満足度、安全、品質、環境基準適合並びにコストサイクルタイムの合理化を維持する。
 
この使命を遂行し、ビジョンを達成するために、NSRP ASEは3つの目標を制定した。
◆ 米国造船産業の商船市場シェアの大幅拡大を支援する。
◆ 調達コスト、ライフサイクルコストの低減により、海軍艦艇のコスト効率を高める。
◆ 将来の艦艇需要、商船需要に応える能力を維持することにより、米国造船インフラストラクチャーを保持する。
 
 顧客の満足度、産業の安全性、製品の品質、環境法適合度を向上させつつ、これらの目標を達成するものである。








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