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第5章 本研究開発のまとめ
5−1 結論
 廃食用油をできる限り手を加えずに安価な燃料として使用できるエンジンシステムの構築を目的として、廃食用油セラミックスエンジンの研究開発を行った。その主な内容として、下記の研究開発項目を実施した。
 ・高温高圧容器、および急速圧縮膨張装置を使用したメチルエステル、廃食用油の燃焼観察
 ・廃食用油を燃料とした単気筒遮熱エンジンの性能試験
 ・4気筒遮熱エンジンの性能試験、および希釈トンネルを用いた粒子状物質の測定
 本事業により得られた結果をまとめると以下のようになる。
1) 高温高圧容器を使用した軽油、メチルエステル、廃食用油の燃焼観察によって、遮熱エンジン相当の空気温度では、3燃料ともほぼ同様の燃焼経過となることがわかった。
2) 急速圧縮膨張装置を使用して廃食用油を燃料にした遮熱エンジンの燃焼経過の高速度写真撮影に成功した。
3) 試作した副室式遮熱エンジンにおいて、廃食用油を燃料として十分運転が可能であり、その時の燃焼上の問題点は少ない。
4) 遮熱エンジンを用いることにより、エステル化などの処理、加工することなく、廃食用油を燃料としてそのままに適用できる。
5) 遮熱エンジンでは、廃食用油を未処理のまま燃料としても軽油とほぼ同等の性能・熱効率を達成できる。
6) 廃食用油を燃料とした4気筒遮熱エンジンでは燃焼系仕様を最適化することでNOx 3.2g/kWh、PM0.16g/kWh(DPF付加推定値)の低エミッション燃焼が可能である。
7) 廃食用油を燃料とした場合では、NOxおよびスモークが低減する。特に、スモークは半減する。
8) 遮熱エンジンでは、廃食用油と軽油との混合燃料としても、十分利用でき、多種燃料エンジンとしての可能性がある。
9) エンジンの試験結果と燃焼観察の結果から、当初設定した遮熱エンジンの燃焼コンセプトの妥当性を明らかにし、燃焼改善の指針を得ることができた。
10) 副室式遮熱エンジンにおいて、副室における燃料分布とそれによる燃料、混合気、燃焼ガスの早期噴出、副室噴流による主室燃焼の促進が性能向上のキーポイントである。
5−2 残された今後の課題
 遮熱エンジンに燃料として廃食用油を化学処理することなくそのまま適用することに成功し、軽油燃料とほぼ同等の性能、およびNOx、スモークの大幅低減のポテンシャルを示すことができた。一方、これらの性能上の有効性を活かし完成されたエンジンシステムとするにはいくつかの課題が残されている。廃食用油を燃料とする遮熱エンジンの残された今後の課題として、以下の項目を解決することが必要である。
 (1)より多様な廃食用油、植物油への対応の可能性
 (2)多気筒エンジンにおける燃費・性能の向上
 (3)多気筒エンジンを用いた長時間運転における信頼性の向上
 (4)セラミック部品の低コスト化








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