4−3 単気筒エンジン性能試験
試験に使用した単気筒副室式遮熱エンジンの主要諸元を表4・1に、構造を図4・1にそれぞれ示す。なお、表4・1に示す諸元は以下の試験に共通である。
表4・1 供試機関の主要諸元
|
シリンダ直径 |
110 mm |
|
|
行程 |
125 mm |
|
|
行程容積 |
1187.9 cm3 |
|
|
圧縮比 |
16 |
|
|
副室容積比 |
39 % |
|
図4・1 供試機関の構造
4−3−1 発熱量をあわせた時の軽油と廃食用油の性能
平成12年度において試験に使用した廃食用油の分析によって、軽油の発熱量のほうが廃食用油の発熱量に比べて約10%大きいことが判明した。そこで、軽油の燃料流量を、廃食用油の発熱量と等しくした場合における軽油の再試験を行った。試験条件を表4・2に示す。その時の性能および燃焼経過を図4・2、図4・3にそれぞれ示す。図から明らかなように廃食用油の性能、燃焼経過は軽油とほぼ同等である。特にスモークは大幅に低減している。
表4・2 試験条件
連絡口面積比 |
0.9%,1.5% |
噴射ノズル |
φ0.4×4‐60°φ0.55×1 |
回転速度 |
1200rpm |
負荷 |
4/4 |
燃料噴射時期 |
15〜0 degBTDC |
燃料 |
廃食用油、軽油 |
図4・2 軽油と廃食用油における機関性能
図4・3 軽油と廃食用油の燃焼経過
4−3−2 燃焼室設計要素の影響
燃焼室の形状などの設計要素はエンジンの性能、燃焼を大きく左右する。ここでは設計要素として燃焼室連絡口の数、連絡口の方向ならびに燃料噴射ノズルを取り上げ性能試験を行い、機関性能、燃焼に及ぼす影響を明らかにした。連絡口の数、方向は主室における火炎の分布状況を変化させ、さらに燃焼室壁面との衝突、干渉などによって、性能、燃焼に大きな影響を及ぼす。また、燃料噴射ノズルは副室内における燃料分布を変化させ、副室内の燃焼ならびにそれに続く主室内の燃焼に影響を及ぼし、エンジン性能を大きく左右する。
4−3−3 副室連絡口数の影響
平成12年度に実施した燃焼観察において、連絡口数が6噴口の場合には各連絡口から噴出する火炎の間は火炎に満たされず、未利用の空気が存在することが明らかにされた。そこで、連絡口面積比を一定にして連絡口数を8噴口として空気の利用を向上させることを試みた。試験条件を表4・3に示す。
表4・3 試験条件(連絡口数の影響)
連絡口面積比 |
1.5% |
連絡口数 |
6 (60°等分) 8 (45°等分) |
噴射ノズル |
φ0.4×4-60°φ0.55×1 |
回転速度 |
1200rpm |
負荷 |
4/4 |
燃料噴射時期 |
15〜0 degBTDC |
連絡口数を変えたときのエンジン性能を図4・4に示す。連絡口数を6噴口から8噴口に増加させると、概ね、図示熱効率、NOxが低下し、スモーク、COは増加している。また、噴射時期遅延に対して図示熱効率の低下が著しくなっている。なお、図示熱効率は噴射ノズルφ0.4×4−60°のほうが高く、6噴口の場合と同様である。
連絡口数を変えたときの熱発生率を
図4・5に示す。熱発生率のパターンは噴射ノズルが同じ場合にはほぼ同様のパターンとなっているが、連絡口数を8噴口にすると燃焼中期の熱発生が低下し、燃焼後期の熱発生が大きくなる傾向がある。このため、スモーク、C
Oが増加したものと考えられる。
図4・4 エンジン性能(連絡口数の影響)