日本財団 図書館


○燃焼経過
 燃料噴射時期10degBTDCの場合における熱発生率を図3・13に示す。多噴口ノズルでは熱発生率のパターンの影響は少なく、燃焼経過に及ぼす連絡口面積比の影響は小さい。このため、連絡口の絞り損失がそのまま図示熱効率に反映し、連絡口面積比0.9%の方が図示熱効率が低下したものと考えられる。単噴口ノズルでは、連絡口面積比が0.9%のほうが燃焼期間中の中〜後期にかけて熱発生率が高くなり、後期にかけては後燃えが大きく減少している。これは連絡口面積比0.9%では、副室から主室への燃焼ガスの流速が速く、このため、主室における燃焼ガスと空気との混合が改善され、燃焼期間が短縮し、その結果、図示熱効率が向上したためと考えられる。
 一方、燃焼経過(熱発生率パターン)に及ぼす燃料噴射ノズル仕様の影響は大きい。噴射ノズルを変えた場合の熱発生率を図3・14に示す。燃料噴射ノズルφ0.4×4-60°の場合では燃焼初期〜中期にかけて熱発生率が高く、燃焼後期において、後燃えが減少し、燃焼期間が最も短い。このために、図示熱効率も最も高くなっている。一方、燃料噴射ノズルφ0.16×4-40°の場合では熱発生率は低く推移しており、これはこのノズルでは噴口径が小さいため燃料噴射期間が長くなり、特に、廃食用油では粘度が高いため、特にその影響が大きく現れたものと考えられる。
 図3・11に示すように、燃料噴射ノズルφ0.4×4-60°では、噴射時期を遅延させても図示熱効率が低下しない。噴射時期を変えた場合の熱発生率を図3・15に示す。熱発生率において、燃料噴射ノズルφ0.4×4-60°の場合では、燃料噴射時期を遅らせても、燃焼の終了は遅れることはなく、ほぼ同時期となっている。このためこのノズルでは図示熱効率が低下しないものと考えられる。なお、上記以外のノズル仕様では噴射時期の遅延にともなって、燃焼終了の時期も遅れている。このため図示熱効率も噴射時期の遅延にともなって低下する。
z0001_042.jpg
図3・13 燃焼経過
z0001_043.jpg
図3・14 燃焼経過
 

z0001_044.jpg
図3・15 燃焼経過
 
 一般に噴射時期を遅らせることによってNOxは低減し、熱効率は低下する。図3・12に示すように燃料を廃食用油にしても同じ傾向である。低NOxを考慮すると、噴射時期遅延時に図示熱効率が低下しないこのノズルを使用した仕様が有利である。この仕様における副室内の混合気の形成位置と連絡口との位置関係、副室の空気流動、絞り損失、噴射系との関係など燃焼に及ぼす相互関係を詳細に検討することによって、低NOx、高熱効率を達成できる燃焼系を構築できるものと考えられる。
 
(3)運転後の燃焼室状況
 約30時間廃食用油で運転した後のピストンクラウンの状況を3・16に示す。ピストンクラウンには薄いすすの付着が一部に認められるものの、付着物は非常に少なく、図3・16に示すように、燃焼室壁面は非常に“乾いた”状態になっている。廃食用油では沸点の高い成分を多く含むため、未燃の燃料が燃焼しきれずに燃焼室壁面に付着・残留し、最終的に運転不可能となることが懸念されるが、遮熱エンジンでは生燃料の壁面付着は観察されず、また長時間の運転も可能であった。これは、エンジンの遮熱によって燃焼室壁面が高温になったため、未燃の燃料や火炎が燃焼室壁に接触しても付着した燃料は速やかに蒸発・燃焼し、あるいは一旦すすとなって付着しても焼ききれるためと考えられる。
 
3)まとめ
(1)遮熱エンジンにおいて廃食用油を燃料としてそのまま使用可能である
(2)性能は軽油とほぼ同等である。
(3)廃食用油ではスモークは軽油に比べて約40〜50%、NOxは約20%低減した
(4)低NOx、高熱効率を達成する燃焼系構築のための指針が得られた
(拡大画面: 33 KB)
z0001_045s.jpg
図3・16 約30h運転後のピストンクラウンの状況
 








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION