3−3−5 急速圧縮膨張装置を使用した廃食用油の燃焼観察
高い熱効率と低エミッションを実現するためには、燃焼の改善が不可欠である。そこで、実機と同じ燃焼室と燃焼時の実機の空気温度、圧力を再現できる急速圧縮膨張装置を使用して、廃食用油の燃焼経過を高速度写真撮影し、その燃焼状況の観察・解析を行うことによって、燃焼特性を明らかにする。その結果から、燃焼改善・性能向上の指針を得る。また、従来燃料である軽油および軽油/廃食用油の混合燃料についても同様の燃焼観察を行い、多種燃料エンジンとしての可能性を探る。
1)急速圧縮膨張装置の概要
急速圧縮膨張装置本体を図3・17、図3・18に示す。急速圧縮膨張装置は、燃焼室に観察窓を取り付け、エンジンの燃焼を1回だけ再現して、その時の燃焼経過の高速度写真撮影を可能としたものである。試験に使用した急速圧縮膨張装置は、実機と同じピストン速度(回転数)が得られることが大きな特徴で、シリンダ径、燃焼室形状および圧縮終了時の空気温度、圧力を実機と同じに設定することにより、実機に極めて近い燃焼を再現することができる。この時の燃焼経過を高速度写真撮影し、観察することにより、燃料の分布、着火時期、着火位置、燃料噴霧・火炎の発達、ガス流動、壁面との干渉など、実機試験では得られない燃焼室内の情報を得ることができる。燃焼写真の詳細な観察・検討により、実機における燃焼室設計の指針を得ることができる。
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図3・17 急速圧縮膨張装置外観
図3・18 急速圧縮膨張装置
2)燃焼室形状
試験に使用した燃焼室の仕様を表3・4に、形状を図3・19にそれぞれ示す。観察窓の取付けによる改造・変更を除いて、燃焼室形状は前章で述べた実機の形状を再現している。
表3・4 燃焼室仕様
シリンダ径 |
110mm |
圧縮比 |
16相当 |
容積比 |
39% |
連絡口面積比 |
1.5%, 0.9% |
連絡口数 |
6 |
ノズル噴口数 |
単噴口、 4噴口 |
噴口径/噴霧角 |
単噴口 |
φ0.55/0° |
4噴口 |
φ0.16/40°()、φ0.4/60° |
図3・19 急速圧縮膨張装置燃焼観察用燃焼室の形状
3)試験条件と撮影条件
急速圧縮膨張装置を使用した燃焼撮影における試験条件および撮影条件を表3・5に示す。試験条件は、実機における運転条件に即して設定した。なお、予め予備試験を行い、実機相当の運転条件(1200rpm、空気温度、圧力)を再現できるように、表3・5に示す駆動圧力、圧縮始め空気圧力、温度を決定した。
表3・5 試験条件
燃料 |
廃食用油 |
軽油 |
軽油・廃食用油混合(50%) |
燃料噴射量 |
実機全負荷相当 |
燃料噴射時期 |
6degBTDC(実機10degBTDC相当) |
駆動圧力 |
約1MPa(実機1200rpm相当) |
圧縮始め空気温度 |
523K(遮熱エンジン相当) |
373K(水冷エンジン相当) |
圧縮始め空気圧力 |
173kPa |
撮影速度 |
9,000 fps |
照明 |
主室 |
クセノンランプ |
副室 |
銅蒸気レーザー |
フィルム |
400ftカラー |