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3−3−4 廃用油を燃料とした遮熱エンジンの性能
 廃食用油を燃料とする遮熱エンジンを開発するため、まず、単気筒エンジンによる性能試験を行い、廃食用油の基本的な燃焼特性とエンジン特性を明らかにする。そして、後述する急速圧縮膨張装置による燃焼観察を平行して実施し、廃食用油エンジンに適した燃焼系を開発する。
 
1)単気筒エンジンの構造および燃焼室
 試作した廃食用油遮熱エンジンの構造および燃焼室を図3・6に示す。遮熱は主に副室、主室、ピストンクラウン等の燃焼室周りおよび吸気・排気ポートに行っている。燃焼室周りの材料として高温強度、低熱伝導率の低い窒化珪素を用い、さらにその背面に空気層を設けて遮熱の効果を大きくした“魔法瓶構造”である。このような構造によって、燃焼室内面は高温となるにもかかわらず、エンジン外周は冷却エンジンとほぼ同等に維持でき冷却系の除去を可能とした。シリンダライナーは、クランク角で上死点前後約50degの時におけるピストン頂面の位置で遮熱ガスケットを介して2分割とし、上方はシリンダヘッドと一体化し、ヘッドライナーと称している。したがって、高温となっているヘッドライナーから下方のライナー(ボディーライナー)への熱は遮断され、ライナー温度は冷却エンジンとほぼ同等で、ピストンリングとライナーの潤滑の問題はない。
 3-3-2に示す燃焼コンセプトに基づき、副室はシリンダ中央に配置し、多連絡口とし、その向きを放射状にシリンダ壁に向けている。燃料噴射ノズルは副室の上部に置き、噴射した燃料が連絡口付近で空気と混合し、早期に主室に噴出するような燃焼を達成するため、ノズルの形式はホールノズルとし、種々のノズルを交換することにより、噴射系および噴射方向の影響について試験できるようにしている。また、燃焼はスワール、スキッシュなどの空気流動に大きく影響されるので、種々の燃焼室形状を試験できるように副室、主室とも容易に交換できるようにしている。
 
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図3・6 廃食用油エンジンの構造
 
2)単気筒エンジンの試験結果
 試験を行った試験条件を表3・3、噴射方向を図3・7にそれぞれ示す。試験は廃食用油と軽油について行い、その他はすべて同一である。吸気圧、排気圧は加給を考慮して標準的な圧力値を設定した。なお、燃料流量は、表3・3に示すように4/4負荷相当に設定したが、1サイクル当たりの投入熱量は廃食用油より軽油の方が約10%大きくなっている。
表3・3 試験条件
回転速度 1200rpm
圧縮比 16
容積比 39%
連絡口面積比 1.5%、0.9%
連絡口数 6
噴射ノズル 単噴口、4噴口
ノズル噴霧角 単噴口 0°(φ0.55)
4噴口 40°(φ0.16)、60°(φ0.4)
燃料噴射量 4/4負荷相当一定
燃料噴射時期 15 〜 0 degBTDC
吸気管圧力 500 mmHg
排気管圧力 550 mmHg
燃料 軽油、廃食用油
 
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図3・7 噴射方向
 








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