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3−3−2 廃食用油を燃料としたエンジンの燃焼コンセプト
 廃食用油エンジンにおいて、高い熱効率および低NOx、低スモークを実現する燃焼のコンセプトを以下のように設定し、その概要を図3・5に示す。
[1] 窒素酸化物の排出が少ない副室式とする。
 エンジンの性能が燃料の噴射特性に大きく左右される直噴式に対して、副室式は燃焼室形状、空気流動等を用いて燃焼をコントロールできる手段が多くあり、低NOx、高い熱効率を両立できる可能性を持つ燃焼方式である。特に、廃食用油を燃料とした場合では通常の燃料に比べて、粘度が高い等、燃料の性状が異なることから燃焼が異なることが予想される。そこで、廃食用油を用いたエンジンでは燃焼過程をコントロールできる手段が多く、また、一般的に低NOxの特性を持つ副室式とした。
[2] 副室での過濃、主室での希薄燃焼による低NOx化
 燃料の必要空気量に対して、空気が少ない場合(過濃)、逆に多い場合(希薄)にNOxの生成は低下する。また、燃焼は早く終了させたほうが熱効率は向上する。廃食用油エンジンでは、燃焼室を分割した副室に燃料を噴射するので、必然的に燃料に対する空気量は少なくなり過濃な状態になる。また、主室での燃焼を早期に終了させるために、燃料・火炎を連絡口付近に集中させ、早期に主室に噴出させる。
[3] 主室への燃料・火炎の分散を向上させるために中央副室式、多連絡口とする
 熱効率を高くするために、主室で燃焼を活発に行わせて、燃焼を早期に終了させる。また、副室から過濃な混合気の燃焼ガスが噴出するので、主室では空気と十分混合させた希薄燃焼によってNOxとすすの生成を抑制する。このためには、副室から噴出するガスと主室の空気とが素早く混合させることが必要である。このために、副室をシリンダ中央に置き、放射状に複数の連絡口を設けて、副室から噴出する燃焼ガスを主室に均等に分散させる。特に、副室をシリンダ中央に配置することにより噴出するガスがシリンダ壁に到達する距離を最短にすることにより、燃焼室外周にある空気との混合、燃焼を促進でき、燃焼期間の短縮、希薄燃焼が実現できる。
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図3・5 廃食用油エンジンの燃焼
 
3−3−3 試験に使用した廃食用油の性状
 以下に述べる単気筒エンジンおよび急速圧縮膨張装置における試験に使用した廃食用油の性状を表3-2に示す。
表3・2  試験に使用した廃食用油の性状
項   目 分析値 備  考
引火点 K(以上) 573 (300℃)
セタン指数   算出不能
流動点 -7.5  
動粘度 303K (30℃) mm2/s 51.02  
総発熱量 J/g 39400 (9413 kcal/kg)
低発熱量 J/g 36800 (8792 kcal/kg)
残留炭素(10%残油) mass%(10%残留) 測定不能  
密度 g/cm3 (288K(15℃)) 0.9239  
質量組成 炭素  % 77.8 微量成分を除く
水素  % 11.5 微量成分を除く
酸素  % 10.7 微量成分を除く
全硫黄  ppm 3  
窒素   ppm 40  
全塩素  ppm   4  
平均分子量 445  
蒸留性状 初留点(IBP) K 456 (183.0℃)
5容量%留出温度℃ 502 (229.0℃)
10%  K 536 (263.0℃)
20%  K 551 (278.0℃)
30%  K 556 (283.0℃)
40%  K 563 (290.0℃)
50%  K 576 (303.0℃)
60%  K 588 (315.0℃)
70%  K 599 (326.0℃)
80%  K 610 (337.0℃)
90%  K    
95%  K  
97%  K  
終点(EP)  K 615.5 (342.5℃)
全留出量 ml 85.5  
残渣 タール状物質  
減失量 −   
酸価 AV  mgKOH/g 1.62  
ヨウ素価 IV mgI/g 121.5  
ケン化価 SV mgKOH/g 191.6  
水分 ppm 830  
夾雑物 0.11  
曇り点 K 266.5 (-6.5℃)
脂肪酸組成 ミリスチン酸(C14) %(面積百分率) 0.6  
パルミチン酸(C16)     〃 10.5
ステアリン酸(C18)     〃 3.9
オレイン酸(C18−1)     〃 32.1
リノール酸(C18−2)     〃 42.7
リノレン酸(C18−3)     〃 6.5
その他     〃 3.7
理論空燃比 12.34  
 








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