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7.おわりに
 近年、注目すべき社会の変化としてIT革命があり、その成果を積極的に航行安全に生かしていくことにより、特に船舶の輻輳する海域においてはユーザーのニーズに沿った迅速かつきめ細かな情報提供や有機的な交通管理が可能になってくると思われる。
 一方、近年は物流の効率化が推進されてきたことや、産業界による自発的な安全対策が講じられてきたこと等により、安全規制においても規制緩和が求められている。海上交通において、いかにして安全性と効率性の調和という課題を実現していくのか、あらゆる角度から検討しなければならない。船舶運航者や船会社が求める安全と客観的かつ専門的な判断に基づく安全とは、実態の認識から評価や価値観に至るまで、その思考的地平が異なっており、さらに外国船舶になればその差異も大きいと考えられる。
 ところで本稿では論じていないが、航行安全を考える上で重要なキーワードとしてサブスタンダード船がある。安全や環境保全に関する条約証書を持ちながら、実質的な意味において条約に定める基準に完全に適合していないサブスタンダード船は、航行安全を阻害する大きな問題となっている。サブスタンダード船は、設備・性能上の問題から本質的に危険なばかりではなく、各種の規制や税制が緩やかな国(便宜置籍国)に登録されていることが多いため、その問題解決方法も複雑になっている。
 日本船長協会が平成9年から毎年4月に行っている実態調査の結果によれば、調査を実施した我が国諸港に入港する外航船のおよそ40〜50%に設備・性能関係(船体構造、主機、レーダー、海図等9〜10項目)又は乗組員関係(船長・航海士の能力等3〜4項目)について何らかの問題点が指摘されている。調査が行われた船舶の約4分の3が総トン数1万トン以上、約4分の1が1万トン未満の船舶であり、問題点が指摘された船舶はそれぞれ35〜45%程度、65〜70%程度であったことから、後者により問題が多いことが伺える。問題点の指摘を受けた船舶の主な国籍は、ベリーズ、セントヴィンセント、カンボジア、中国、ロシア、トルコなどである。
 近年、サブスタンダード船による重大海難が世界的に後を絶たないことから、世界的にPSC(ポート・ステート・コントロール)を強化する方向にある。我が国では、PSCの実施体制強化を図るため、平成9年度から地方運輸局等に外国船舶監督官が配置されている。外国船舶監督官は、23官署に64名が配置(平成12年度)され、我が国に入港する外国船舶へのPSCを実施し、その結果、問題のあった船舶に対し改善命令又は航行停止命令の処分を課すとともに、処分船リストを公表している。また、ナホトカ号(船齢26年)事故の原因調査結果を受けて我が国は、IMOに、タンカーの船体構造強度の健全性を確保するための旗国検査の強化(板厚測定報告書への板厚衰耗限度の記載、船体の縦強度の評価)及び寄港国によるPSCの強化(船体構造に問題があった場合の旗国とIMOへの通報制度)を提案している。
 このように海上交通をとりまく環境は変化しており、航行安全を確保するためには、単に近接した直接的な問題のほかに、その背景にある多種多様な遠因についても解決しなければならず、今日のグローバル化にともなって国際的協調が必要となっている。








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