3. 地域レベル
地域海洋プログラムも、これら地方と国レベルでの展開に追いつく必要がある。これも70年代の縦割り的取り組みから90年代の統合的取り組みに移行する必要がある。機構面の「再活性化」は、UNCLOS/UNCEDプロセスが創り上げた全文書の実施のために不可欠である。この「再活性化」はすでに始まっている。その引き金になったのは2つの展開である。陸上主体の活動からの汚染防止のための地球的活動プログラム(GPA)実施と、地中海諸国によるバルセロナ条約の1995年改正である。
UNEPはGPAを実施する責任があり、これはほとんど国レベルで、しかも地域的な協力を介して実施しなければならない。地域レベルでは、この実施には地域海洋プログラムの権限の拡大を必要とする。陸上主体の活動からの汚染を取り扱うのは途方もなく複雑な作業である。UNEPは、自身が、地域海洋プログラムの調印当事国のみならず、国連の海洋を扱う専門機関、海洋環境に関係する地域機構、その他地域開発銀行などの地域機構、民間部門、必ずや拡大するに相違ない議題に利益を反映させねばならない非政府組織の参加と協力を等しく必要としていることを認めている。提案は、事実、次のことに努めることを繰り返し述べている。
UNEP地域海洋プログラムを再活性化するが、それはとりわけ地域プログラムの適切な活動を円滑にすることによって行う。
提案はつぎのように述べている。
UNEPとパートナー機関の協力、関連の地球的、地域的プログラム、機構、協定は、地球的行動プログラムをうまく実施するには不可欠である。この協力により、地球的行動プログラムの実施に向けての取り組みが、より広範な文脈のなかで、なかんずく人間の健康(WHO)への懸念、沿岸区域の生産性(FAO)生物多様性の滅失(CBIなど)放射線防止と海洋汚染監視(IAEAとWHO)発展の遅れと貧困(UNDP)、人口動態(UNCHS/Habitat)、食糧安保の低下(FAOとWFP)、地球規模の環境変化(ICSUのIGBP)、自然保護(WWF、IUCN)海洋汚染監視と放射線防止(IAEAなど)を網羅して確保されるのである
26。
したがってこの議題は純粋に部門横断的、分野横断的である。これは統合的沿岸管理実施のために包括的、統一的取り組みを必要とするが、これは地方と国レベルですでに始められたことと一致する。
これらすべての組織、機構、グループの代表を集めた集会は、一部門のプログラムよりはるかに広い権能を持つ。このプログラムのみの検討にその権限を限定するのは浪費である。この種の集会は間違いなく、すべての条約、協定、UNCLOS/UNCEDプロセスのプログラムの実施を取り扱う権能を持つ。したがって、相互作用的な仕方で地域に影響を与えるあらゆる範囲の法制面の、準法制面の文書の実施を扱う調印当事者の2年ごとの会議の一部としてこの集会を制度化するよう示唆する向きもあるかもしれない。これら条約、協定、プログラムの一つひとつに固有の体制があるにしても、絶対不可欠であるのは、地域の文脈における運営レベルでこれらの規範を調和させること、実施を統一して重複を処理し、作業の二重手間と食い違いを回避することである。
GPAの実施が、地域海洋プログラムの再活性化の引き金役を引き受けられるというのはこの意味においてである。
2つ目の引き金は地中海から来る。地中海地域海洋プログラムは、現在世界にまたがる一連のプログラムの最初のものであった。これはその一連のプログラムでは最も発展したもので、この条約と行動計画の改正を得て、もう一度、この発展の最前線に立っている。これらの文書の1995年の改正はプログラムを70年代の縦割りの取り組み方から90年代の統合的な取り組み方へ育成した。この改正は、予防型の取り組み、海洋と沿岸を統合的に管理するなどの80年代、90年代の主な新しい概念を取り入れ、これをもとに、最初の地域持続可能な開発委員会を創設し、主要なグループである非政府部門を対等のパートナーとして、投票権を含む意思決定プロセスに引き入れた。この展開は他のすべての地域が検討すべきで、全体としてプログラムの再活性化を促すものではないであろうか。これはさらなる機構上の革新を伴うもので、このことは本研究の実施のツールを扱う第III部で検討する。
4. 地球レベル
UNCLOS IIIの終了以来、縦割り的な構造の国連には、政府と国連の人間が海洋空間の密接に絡み合った問題を全体として討議できる討論の場はなくなっている。この種の討論の場が必要であるとする認識は過去数年高まりつつある。これは海事に捧げられた持続可能な開発委員会の第7回会期(1999年)で具体化した。そこで総意されたのは、毎年事務総長が取りまとめて総会に示すとおり、このとてつもない複雑な問題を扱う権能を持つ国連の機構は、その構成国の普遍性と幅広い権限からして、当総会をおいて他にない、ということであった。しかしながら、誰の目にも明らかなとおり、総会にはこの極めて包括的な課題を十分に議論する時間は与えられていない。事務総長報告は年を追って長く、複雑になり、措置を講じなければならないものとして光を当てるべき項目は増えつづけている。総会がこれまで自由にできた半日で的確にこれができると考えるとしたら、それは明らかに非現実的である。したがって、総会がこの問題に必要な時間を割くようにできる仕組みを作らなければならなかった。CSD7の提言により、この仕組みが今やできあがった。その名称は国連海洋と海洋法に関する非公式諮問プロセス(UNICPOLOS: United Nations Consultative Informal Process on Ocean and the Law of the Sea)である。UNICPOLOSは毎年、休日を除くまる1週間会議を開き、その権限は、海洋問題の諸展開を総会が効果的、生産的な方法で毎年、審査できるようにすることで、このため海洋と海洋法に関する事務総長報告を検討し、検討すべき特定の問題を提議し、政府間、機関間レベルでの調整と協力を強化すべき地区を特定することに力点を置く
27。これは総会の全構成国とオブザーバー(政府間組織)および主なグループに開放されている。総会のプロセスとして、それは構成として部門横断的、分野横断的であり、機能として統合的である。これは、これまでのセクションで地域、国、地方レベルで検討したプロセスの地球版である。
2000年5〜6月のUNICPOLOS第1回会期での課題の取り組み方は慎重であったが、効率のよいものであった。政府間、機関間レベルでの調整と協力を強化すべき地区を特定することに力点を置いて検討した具体的な案件は、不法、無統制、報告なしの漁業(IUUF)と陸上を基盤とする活動からの汚染の経済社会的影響であった。その結果は有益な提言など包括的報告となった。
第2回会期は2001年5月の予定である。この会期用に選択された具体的案件は海賊行為と海上の武装強奪、海洋科学と海洋技術の開発と移転、本研究第III部に示したとおり運用レベルでの統合が本当に必要となる2つの大きな課題である。
あたかもオーシャン・ガバナンスの機構的部分の環を閉じるように、UNICPOLOS 2000は以下の提言を各国政府にあてて行ったが、そのなかで強調したことはつぎのとおり。
政策を立案し意思決定するために、関係する全部門が貢献できるようにする統合プロセスの、地域、国、地方レベルでの重要性。
そしてつぎの注意事項を各国の政府に書き送った。
各国の政府が、海洋についての意思決定の分裂を避けるため、このプロセスを確立し、相異なる国際討論の場での戦略と取り組み方を調整することの責任。
オーシャン・ガバナンスの地球規模の機構面のその他枠組みは進化するであろう。したがって行政的調整委員会の海事小委員会(ACC/SOCA)(フランソワさん、名前はこうですか)の海洋関連活動国連専門機関とプログラムを合理化して調整する権限の行使は改善が必要であろう。これは、総会が与えたガイドラインをとおしてのみ達成できるが、これはUNICPOLOSを通じて大いに円滑化されるであろう。
このところ数年議題に上っているもう1つの提案はマルタ政府が持ち出したものである。それは非植民地化プロセスの権限を全うした信託統治理事会を改組して、ある種の人類共同財産の管理人にする、というものである。しかしこれには憲章の改正が必要で、現在の政治状況では少なくとも今後4年間は無理であろう。当面、共同財産の概念から生じる問題は、総会のもとにとどめる必要がある。