日本財団 図書館


緒言
 ウェブスター辞典の定義によればgovernanceXとは「統治の技術、仕方、機能、力」である。ローマ・クラブはこの用語に若干異なる意味付けをしている。クラブの文献1のなかでgovernmentとgovernance が区別されるが、英語(または恐らく仏語)以外の言語では反映させるのが困難な区別である。governmentは国家をgovernance(統治)することである。governanceははるかに多くのものを含む。それは家族を束ねる方法、企業、学校、教会を運営ないし経営する方法でもある。習慣、伝統、文化を含む。哲学に根ざし、つまるところ、人間が人間同士、そして人間以外の自然との関係を決定づける人間の本性について我々が抱くビジョンに依拠する。したがってocean governanceは海洋に関わるさまざまな問題を政府のみならず、地方共同体、産業その他利害関係者が統治する方法のことを指すものである。これにはそれらが創り出した国内法・国際法、公法・私法、慣習・伝統・文化、制度・手続が絡む。このことは明らかに極端に複雑なシステムを生み出す。本論文の意図は、以下のことを次の順序で整理することである。
 
 ・ 法制面の枠組み
 ・ 機構面の枠組み
 ・ 実施のためのツール
 ・ 過去の状況に与える効果
 
 法制面の枠組みはグローバルである。グローバリゼーションは、好むと好まざるとに関わらず、眼前にあり、世界の海洋ほどグローバルで、相互につながったものはない。機構面の枠組みは地球、地域、国、地方の各レベルでの分析が必要である。実施のツールはこれらすべてのレベルをとおして個人という核心の部分に及ぶ。最も個人的なことが最も普遍的であるというところは詩か夢のごとくである。したがって全体をながめる個人のビジョンが普遍の中に反映される。それはオーシャン・ガバナンスを超えて世界のガバナンスになる。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION