(5)各手法によるモーダルシフト輸送量等の推定結果
・地域貨物流動調査に基づいたモーダルシフト輸送量の推定結果
(4)で説明した2つの手法のうち、地域貨物流動調査に基づいて推定したモーダルシフト船によるモーダルシフト貨物輸送量を表1.1-5の推定A表のe欄に示した。
モーダルシフト船の輸送量は1990年の100億トンキロ弱から1999年の約170億トンキロへと70%以上の増加であったと推測された。また、モーダルシフト船とフェリーの合計輸送量は1900年の約200億トンキロから1999年の約300億トンキロへと、約50%の増加率であると推定された。
1999年におけるJR貨物輸送量(188億トンキロ)はモーダルシフト船の輸送量(170億トンキロ)およびフェリーによる輸送量(126億トンキロ)とほぼ同等と言う推定が得られたが、重量トンべースでみた場合のJR貨物の輸送量はモーダルシフト船の輸送量の3倍強という試算結果もあり、そのことからすればここで得られた鉄道輸送量の比較的大きな寄与も不自然ではないと考えられる。
・内航船舶輸送統計年報に基づいたモーダルシフト輸送量の推定結果
次に、内航船舶輸送統計年報に基づいたモーダルシフト輸送量の推定結果を表1.1-5の推定B表のd欄に示した。
この場合、モーダルシフト船の輸送量は約200億トンキロと上記の推定値の2倍程度の値と推定されたが、経年的には最近10年間で殆ど増加が認められないという結果が得られた。フェリーを含めた場合の合計輸送量でも、1990年の約320億トンキロから1999年の約330億トンキロと、ほとんど増加しておらず、モーダルシフトはあまり進展していないという結果が得られた。
この結果は上記の方法による推定値(
図1.1-2)とかなり異なるものであるが、次に述べる分担率の状況にむしろ合致する結果である。
・分担率からみたモーダルシフトの状況
冒頭で述べたように、広い意味では貨物の種類や距離に関わらず海運の輸送量の割合を増加させることがモーダルシフトの意義である。日本全体の輸送量をどの輸送機関が担ったかを示す分担率はその状況を端的に示す目安になる。
ここでは、上記の異なる結果となった2とおりのモーダルシフトに関する推測結果を補完する意味で、分担率からみた海運の状況について検討する。
1990年(分担率45%)以降の海運の分担率は減少傾向が明らかで(表1.1-6および図1.1-3)、1999年度では41%と4ポイントの減少になっている。
これを輸送物資別に概観すると(図1.1-4)、7種類の基礎物資の海運による輸送量はやや減少傾向にあり、それ以外の物資の輸送量は増加傾向にあることがわかる。この状況を輸送機関全体の輸送量に占める割合(分担率)でみると(図1.1-5)、分担率は主要7品目(基礎物資)ではやや減少傾向、7品目以外でも横ばい状態にある。つまり、分担率を目安とすると、海運輸送は主要7品目である基礎物資をはじめ半製品などの基礎物資以外でもモーダルシフトはあまり進んでいないと推定できる。
輸送トンキロ(百万トンキロ) |
年度 |
内航 |
自動車 |
鉄道 |
計 |
1990年 |
244,500 |
274,200 |
27,200 |
545,900 |
1991年 |
― |
― |
― |
― |
1992年 |
248,000 |
281,600 |
26,700 |
556,300 |
1993年 |
233,500 |
275,900 |
25,400 |
534,800 |
1994年 |
238,500 |
280,600 |
24,500 |
543,600 |
1995年 |
238,300 |
294,600 |
25,100 |
558,000 |
1996年 |
241,800 |
305,500 |
25,000 |
572,300 |
1997年 |
237,000 |
306,300 |
24,600 |
567,900 |
1998年 |
227,000 |
300,700 |
22,900 |
550,600 |
1999年 |
229,400 |
307,100 |
22,500 |
559,000 |
分担率(%) |
年度 |
内航 |
自動車 |
鉄道 |
計 |
1990年 |
44.8 |
50.2 |
5.0 |
100.0 |
1991年 |
― |
― |
― |
― |
1992年 |
44.6 |
50.6 |
4.8 |
100.0 |
1993年 |
43.7 |
51.6 |
4.7 |
100.0 |
1994年 |
43.9 |
51.6 |
4.5 |
100.0 |
1995年 |
42.7 |
52.8 |
4.5 |
100.0 |
1996年 |
42.3 |
53.4 |
4.4 |
100.0 |
1997年 |
41.7 |
53.9 |
4.3 |
100.0 |
1998年 |
41.2 |
54.6 |
4.2 |
100.0 |
1999年 |
41.0 |
54.9 |
4.0 |
100.0 |
貨物地域流動調査から作成
海運にはフェリー航走による輸送量は含まれない
図1.1-3 輸送機関全体に占める海運の分担率 (トンキロべース) |
上記の表から作成
図1.1-4 品目別内航海運輸送トンマイルの推移
(注)年度べース。2000年のみ暦年。
(資料)内航船舶統計年報・月報
図1.1-5 内航海運分担率の推移 (主要7品目とそれ以外) |
出典(図1.1-4も含めて):内航海運ビジョン、日本内航海運組合総連合会(2001)