(3)フェリーおよび鉄道によるモーダルシフト輸送量の推定
まず、フェリーによる輸送量については、自動車輸送統計に記載がある長距離フェリーの航送量(台キロ)に、同統計に別途記載がある営業用車両の実働1車当たりの輸送トン数(t)を乗じてフェリーによる輸送量(トンキロベース)とした(表1.1-4上段)。推定された輸送量は約120億トンキロで、近年10年間は1%/年弱の伸び率を示している。
運航距離300km以上の「長距離フェリー」は平成11年4月1日現在で22航路・総延長18,434kmの定期航路ネットワークを有し、1999年度で約143万台のトラックを平均645km輸送している。また、長距離フェリーで輸送されるトラックのうち66%が無人航送によるものである。冷凍車専用電源を豊富に装備して東京-苫小牧を20時間(速力30ノット)で結ぶ高速貨物フェリーほっかいどう丸(1999年9月就航)の就航の事例もあり、長距離フェリーは物流市場、特に雑貨輸送において国内物流の一翼を担っているといえる。
次に、鉄道の輸送量については鉄道輸送続計に基づき、JRコンテナ輸送量(車扱貨物を除く)を鉄道による輸送量とした(表1.1-4下段)。
鉄道による貨物輸送量は、190億トンキロを前後に1990年以降ほとんど変化していないことが認められる。
表1.1-4 長距離フェリーおよび鉄道によるモーダルシフト輸送量の推定値
年度 |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
長距離フェリー航走量(百万台キロ) |
1,058 |
1,084 |
1,063 |
1,059 |
1,176 |
1,165 |
1,241 |
1,212 |
1,191 |
1,170 |
(1,194) |
実働1日1車当たり輸送トン数(トン) |
11.27 |
11.60 |
10.69 |
10.61 |
10.48 |
10.47 |
10.61 |
10.41 |
10.43 |
10.81 |
10.97 |
長距離フェリー輸送量(億トンキロ)
(上記2種の数値の積) |
119 |
126 |
114 |
112 |
123 |
122 |
132 |
126 |
124 |
126 |
131 |
・航走量の( )は1994〜1999年の推移からの推定値
年度 |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
JR貨物輸送量(億トンキロ) |
185 |
189 |
189 |
184 |
180 |
192 |
200 |
201 |
190 |
188 |
185 |
(4)内航海運(フェリーを除く)によるモーダルシフト輸送量の推定
次の2つの推定手法により、それぞれ内航海運(フェリーを除く)によるモーダルシフト輸送量を推定した。
・貨物地域流動調査に基づく推定
国土交通省が示しているモーダルシフト化率の実績値では率(%)は示されているものの、輸送量そのものは示されていない。モーダルシフト貨物の輸送量が推定できれば、上記のフェリーおよび鉄道輸送量を差し引くことでモーダルシフト船によるモーダルシフト輸送量は容易に推定できる。
そこで、「全貨物量のうち輸送距離500km以上の雑貨輸送量(産業基礎物資(鉄道では車扱貨物)を除く)の占める割合(総トンキロ数べース)は、約2割と見込まれる」(
図1.1-2注3参照)の仮定に基づき、貨物地域流動調査で得た総輸送量(トンキロべース)に0.2を乗じ、さらに国土交通省が示しているモーダルシフト化率を乗じてモーダルシフト貨物の輸送量を推定した。この手法による推測は表1.1-5の上段に示した。
・内航船舶輸送統計年報に基づく推定
次に、内航船舶輸送統計年報で収集されているトンキロベースの輸送量からモーダルシフト船の雑貨貨物輸送量を推定した。
内航海運の輸送形態は、専用船・専航船により鉄・石油・セメント等の工業原料を輸送する「基礎素材型物資輸送分野」と、主として「コンテナ船」や「RORO船」により一般貨物を輸送する「雑貨輸送分野」とに分かれる。日本内航総連合会は内航輸送について品目別に輸送量を調査しており、統計では化学肥料、その他の化学工業品、紙パルプ、繊維工業品、食料工業品、日用品、その他の製造工業品の計が「雑貨」として扱われている。
雑貨のうち500km以上の距離を輸送するものの割合についての統計値はない。しかしながら、紙パルプおよび食料工業品の2品目については輸送距離ごとの輸送量が集計されている。そこで、両荷物種について、全輸送量のうち500km以上の輸送量が占める割合(トンキロベース)を計算により求め、他の雑貨についても500km以上の距離を輸送するものの割合は紙パルプ及び食料工業品と同一であると仮定し、輸送距離が500km以上の雑貨貨物量つまりモーダルシフト貨物量を求めた。この手法による推測結果は表1.1-5下段に示すとおりである。
表1.1-5 内航海運(フェリーを除く)によるモーダルシフト貨物輸送量の推定値2種
・国土交通省貨物地域流動調査に基づく推定(推定A)
年度 |
  |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
全輸送機関による輸送量合計
(億トンキロ) |
a |
5,459 |
5,438 |
5,563 |
5,348 |
5,436 |
5,580 |
5,723 |
5,679 |
5,506 |
5,590 |
500km以上雑貨貨物輸送量(億トンキロ)
(上記の2割:国土交通省調べ) |
b=a×0.2 |
1,092 |
1,088 |
1,113 |
1,070 |
1,087 |
1,116 |
1,145 |
1,136 |
1,101 |
1,118 |
モーダルシフト化率(%)
(国土交通省調べ) |
c |
36.5 |
39.4 |
39.4 |
39.2 |
39.8 |
39.8 |
43.4 |
41.6 |
42.9 |
(43.3) |
モーダルシフト輸送量(億トンキロ)
(上記2種の数値の積) |
d=b×c |
399 |
429 |
438 |
419 |
433 |
444 |
497 |
472 |
472 |
484 |
上記のうち海運による輸送量
(億トンキロ) |
e |
94 |
114 |
136 |
123 |
130 |
130 |
165 |
145 |
158 |
170 |
・最下欄の数値はその上欄の数値(モーダルシフト輸送量)からフェリーおよび鉄道輸送量(表1.1-4)を差し引いたもの
・モーダルシフト化率の( )の値は1991〜1998年の推移からの推定値
・内航船舶輸送統計年報に基づく推定(推定B)
年度 |
  |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
紙パルプおよび食料工業品の輸送量
(百万トンキロ) |
a |
6,384 |
7,847 |
6,816 |
4,472 |
5,949 |
5,790 |
5,158 |
5,484 |
6,235 |
6,905 |
上記2種の輸送量500km以上の割合
(トンキロベース) |
b |
94% |
93% |
94% |
95% |
96% |
94% |
93% |
92% |
92% |
92% |
雑貨貨物の総輸送量
(トンキロベース) |
c |
22,234 |
22,591 |
20,775 |
18,268 |
21,079 |
20,668 |
22,435 |
22,263 |
22,543 |
22,417 |
雑貨貨物のうち500km以上の輸送量
(億トンキロ) |
d=b×c |
209 |
209 |
196 |
174 |
201 |
193 |
209 |
206 |
206 |
207 |
・雑貨貨物とは、化学肥料、その他の化学工業品、紙パルプ、繊維工業品、食料工業品、日用品、その他の製造工業品の合計
・a及びbの値については、輸送統計より、輸送距離区分毎の輸送量(トンべース)に輸送距離区分の平均値を乗じてトンキロべースに換算した値から求めた計算値