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6. 洋上風力発電の提言
 我が国は、欧州と比べ浅瀬が少なく、台風も来襲することから環境条件が厳しい。また、権利関係や法規制も海外と異なるため、実証試験が必要である。洋上風力発電では、海底送電費用や大型作業船の回航費の建設コストに占める割合が高く、経済的な施設とするためには、出来るだけ大規模な施設とする必要がある。このため、民間企業で実証試験を行うことは難しく、国家プロジェクトとして実施すべきである。これは洋上風力発電に関する技術の向上、洋上風力発電の普及導入促進である。実証試験箇所は、防波堤内等の静水域ではなく、波浪を受ける外洋で行うことが望ましい。また、漁業・水産業と共存共栄できる方策を検討する必要性から、漁業権の消失していない箇所が望ましい。
 
提言(1)我が国は世界有数の海岸線の長さを有する海洋国家であり、洋上への風力発電の導入を促進する必要がある。我が国では、実績がないため実証試験を国家プロジェクトとして行い、技術的な検証や環境への影響調査を行う必要がある。
 
 欧州ではすでに洋上風車が建設されているが、すべて浅瀬に設置されており、最も深いものでも水深10m程度である。我が国では、欧州のような風況のよい浅瀬が少ない。欧州でもいずれは浅瀬の適地が少なくなり、今後、深い箇所に建設することが想定される。ただし、現在の技術では建設コストが高くなり経済的に厳しい。建設コスト低減に関する技術開発や工法開発が必要となる。また、洋上の特徴を生かし、風車の大型化や洋上の風況にあった風車の開発が必要となる。日本の海洋土木技術は、厳しい海洋条件で鍛えられており、技術的に世界のトップクラスである。また、風車技術においても国内で大型風車を開発した実績がある。産学官が共同し研究開発を行えば、世界に先駆けた厳しい波浪条件や大水深にも耐えられる洋上風力発電システムの開発が可能である。システムが開発されれば、巨大なマーケットの創出や、雇用拡大にもつながると考えられる。
 
提言(2)洋上風力発電に関しては、超大型風車の技術開発、サイト当たりの設備容量規模を30万kW〜50万kWの国家プロジェクトとして、支援を行う必要がある。
 
 洋上および沿岸部はその管理官署が多岐にわたっており、風力発電設置者にとって調整が必要な部署の把握が極めて煩雑である。また、港湾や防波堤等の建設整備計画が事前にわかれば、これらの工事と協調した風力発電建設を計画・提案することも可能である。洋上・沿岸部の所管マップ等を作成し、計画立案時点で必要な調整箇所が容易に検索できるようなデータベースを作成するとともに整備計画の開示方法や許認可基準の統一化をはかる必要がある。
 
提言(3)洋上・沿岸風力発電施設にあたっては、その管理官署や港湾等の整備計画が設置者に容易にわかるように許認可基準の統一あるいは所管マップ等の作成が必要である。








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