5. 洋上風力発電の特徴と課題
洋上風力発電の特徴は、1)海上は陸上より風が強い。沿岸から離れた海域においては,風速が高く、風の障害物がないため安定した風が吹くこと、2)大型風車の設置及び運搬が可能であることである。風車は大型化するほど経済的であるため、年々大型化している。しかし、大型風力発電システムは陸上での運搬及び設置は限定される。洋上および沿岸部では海上および港を利用できるためこのような問題が少ない。騒音、電波障害などの周辺環境に関する影響が少ないことである。
しかし、洋上風力発電は次のような現状での課題がある。1)海外では事例がみられるものの、国内に実証的な事例がない。そのため、設計・施工手法が確立されていない。2)洋上風力発電の基礎の建設費が高価となる、洋上風車の基礎は、一般の外力に加え、波力、浮力等も考慮して設計する必要があるため、基礎費用が陸上と比べ高くなる。3)海底送電ケーブルが高価であるため海底送電となった場合、送電費用が高くなる。4)漁業権との調整が必要である。海外では魚礁効果により漁獲高が増えたとの例もあるが、実施にあたっては漁業との調整が必要となる場合が多い。5)防食処置が必要で、洋上では、風力発電システムの防食を強化する必要がある。6)環境への配慮が陸上同様に必要で、景観,鳥類への影響、魚介類への影響,漁船レーダー等の環境影響を考慮する必要がある。7)航行船舶への配慮が必要なことで、発電施設周辺を航行する船舶の安全確保が必要である。8)洋上の風況の詳細なデータ整備が十分行われていない。9)洋上および沿岸部はその管理官署が多岐にわたっており、風力発電設置者にとって調整が必要な部署の把握が極めて煩雑である。
このような課題解決のために、1)実証試験設備を設置し、各種のデータを取ること、2)海底送電費用や大型作業船の回航費の建設コストに占める割合が高く、経済的な施設とするためには、出来るだけ大規模な施設とすること、3)建設コスト低減に関する技術開発や工法開発が必要である。4)洋上・沿岸部の所管マップ等を作成し、計画立案時点で必要な調整箇所が容易に検索できるようなデータベースを作成するとともに整備計画の開示方法や許認可基準の統一化をすること、5)追加的対策コストを抑制するとともに、連系可能容量を極力正確に算出するため、風力発電の出力変動平滑化効果を検討すること、6)平滑化効果や調整容量を踏まえ、追加的コストを発生させない風力発電の連系可能容量を算定すること、7)洋上の厳しい環境に適合するとともに、洋上風力発電の経済性を向上させるために超大型風車を開発することである。