3. 洋上風力発電導入の技術と課題
既設防波堤上に風車を設置する場合、それに伴う荷重増により堤自体の補強が必要となる可能性があり、対策費用が相当額となり事業採算性に与える影響が大きいことが考えられる。このため堤体補強対策については、設計事例の蓄積、模型実験等を通じた経済的設置手法等の技術的検討が今後必要である。また、新設防波堤上に設置する場合は、風車荷重を考慮した設計断面とすることで対応が可能であり、防波堤建設費の増加の負担は必要となるが、技術的に十分可能である。
港湾・沿岸域は、地盤が弱い場合があることはもとより、波浪等による外力も相当大きいことから、安全性と経済性を両立させる基礎構造の検討が必要である。また今後、新たな基礎構造の採用、メガフロート上への設置も含め、経済的な基礎構造の検討が必要である。さらに外海に比べ比較的波浪条件の良い内湾浅海域で、かつ風況条件の良い地域を対象として検討すれば、コスト面で有利になる可能性がある。我が国においては、従来の海上工事技術の応用により風車設置は十分可能と考えられるが、風車の海上設置事例がないため、風車規模に応じた施工方法、作業船能力、設置時の安全確保、施工日数等の未知数な点が多い。また、起重機船等の作業船の回航費が建設費用自体に影響を与える場合がある。今後、風車規模に応じて、安全かつ最も経済的な施工方法および作業船を検討していく必要がある。また我が国における大型起重機船などの特殊船は、設置場所が基地港から距離があり、風車規模が大きく、また同時設置基数が少ない場合、回航費用が建設費用に占める割合が無視できないため、複数基の設置を計画している場合には、同時設置基数を増やすなど計画段階から考慮する必要がある。
オフショアでの風力発電を具体的に検討する上で、実際の海上における風況データや波浪データをふまえ、評価する必要がある。現状の海上ないし水際線での風況データは、国土交通省港湾局、河川局、海上保安庁などで計測されているが、陸上で活用できるデータと比べると質・量ともにかなり制約がある。またNEDO作成の風況マップについても、港湾・湾岸域において、実測値よりも風況が小さくなることが指摘されている。このため、オフショアにおける風力発電の可能性や技術的検討を行うには十分でなく、今後具体的な風況データ把握・提供が必要である。その取り組みについては、産学官の協力が必要である。