欧州における洋上風力に関する調査研究は1980年代に開始され、具体的な事業はスウェーデン、デンマークおよびオランダで着手された。

　世界最初の洋上風力発電施設が1990年にスウェーデンに設置されたのを皮切りに、2000年末の時点で10施設の洋上風力発電施設が建設あるいは建設中となっており、風車の総数は93基、総発電容量は9.57万kWに達している。これらの洋上風力発電施設は、いずれも実証試験用として位置付けられているもので、その設置場所も沿岸近傍(1 〜6km沖合)や湖沼(オランダのアイセル湖)となっている。デンマークは、典型的なバルト海群島の内湾に建設されたVindebyとTunoe Knobおよびコペンハーゲン近傍の海域(礁)のMiddelgrunden(Oresund )の併せて3つの洋上風力発電施設がある。イギリスは、2000年末に同国北東部の北海に面する都市ニューカッスル近傍のBlyth Harbor沖にBlyth洋上風力発電施設が建設された。スウェーデンは、世界で初めて洋上風力発電( Nogersund)に取り組んだ国で、現在では同じバルト海のBockstigen、UtgrundenおよびYttre Stengrundの併せて4つの洋上風力発電施設がある。オランダは、アイセル(IJsselmeer )湖内にLelyおよびDrontenlの2つの洋上風力発電施設がある。

　デンマーク政府の風力発電導入目標は、2005年までに150万kWであったが、1999年末の時点ですでに176万kWに達している。さらに2030年までに550万kWの風力開発の目標を示したが、このうち400万kWはオフショアに建設することになっている。イギリスでは貿易産業省を中心に、2010年までに電力消費量の10％を再生可能エネルギーによる電力とし、このために洋上風力発電導入量を100万kW以上が必要となる。また、非化石燃料使用電力購入義務計画のもとで、2つの洋上風力発電計画が承認されている。オランダは、2020年までに再生可能エネルギーを10％導入するという強力な政策を発表し、風力は、2000年までに100万kW、2020年までに300万kWを設置する予定で、150万kWを洋上に建設することになっている。ドイツは、民間において総設置基数1,200基程度の計画がある。フィンランドの風力発電導入目標は、2005年までに15万kW、2010年までに50万kWである。アイルランドの民間における2005年までの再生可能エネルギー導入目標は、20万kWであり、その大半は風力発電となる見通しである。フランスの民間における2005年までの海上風力発電導入目標は、50万kWである。ノルウェーの2010年までの風力発電導入目標は、30億kWh/年、総設備容量では、110万kWである。ベルギーは、環境省を中心に総設置容量10万kWの計画がある。スペインは、大多数の自治体が10年間に1,000万kWを超える風車の建設を目標とする、地域ごとの風力発電導入を計画している。またタラゴナ南方のエプロ河口の水深15mより浅い海域に総設置基数21基の計画がある。

　欧州諸国では1MW以上の大型風車も多数実証運転されている。風力発電の経済性に関しては、kW当たり平均＄1,000、プラントのコストはkW当たり平均＄1,350で、発電単価はkW当たり4ないし11セントであった。しかし、1997年にはこれらがいずれも10〜20％低下しており、今後さらに低下が見込まれる。アメリカのNRELによれば次世代風車による発電コスト目標は2.5セントないし5セントとしている。表1に世界の洋上風力発電設備、図1に洋上風力発電総設備容量の推移を示した。図2〜図5にオフショア風力発電システムを示した。