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4. 実用化への課題
 波浪エネルギー利用はまだ開発の極めて初期の段階の技術と位置付けられている。しかし、特定の場所や市場で波浪エネルギー利用は、航路標識ブイ、淡水化プラント向けの電力供給、さらにディーゼル発電機から高価な電力を購入している海岸・離島過疎地向けの電力供給などで商業的に競争力を持っている。先ずはこのような特定の場所における活用が目標であるが、さらなる検討及び技術開発が不可欠である。
4.1 設置場所の選定6)
 波浪発電装置の発電出力は設置予定海域の出現頻度の高い波に左右される。また、装置の構造強度や係留装置の強度は、設置予定海域の再現期間を含めた最大波高や最大風速などの環境条件が問題となりコストに大きく影響する。このため、装置の設計においては必要な電力供給量・装置の規模を含め設置予定海域の選定が重要である。
4.2 発電以外の機能の付加
 マイティーホエールに代表される浮体式装置は、波浪エネルギーを吸収するため装置後背海域を静穏化する浮消波堤の機能を有する。しかも浮体式であるため海水交換性が良く、この特性を利用して水産事業等へ活用できる静穏海域を拡大することが可能となる。また、発電電力により圧縮空気を製造することにより海域環境改善や海洋深層水の汲み上げを行うことが可能である。このような付加価値機能が装置の必要性やコスト低減を促す。
4.3 稼動効率の向上及び発電出力の平滑化
 波浪発電の場合、静穏な海象条件では出力低下或いは発電不可能な状態となる。このため、太陽光発電や風力発電等との複合発電システムを構築することにより、システムとして稼動効率の向上及び発電出力の平滑化が期待できる。加えて、基本施設の共用によりコスト低減が期待できる。なお、系統接続を行わず独立電源として用いる場合には、効率的な大容量蓄電設備の開発が必要となる。
4.4 要素技術としての応用
 超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)は、近い将来、 海上空港、ハブ港湾など様々な用途への適用が期待されている。しかし、これらの構造物を沖合へ展開する場合には、波による浮体端部の揺れや係留力の増大を何らかの方法で防止する必要がある。この防止技術の一つとして、メガフロートの周囲に空気室を配置し波浪エネルギーを吸収することにより、浮体の揺れや係留力を低減する技術として検討されている。
4.5 環境への影響
 海岸および沿岸海域は通常、海洋の最も多様で生産力を持つ箇所である。波浪がもたらす影響は物理的環境の保全に重要な役割を果たすとともに、これに伴う生態系の確立にも重要な役割を担っている。一方、例えば海岸および沖合施設の建設中の環境の物理的変化は海洋生物の多様性に悪影響を与える可能性がある。
 全てのエネルギー源と同様に、波浪エネルギー変換はさまざまな環境への影響が考えられる。一般にこの影響は十分な事前検討を行い対応することにより最低限に抑える、または完全に回避することが可能である。








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