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3. 有力3テーマ(洋上風力発電、OTEC、波力)の位置付け
 本章では、海洋エネルギー利用をわが国海洋ビジョンの重要な分野の一つとして取り上げたわけだが、これらの中からもっとも有力と考えられ、また、研究実績も多い3テーマを個別に選んで専門家に詳述していただいた。
 第一は洋上風力発電である。欧州、とりわけデンマーク、オランダ、イギリスなどが先進国であるが、わが国でも近年脚光を浴びて取り組まれ、北海道瀬棚町で日本初の洋上風力発電プロジェクトが実現する運びである。これは瀬棚港の港湾区域内の浅海域に基礎部を設置するもので本格的洋上風力発電への先駆けとなるものである。理論上は、関教授の論考にあるとおり、洋上風力エネルギー利用は極めて大きな潜在的可能性を有している。ただ、同論考では、試算の前提がやや大胆に設定され可能性を訴えることに力点をおいたシナリオとなっているといえよう。
 それにもかかわらず、洋上風力発電は、最有力のテーマと位置付けて差し支えなかろう。海洋それ自体が有するエネルギー利用というよりも「風力エネルギー利用の海洋立地」と言い換えた方が正確であるが、わが国の自然エネルギー利用ひいては海洋・沿岸域の開発・利用に大きな展望を切り開くものといえよう。
 次いで、温度差発電(OTEC)および波浪(波力)発電が注目されるが、この二つはそれぞれ国際的にもかなり古くから取り組まれてきているテーマである。OTECの方は、アメリカのハワイで研究が進んできたが、副産物ともいうべき深層水利用(DOWA:Deep Ocean Water Application)の方へ重点移動がなされ、特に日本における深層水利用の急速な発展から、発電の方は二義的位置付けとなってきている。しかしながら、池上助教授の論考でも取り上げているように、本来のOTECが再び日本の研究開発努力で前進が図られようとしていることを認識することができよう。
 波浪発電はイギリス、ノルウェーとならんで日本は研究開発先進国であり、各種のシステム開発が取り組まれている。主要なものは防波堤の堤体を空気室に利用する堤体利用型と、浮体構造物に内部を空気室にして利用する浮体利用型に大別される。いずれも本格的な実験プロジェクトが展開されてきた。鷲尾氏の論考で、世界最先端の研究開発努力が紹介されている。
 しかしながら、OTECも波浪発電もともに海洋エネルギー利用の中では常に有力候補に位置付けられているものの、これから実用化へと発展すべきレベルにとどまっているのが実情であろう。 








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