2. 海洋エネルギーの種類と特徴
海洋エネルギー利用分野には、概括すれば以下のような種類がある。
表1 海洋エネルギー等の種類と形態(太字は内外で実績のあるもの)
種 類 |
エネルギーの形態 |
立地適性/課題/実績等 |
潮 汐 |
海面の上下動に伴う位置エネルギー |
干満差大の地点/世界に3例 |
海流・潮流 |
海水の流動による運動エネルギー |
流れの強い地点/技術課題大 |
波 浪
(波 力) |
波浪の位置・運動の両エネルギー
(防波堤体利用/浮体構造物利用) |
波高の平均値が高い地点/研究実績内外とも多し |
海洋温度差
(OTEC) |
海水温の鉛直方向の温度差、すなわち熱エネルギー利用 |
表層と中深層の水温差の大きい地点/内外で研究実績あり |
海水揚水発電 |
揚水して落下させる、位置エネルギーを利用 |
沿岸ダム池建設可能地点/沖縄で実証実験あり。 |
塩分濃度差 |
淡水との塩分の浸透圧差 |
基礎研究段階 |
風 力
(沿岸陸・海域) |
風力エネルギー利用の海洋立地 |
国内沿岸域での展開がきわめて有望。欧州で商用実績大。 |
太陽光(同上) |
太陽光エネルギー利用の海洋立地 |
面積確保、防錆、メンテナンスが課題 |
海洋バイオマス |
海藻からのメタンガス回収利用 |
ガスを陸上輸送して発電 |
(出典:近藤叔郎編著「海洋エネルギー利用技術」(1996)をベースに修正を施して作成。)
そして海洋エネルギー利用の特徴として理解しておく必要があるのは、入力エネルギーの変動特性である。もっとも変動が激しいのは波浪であり、風よりは少ないが数時間単位で変動する。潮汐は6時間でゼロからピークに達するほぼ一定の周期がある。海流・潮流は一定の流向・流速が想定されるが、海峡や瀬戸と呼ばれる狭い水道域の場合での利用を想定すると双方向となる。温度差はOTEC(Ocean Thermal Energy Conversion)として国際的には表現されているが、一般的には表層水と中層・深層水の温度差が20℃であることを目安にアンモニア等の媒体を用いて発電するので、表層水温が高い熱帯海域が第一義的には立地適性となるが、海底パイプラインによる発電施設の沿岸陸域立地の場合と、浮体構造物から取水管を垂直に垂下する洋上立地の場合とがある。
いずれの種類ともアウトプットとして得られるエネルギーは電力であるために、いくつかの問題が横たわっている。第一に、安定的供給の要請に対してムラが生じがちであるという固有の特徴をどのように克服するかである。この点は電力の貯蔵システムとの複合化が課題解決の方向である。第二に、得られるのが電力であるがゆえに需要地までの距離が問題となる。電力への変換現場でそのままその電力を消費する、すなわち電力需要がその場に存在することは考えにくいため、需要地域まで送電する必要がある。すなわち、需要地域はあくまで陸上であり、かつ、直近の海岸線地域での電力消費でない限り、系統連系等の送電網との接続が要請される。したがって、どの種類であれ、はるか沖合での電力変換利用は考えにくいので、沖合立地は必ずしも現実的ではなく、沿岸(陸域・海域)域立地がビジョンとしても合理的であろう。