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1. 老朽船と海難
 1990年頃海難が多発し、船体や積荷だけでなく多くの人命が失われ、海洋汚染を引き起こした。さらに、ロイド保険会社は、船舶保険の再保険を引き受けていたため、一時は倒産の危機が報じられた。海難が社会問題になった。関係各方面により調査が行われた結果、遭難船の多くが老朽化していた上に、保守状態が非常に悪く、基準に達しないサブ・スタンダード船であることが判明した。種々の対策が打ち出された。国連(UN; United Nations)の国際海事機関(IMO; International Maritime Organization)は各国の入港船に対する検査(PSC; Port State Control)を強化し、サブ・スタンダード船に対する監視を厳重に行うよう指示した。各船級協会は検査強化(enhanced survey)により、サブ・スタンダード船を駆逐することにした。そこで、サブ・スタンダード船に船級を与える船級協会があることも問題になった。また、サブ・スタンダード船の横行については、安いチャーター料金に引かれてサブ・スタンダード船を使う荷主の責任を問う声もあった。
 チャーター料金はその時の船腹量や荷動きや世界情勢などによって大きく変わるものであり、料金の安さは魅力的であるが、サブ・スタンダード船の横行は海運界に大きなひずみを与えることは明らかである。老朽船がすべてサブ・スタンダード船ではないが、老朽化がサブ・スタンダード船になる大きな要因であり、老朽船が適宜フェーズアウトできるようにすることは重要である。船のフェーズアウトは解撤である。
 解撤するには船を解撤業者に売るが、老朽船とはいえ、大きなものでは億円単位の高額な取引であり、しかも解撤売船の船価の相場はこれまた大きく変動する。解撤売船は船主にとって大きな決断である。








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