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3. 温室効果ガスについて
 温室効果ガスとして排出削減の対象となっているのは、表2に示す6種類である。このうち船舶または船舶運航に関連して排出されるものは、CO2、メタン、一酸化二窒素、代替フロンである。他の2物質は、排出されないか無視できる量である。この船舶排ガス中の温室効果ガスのCO2が約96%を占め、残りがメタン、一酸化二窒素、代替フロンとなっている。それらの排出割合を表3に示す。とともに、CO2の削減方策について以下に概説する。
 船舶は、他の輸送機関に比べ単位輸送量(トン・マイル)当たりの燃料消費量が少ない優れた大量輸送機関である。このような特徴を有した船舶からCO2の排出を削減することは大きな困難を伴う。技術的環境が現状のままで経済成長が安定的に発展すると仮定すれば、将来にわたり輸送量も多くなり、それに連動して燃料消費量も多くなり、その結果CO2の排出量が増えることとなる。このような中で船舶から排出されるCO2を削減するためには、化石燃料などの炭素を含んだ燃料の消費量を減らす必要がある。つまり船舶に燃料消費量の少ないディーゼルエンジン等を搭載することや、燃料消費が少なくなるような経済速度運航の実施などが考えられるが、これらには限界もある。また、船舶単独での削減以外にモーダルシフトを推進させることにより運輸部門全体でCO2の排出を少なくすることができる。
表2 排出削減対象温室効果ガスに関する主な発生源
種類\区分 船舶運航からの主な発生源 陸上での主な発生源
二酸化炭素(Co2) 燃料の燃焼 燃料の燃焼
メタン(CH4) 燃料の未燃焼分、原油などの輸送時に蒸発漏洩 農業、ゴミ廃棄物の腐敗により自然発生
一酸化二窒素(N2O) 燃料の未燃焼分(窒素酸化物のごく一部分として排出される) アジピン酸(ナイロン66の原料)の生成の副産物など化学工程
代替フロン類(HFCs:ハイドロフルオロカーボン) 冷凍船及び冷凍コンテナの冷媒の自然漏洩 冷蔵設備よりの自然漏洩、工業過程での使用時に漏洩
代替ハロン類(PFCs:パラフルオロカーボン) (消火剤として用いられているが廃棄時以外の漏洩量は少量) 消火剤
六ふっ化イオウ(SF6) (ほとんど使用されていない) 高電圧回路などの絶縁ガス、半導体製造プロセスなど
平成12年度船舶からの温室効果ガス(CO2等)の排出削減に関する調査研究報告書をもとに作成
表3 外航船舶の運航に伴う温室効果ガスの推定年間排出量(1997年)
温室効果ガスの種類\区分 排出量
(103t/年)
温暖化
係数
CO2換算値
(106t-CO2/年)
排出割合
(%)
二酸化炭素 (CO2) 373,100 1 373.1 96〜97
メタン (CH4) 175.2 21 3.7 1
一酸化二窒素 (N2O) 10.0 310 3.1 0.8
代替フロン類 (HFCs) 3.1〜5.1 1,700 5.2〜8.7 1.2〜2.2
合  計 385.1〜388.6 100
平成12年度船舶からの温室効果ガス(CO2等)の排出削減に関する調査研究報告書より
 
 外航船舶からのCO2排出に関しては、2002年3月にMEPC47(Marine Environment Protection Committee, 47thSession/第47回海洋環境保護委員会)において、ワーキンググループを設置し、削減に向けて議論されたが、各国が合意に達するには時間が必要である。国内の船舶に関しては、京都議定書で定められた我が国の温室効果ガスの削減目標である6%に算定されるので、船舶単体への省エネ技術の導入、スーパーエコシップ(環境低負荷次世代内航船)、 モーダルシフト等によりCO2排出削減対策を行うとともに、事業者がこれらの対策を行い易くするための税の軽減措置などを並行して導入することが望まれる。
 さらに将来的には、重油に比べ炭素含有量の少ない天然ガス、DME、水素などへの燃料転換などを検討する必要があると考えられ、その実現のために技術開発が必要であり、環境税の導入についても積極的な検討が求められる。








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