日本財団 図書館


5. IMOの動き
 IMO(MEPC)においては、継続的に、バラスト水管理に関する国際条約を審議してきており、2003年のIMO採択が目指されている。
 1993年11月の第18回IMO総会においては、「船舶のバラスト水・沈殿物排出による好ましくない生物・病原体侵入防止のためのガイドライン」に関する決議A.774(18)が採択された。このガイドラインは、全船舶を対象として、船舶の安全性を考慮した外洋2,000m以上水深におけるバラスト水交換(フロースルーも可)等を推奨し、代替となるバラスト水処理法の研究・開発の必要性を述べている。
 1997年11月の第20回IMO総会においては、決議A.774(18)を廃止し、バラスト水排出に伴う危険性最小化を促進する手段として、決議A.868(20) 「有害水生動物・病原体の移動を最小化する船舶バラスト水制御・管理のためのガイドライン」が採択されている。このガイドラインは、船舶の安全性考慮したできる限り陸岸から離れた開放的外洋におけるバラスト水交換(タンク容量の3倍水量フロースルーも可)等また代替処理法の採用又は併用を推奨している。
  新条約については、このように、当初はバラスト水交換による管理を新条約の柱として論議されてきたが、現在では、各国がバラスト水処理技術の開発に力を注いでいることもあり、バラスト水交換については、バラスト水管理選択肢の一つとして位置づけられている。また、生態系への影響が排出バラスト水量に比例しないため、原則的にすべての船舶を対象に適用される。船舶は、バラスト水水管理計画及びバラスト水管理記録簿を維持し、かつ、港内バラスト水漲水量の最少化、赤潮発生海域、浚渫作業付近等におけるバラスト水漲水の極力回避などの予防的措置を実施の上、条約が定めるバラスト水処理基準以上のバラスト水管理の実施が求められることになる。
 また、当該基準よりも厳しい管理を求める一定の水域設置についても検討されている。
 水生生物の多様性及びその個体数の多さからして、生物学的には、バラスト水内水生生物を100%の処理をしないと意味がないというのが国際的共通認識となっている。バラスト水の受入施設への排出も考えられているが、世界各地に膨大バラスト水量の受入施設を利用可能とすることが現実的とは考えられない。船舶自身によるバラスト水処理とならざるを得ない。
 それゆえ、まずは現在利用可能な技術をベースに水生生物処理基準を策定することで少しでも水生生物移動量を減少させ、段階的に100%処理に近づけるという方向にある。とりあえずは、処理後のバクテリア・ウィルスの増殖問題を無視して、処理装置の国際試験プロトコールを策定し、当該装置出口における効果をもって船上搭載を容認する方向にある。国際的に共通した、かつ、入手の容易な試験対象となる代表生物種の選択も必須となる。また、寄港国による検査についても、生物学的検査の複雑性、船舶の遅延回避等のため、処理システムの適切な運用に限定する方向にある。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION