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3. 外来水生生物種侵入事例
 現在毎日約4,500種の動植物がバラスト水により輸送されているものと推定されている。GESAMPの報告によれば、1979〜1993年の間に世界中で動/植物プランクトン、幼生等68種の非土着種侵入事例が発見されているが、現在では、豪州だけでも250種以上の非土着種侵入が確認されていることもあり、潜在的事例ははるかに多いものと考えられている。各国等による調査の進捗により、より多くの事例が明らかになっていくであろう。我が国においても、東京湾の水生生物個体数の半分以上は外来種という調査報告がある。
 生物種は、塩分濃度、温度等の面で漲/排水両域の環境が似通っている場合により地歩を築きやすいことから、排出後の種の生存率は受入水域の条件に依存する。諸研究によれば、放出された種のうち実際に新地域内に定着するものは通常3%未満とされているが、一方で、肉食魚ただ一尾の放出が、放出地方の生態系に甚大な被害を与えることもあり得るともいわれている。代表的侵入例を以下に列記する。
*五大湖地方に侵入・繁殖したヨーロッパ産Zebra Mussel(カワホトトギスガイ)の制御に、2000年までに5億米ドル(USCG)必要といわれていた。
*アメリカ大陸東岸を源とした生物、アメリカンクシクラゲ類Mnemniopsis Leidyiが、1970年代に、バラスト水を通じて、黒海に侵入したものと信じられている。クシクラゲ類(クラゲに類似した生物)は、貪欲に動物プランクトン及び魚の卵・幼生を捕食する動物であり、黒海におけるアンチョビー漁業崩壊の主因となっている。
*有毒渦鞭毛藻類Gymnodinium catenatumが、バラスト水経由で豪州水域に定着した。有毒渦鞭毛藻類は、人間へのまひ性貝毒の原因となることで知られている藻類の1タイプであり、アルゼンチン、日本、メキシコ、ポルトガル、スペイン及びベネズエラ水域並びに地中海諸海港 において出現している。
Alexandrium tamarenseという種類の有毒渦鞭毛藻類も広く分布しており、メルボルン沖水域で定着している。








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