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2. バラスト水内の生物状況
 日本内湾の海水1リットル中の微生物個体数は、時期、場所等で様々であり一概にいえるものではないが、一例を挙げると、植物プランクトン10万(30〜50種)、動物プランクトン100(10〜20種)という数値があり、バクテリアについては1億、ウィルスについては、バクテリアの10倍、100倍といった個体数が存在するものと考えられている。コップ1杯のバラスト水も海洋汚染物質であり、生態系に影響するというバラスト水問題先進国の言い分も否定し難い面がある。
 バラスト水は港内又はその付近でバラストタンクに漲水されるが、これにはあらゆる生活期にある水生生物が含まれている。バラスト水とともに排出される水生生物は、土着種の天敵がおらず、かつ、新たな水域が生存に適する場合には定着する可能性がある。
 実験結果によれば、植物プランクトンについては、1週間の暗闇貯蔵で、光合成ができないため約96%が死滅し、食物連鎖により動物プランクトンについても約82%が死滅する。100日間以上の暗闇貯蔵でほとんどの生物が死滅するといわれている。逆に、プランクトンの死骸を餌とするバクテリア・ウィルスは死骸の増加とともに増殖することになる。
 しかしながら、単細胞植物プランクトンの麻痺性貝毒プランクトン等は、有性生殖してできた細胞が、水中のプランクトン生活をやめてシストとなり、底に沈降して休眠してしまう。この休眠期間は、種によって異なるが、多くの種は最短で数ヶ月、長い場合は数十年といわれている。シストは、水温や光量の変化を刺激とし発芽し、またもとのプランクトンに戻り増殖を始めるようになる豪州及び日本における調査においても、バラストタンクに渦鞭毛藻のシストが溜まっていることが確認されている。このシストが、港の海底に堆積していたものがバラスト水漲水時にタンク内に侵入したものか、それとも、漲水時に侵入したプランクトンがタンク内でシストに変わったものかどうかを識別する方法は、今のところない。








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