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[注]
(1) 本論は、主に海上交通について扱い、資源を巡る問題については触れない。
(2) J. A. Roach and R.W. Smith, Excessive Maritime Claims, 1994, pp.27, 30-31.
(3) 海上保安庁水路部、「日本の直線基線」、1996年。吉井淳、「直線基線の相対性と客観性」、「摂南法学」第13号、1995年、1頁。
(4) 中村洸、「核搭載軍艦の領海通過について−領海条約の解釈とソビエト事故原潜に対する適用−」、「法学教室」第13号、1981年、98頁。山本草二、「海洋法」、1992年、140-141頁。
(5) 恵谷修、「我が国の領海警備法制における「領海の秩序」について」、近刊(on file with author)。
(6) 例えば、マラッカ海峡での通航料ないし賦課金の問題をどうとらえるかといった問題がある。栗林忠男、「海洋法の発展と日本」、国際法学会編、「海」、2001年、16頁。
(7) 例えば、中国海洋調査船の実施する調査が資源調査ではなく軍事目的調査である場合には、我が国が法的側面から抗議するには困難がある。
(8) 関連条約としては、1988年の「海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」がある。
(9) 武力紛争概念は、我が国で最近議論されている有事の概念とは必ずしも一致しないように思われる。なお、有事概念は依然曖昧模糊としており、かかる状態での議論は法的には好ましくないといえよう。
(10) 我が国は、2000年に「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」を制定した。
(11) 1999年の「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」規定の行為を参照せよ。
(12) ここで、我が国海上交通に対する脅威の評価を試みれば、以下のようになろう。20世紀末に冷戦が終了し、東西対立に起因する大規模武力紛争発生の危険性は大幅に低減した。ロシア海軍は、弾道ミサイル潜水艦を含めなお相当な勢力を維持しているが、その外洋での活動は、従前に比すれば不活発である。
 他方、地域的紛争は、依然各地で頻発している。我が国の海上交通路周辺の地域に限ってみても、台湾海峡、南シナ海、インド洋、ペルシャ湾の沿岸及び中東地域は、顕在的又は潜在的な紛争地域である。こうした地域で国家間武力紛争が生起した場合、我が国海上交通に脅威を与える可能性がある。これら海域の沿岸諸国は、外洋で行動する能力に欠け、従って、イラン・イラク戦争や印パ戦争のように沿岸海域において海上交通の妨害を行うにとどまった。しかし、紛争当事国の領水内や近傍に重要な海峡又は群島航路帯が存在する場合には、紛争当事国たる沿岸国の行動は、大規模な外洋海軍の行動に匹敵する影響を与える。
 こうした状況に今後しばらく基本的な変化はないものと考えられるが、一部諸国は海軍力増強を行っており、注意を要する。例えば、中国海軍は、近代的な大型水上戦闘艦を装備しつつある。また、原子力推進型及び通常動力型の潜水艦の近代化にも着手しており、これまでとは質的に異なる外洋海軍に成長するかもしれない。インド海軍は、これまでも航空母艦や多様な水上戦闘艦を行動させ、攻撃型原子力潜水艦を試験的に運用した経験もある。東南アジア諸国も高速艇や潜水艦の整備を継続し、稼働率において問題を抱えているとはいいながら軽航空母艦を装備する国もでた。こうした諸国の海軍力増強が直ちに海上交通路への脅威を構成する訳ではなく、もちろんその意思次第ではあるが、それらの能力を注視しておかなければならない。
 国家間武力紛争ではない内戦によっても、海上交通が脅かされることがある。これまでも、反徒制圧行動中のフィリピン軍によって我が国船舶が誤射されたこともある。フィリピンやインドネシアといった諸国で内戦が発生すれば、それらの群島水域等を通航中の船舶への影響は無視できない。
(13) この場合、我が国が第一追加議定書の締約国となっているならば、同議定書第43条3項に従い、他の紛争当事国に海上保安庁の編入を通告する必要が生じるであろう。
(14) 竹本正幸、「国際人道法の再確認と発展」、1996年、152-153頁。真山全、「海戦法規における目標区別原則の新展開」、「国際法外交雑誌」第96巻1号、1997年、31-36頁。
(15) Department of the Navy, Annotated Supplement to the Commander's Handbook on the Law of Naval Operations, NWP9A, 1989, para.8.1.1(replaced by NWIP1-14M, 1997); L. Doswald-Beck, San Remo Manual on International Law Applicable to Armed Conflict at Sea, 1995, pp.15, 114-117.
(16) 我が国は、我が国に「武力攻撃を加えている国の軍隊の武器を第三国の船が輸送をしている」場合、「一般論」としては、当該船舶に対して「臨検等の必要な措置」をとることは、「自衛権の行使として認められる限度内のものであれば」憲法上可能であるとの立場をとっている(衆議院安保特別委員会角田法制局長官答弁、1981年4月20日)。なお、こうした措置をとる場合、捕獲審検所として機能する司法的機関の設置が必要となるかもしれない。
(17) 例えば、ジュネーヴ第二条約第15条、第17条、第一追加議定書第31条。
(18) 紛争非当事国船舶誤射事件としては、フォークランド戦争でのリベリア商船ハーキュリース事件がよく知られている。See Amerada Hess Shipping Corporation and United Carriers, INC. v. Argentine Republic, U.S. Court of Appeals for the Second Circuit Decision, 830 F.2d 421, 1987.
(19) 1990年に始まった湾岸戦争における法務担当士官の活躍は、なお記憶に新しい。
(20) 赤十字国際委員会は、警察機関向けのモデル教範に武力紛争法の説明を含めている。International Committee of the Red Cross, To Serve and Protect, Human Rights and Humanitarian Law for Police and Security Forces, 1998.
(21) よく知られている列国海軍の最近の国際法教範には、例えば、米国(NWIP1-14M, op. cit.)、独(Bundesministerium der Verteidigung, Humanitares Volkerrecht in bewaffneten Konflikten, DSK AV 207320065, 1992)、加(Office of the Judge Advocate General, The Law of Armed Conflict at the Operational and Tactical Level, B-GG-005-027/AF-021, 2001)のそれがある。








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