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1. ビジョン論議に関する最近の動向
 そうした情勢の中にあって、ビジョンを模索する上でここ数年のうちで最初に提言を投げかけたのは、平成12年6月の経団連による意見書「21世紀の海洋のグランドデザイン」である。これは、国土総合開発計画の第5次計画、いわゆる五全総が「21世紀の国土のグランドデザイン」として策定されたのになぞらえて、海洋についても同様の国家的政策が必要不可欠であり海洋関連産業の活性化のための国家プロジェクトが求められている、との認識にもとづいたものである。内容的には、日本の200海里水域の各海域ごとに拠点構造物を順次配備して水産資源の持続的開発を筆頭に、各種資源エネルギーを有効利用しよう、そして未解明の海域に関する科学研究も同時に推進しようというものである。
 ところで、この意見書の前段階には、主要16分野の「国家産業技術戦略」という政府の大きな取り組みが存在した。しかし、海洋関係については、食料分野、エネルギー分野、造船分野等の戦略にまたがって報告され、結局、焦点が定まらず真の戦略策定とは言い難い状況であったのに対して、産業界の側から統一的な国家政策を要請して、その試案を提示したものであった。
 にもかかわらず、省庁再編時期と重なったこと、また、元来海洋関係省庁が複数にまたがることから、政府としてこれを一体的に受け止めることができないままに終わった。
 そうしたなかで、以前は総理大臣に答申を直接提出していた旧海洋開発審議会が平成13年(2001年)に文部科学・学術審議会海洋開発分科会(平啓介会長、委員24名)に再編されて初めて、平成13年4月に文部科学大臣の諮問「長期的展望に立つ海洋開発の基本構想と推進方策について」が出され、これを受けて審議を開始している。海洋研究・基盤整備、海洋保全、海洋利用の三委員会(ほとんどを分科会委員で構成)を下部機関として設置して本格論議を行ってきている。本報告書がまとまるのとほぼ同時期の平成14年春に、その文部科学・学術審議会海洋開発分科会の答申案が出される予定である。その答申案は、パブリックコメントに付されて6月を目処に最終答申として確定する運びとなっている。この答申案が果たして向こう10年のビジョンをどれだけ描いて提示されるか、大いに注目されるところである。
 なお、去る平成14年3月15日、日本財団の海洋管理研究会が「21世紀におけるわが国の海洋政策に関する提言」を発表した。ほぼ1年にわたる同研究会の討議と、提言のドラフトを示した上で意見を求めるアンケートを実施して、その成果も取り込んでの提言である。21世紀の海洋ビジョンを検討する上では見逃すことのできない内容となっている。








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