4.9.3 気泡注入実験
平成11年度に実施したミキサーパイプの実験では、気泡注入により水生生物殺滅効果が向上した。本実験では、スリット状の隙間による噴流ノズルにおいても、気泡注入による効果向上が存在するかを確認した。
(1) 実験方法
実験は、図II.4.9.3-1のように試験片の全部にコンプレッサーで気泡を注入して行った。気泡注入量は、ミキサーパイプで最も効果が向上した対海水流量比16%(4.5L/min.)である。
実験ケースは、衝突板無しの気泡注入と気泡注入無し、衝突板を試験片の後方2.5mmに設置した場合の気泡注入と気泡注入無しである。
なお、実験時のスリット部流速は、23.8〜25.8m/secの範囲とし、他の実験施設および方法は、流速変化実験等と同じである。
図II.4.9.3-1 気泡注入実験の模式
(2)実験結果
図II.4.9.3-2には、気泡注入実験におけるスリット部流速と圧損の関係を示した。
気泡を注入すると、わずかであるが圧損が増える傾向がある。したがって、気泡注入は、スリット状の隙間による噴流ノズル装置の場合には、著しく効果が向上しない場合以外に技術要素として採用するメリットはない。
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図II.4.9.3-2 気泡注入実験におけるスリット部流速と圧損の関係
図II.4.9.3-3には、気泡注入実験における浮遊性甲殻類の損傷率を示した。
剪断力だけが機能する衝突板無しの場合、剪断力とキャビテーションの崩壊が機能する衝突板有りの場合の両者共に、気泡を注入すると浮遊性甲殻類の損傷率が低下した。したがって、スリット状の隙間による噴流ノズル方式による機械的殺滅法では、気泡注入は、効果および実用性を向上させず、むしろ低下させると評価される。
ミキサーパイプでは気泡注入により効果が向上し、本実験では反対に低下した理由としてはエアーの混入位置が違うことが考えられる。ミキサーパイプではノズル後端に気泡を注入したため、気泡による剪断効果の低下が避けられたためであろう。また、ミキサーパイプでは、注入した気泡がパイプ内の中心部を通ることで(図II.4.9.3-4)、ノズル部下流での噴流速度の減衰が抑えられ、パイプ内の突起付近での剪断やキャビテーションの崩壊による効果が作用した可能性が考えられる。
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図II.4.9.3-3 気泡注入実験における浮遊性甲殻類の損傷率
図II.4.9.3-4 ミキサーパイプでの注入気泡の動向(推定模式図)