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4.9.2 衝突板実験
 平成11年度に実施したミキサーパイプ法では、ノズル部下流の配管内に突起を設置した場合に、効果が向上することを確認している。本実験では、同様の効果の有無および程度をノズル部の下流に衝突板を設置することで検討した。本実験の結果、衝突板の設置により、効果が向上し、かつ圧損が大幅に増加しない場合には、効果および実用性向上技術になると考えを実施した。
 
(1)実験方法
 実験は、単スリットの試験片の下流部に写真II.4.9.2-1のようにアルミ製の衝突板を取り付けて行った。
 本実験に先立ち、その取り付け位置を図II.4.9.2-1のように試験片から2.5mm、5mm、10mm、15mmに設置し、衝突板に発生するエロージョンの観察を行った。エロージョンは、試験片からの距離が短いほど激しく(写真II.4.9.2-2)、水生生物に対する効果も大きいと推測した。したがって、実験は、対象データとして取り付けない場合、最も近距離の2.5mm、最も遠い15mm、それにキャビテーション崩壊の効果を明確にするために、距離2.5mmで加圧することでキャビテーションの発生を抑えた実験も行った。実験流速は、スリット部流速で約25m/sec(25.3〜25.8m/sec)である。
 なお、他の実験装置および実験方法は、流速変化実験等と同じである。
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写真II.4.9.2-1 試験片に取り付けた衝突板
 
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図II.4.9.2-1 衝突板の取り付け概略
 
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使用前
 
激しいエロージョン
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距離:2.5mmでの発生状況
 
エロージョンは殆ど発生していない
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距離:15mmでの発生状況
写真II.4.9.2-2 衝突板の距離とエロージョン発生状況
 
(2)実験結果
 図II.4.9.2-2には、衝突板実験におけるスリット部流速と圧損の関係を示した。
 衝突板無しの場合に比べて、衝突板を設置しても特に圧損が大きくならないこと、また、試験片と衝突板の距離に係わらず圧損が大きく変わらないことは、衝突板の存在で効果が向上する場合には、衝突板によるキャビテーションの崩壊が実用性の面で有効な要素になることを示している。
 なお、加圧してキャビテーションの発生を抑えると若干圧損が低下している。この結果は、もし、機械的殺滅法を剪断力単独の方法で構成する場合には、弁の開度調整ではなく、圧損が増えない方法でキャビテーションの発生を抑えることが、実用性の面で有効となる可能性を示している。

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図II.4.9.2-2 衝突板実験におけるスリット部流速と圧損の関係

 図II.4.9.2-3には、衝突板実験における浮遊性甲殻類の損傷率を示した。
 浮遊性甲殻類の損傷率は、衝突板を取り付けた方が衝突板無しに比べた場合に比べて高く、特に、激しいエロージョンの発生が観察された近距離の2.5mmでは衝突板無しの約2倍の効果が得られている。また、加圧してキャビテーションの発生を抑えた時は、ほぼ衝突板無しの場合と同じ効果であることから、衝突板を設置による集中的なキャビテーション崩壊が損傷率を高めている可能性が高い。
 よって、今回のスリットでは、キャビテーションはその発生だけでは効果に寄与しないが、衝突板の設置によって一カ所で集中的に崩壊させることで効果を発揮すると考えられた。しかも、衝突板の存在で圧損が増幅しないことから、機械的殺滅法の改良技術として有効な要素になり得ると判断された。
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図II.4.9.2-3 衝突板実験における浮遊性甲殻類の損傷率








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