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4.9 機械的殺滅法の効果および実用性向上検討実験
 前記、流速変化実験および減圧・加圧実験において、スリット状の隙間を均一に配置した試験片(以下、均一多スリット)の噴流ノズル装置では、水生生物に対する殺滅効果の主要因が剪断力であることを明らかにした。 そして、平成11年度に実施したミキサーパイプ法よりも効果および実用性の面で優れていると評価した。
 以降の実験では、さらなる効果および実用性の向上を目指し、本試験片に付加する技術要素の検討を行った。
 なお、付加する技術要素の評価を明確にするため、試験片を図II.4.9-1に示す単スリットに変更して実験した。
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図II.4.9-1 機械的殺滅法の効果および実用性向上検討実験に用いた単スリット試験片

 各実験に先立ち、単スリットの特性に関する実験を実施した。実験装置および方法は、基本的に流速変化等の均一多スリットの実験と同じである。
 図II.4.9-2には、浮遊性甲殻類に対する損傷率、図II.4.9-3には、スリット部流速と圧損の関係、図II.4.9-4には、管内流速とスリット部流速の関係をそれぞれ均一多スリットの実験データと共に示した。
 なお、管内流速とは、試験片前のパイプ管内流速のことで、次の式で算出している。
 
管内流速の計算式
   管内流速=計測流量/パイプ管内径49.5mm
 
 単スリットによる浮遊性甲殻類の損傷率は、同程度のスリット部流速の場合で明らかに均一多スリットよりも劣っている。この理由としては、単スリットではスリット部流速と管内流速に大きな差が生じることが考えられる。
 なお、単スリットの損傷率は多スリットに劣るが、圧損は大差なく、水生生物の殺滅に寄与しないエネルギーロスが大きいと考えられる。
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図II.4.9-2 単スリットと均一多スリットの浮遊甲殻類損傷率の比較

 
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図II.4.9-3 単スリットと均一多スリットのスリット部流速と圧損の関係の比較
 
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図II.4.9-4 単スリットと均一多スリットのスリット部流速と管内流速の関係の比較
 
4.9.1 スリット部流速と管内流速の関係実験
 実験に用いる単スリットの特性で、試験片前の管内流速とスリット部の流速の差が効果を左右している可能性が示された。そこで、本実験は、試験片前の管内流速を変えて、効果の違いを検討した。
 
(1)方法
 実験は、スリット部流速を25.3m/secに固定し、試験片前の管内に図II.4.9.1-1の内管を取り付けて管内流速を0.62m/secと速くした場合と、内管を設置せずに管内流速0.197m/secの場合で行った。
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図II.4.9.1-1 試験片前に取り付けた内管








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