4.8 流速変化および減圧・加圧実験のまとめ(機械的殺滅法のメカニズム)
流速変化実験および減圧・加圧実験結果を比較し、噴流ノズル(スリット状の隙間を均一に配置した試験片)の水生生物に対する損傷効果(殺滅効果)のメカニズムを検討する。
図II.4.8-1には、各実験のスリット部流速と圧損の関係を示した。キャビテーションの発生を抑えた加圧実験のスリット部流速と圧損の関係は、流速変化実験とほぼ同じであるが、キャビテーションの発生を増幅させた減圧実験では、流速が速くよりキャビテーションの発生が多い場合に若干高くなっている。この結果は、キャビテーションの発生が多少圧損を高めていることを示している。
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図II.4.8-1 流速変化実験および減圧・加圧実験におけるスリット部流速と圧損の関係
図II.4.8-2には、各実験のスリット部流速と浮遊性甲殻類損傷率の関係、図II.4.8-3には、圧損と損傷率の関係を示した。
キャビテーションの発生を抑えた加圧実験では、同じ流速でも流速変化実験の損傷率よりもやや高いが、キャビテーションの発生を増幅させた減圧実験では、わずかに低い損傷率となっている。ただし、この差は有意なものとは判断しがたく、損傷率にキャビテーションは寄与していないと考える。
したがって、スリット状の隙間を均一に配置した試験片においては、水生生物に対する機械的損傷効果は、剪断力によるものと考えられる。
なお、流速変化実験のスリット部流速25.7m/sec,圧損29.6mAqで得られた浮遊性甲殻類に対する殺滅効果約90%は、これまで有力な技術であると考えられてきたミキサーパイプ法による動物プランクトンに対する損傷率約65%(図II.4.8-4)が圧損約50mAqで得られた結果であること考えれば、本試験片を基本とする技術は、かなり実用性が向上した方法であると評価できる。
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図II.4.8-2 流速変化実験および減圧・加圧実験におけるスリット部流速と浮遊性甲殻類損傷率の関係
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図II.4.8-3 流速変化実験および減圧・加圧実験における圧損と浮遊性甲殻類損傷率の関係
図II.4.8-4 ミキサーパイプ法(圧損約50mAq)によるプランクトン損傷率