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自然と文化 第67号(ニホンミツバチの文化誌)

 事業名 観光資源の調査及び保護思想の普及高揚
 団体名 日本観光振興協会 注目度注目度5
ニホンミツバチをめぐる人・労働・自然
 佐治 靖
 
 「ヤマバチが来る」
五月の声を聞き、周囲の山並が淡い緑彩を塗り重ねていく頃、福島県の西部、会津盆地の南縁山地に位置する東尾岐では、こうした歳時を表す言葉を耳にする。
 ヤマバチ、この地方では、周囲の山野に野生する在来のミツバチ=ニホンミツバチをこう呼び習わしてきた。
 この季節、ここ東尾岐(行政区分としては会津高田町の一大字である)に暮らす人びとは、待ちかねたかのようにヤマバチを捕獲・飼養するための巣箱の準備に余念がない。もちろん、捕獲するといってもミツバチを虫網で捕まえるわけではなく、適所に巣箱を仕掛け、巣分かれした分蜂群が飛来し営巣するのを待ちうけるというものである。
 しかし、口でいうほど容易にハチ群が営巣するわけではない。また巣箱といっても、一定の規格を有し工場生産される箱状の巣箱ではなく、一見輪切りにした丸太と見間違うような態様で、人びとは、これをミツバチタッコと呼んでいる。
 確かによくみると、明らかに人が手を加え加工を施した道具であることに気づく。内部が朽ち果てウト(空洞)になった丸太などを利用し、内部を円筒形にくり貫き、上下の開口部には板を張りつける。そして円筒の胴下部の一角には、ハチが出入りするための小さな口が設けられている。
 冬を越し、およそ半年間放置されていたタッコの内部には、クモの巣がはりゴミがたまる。これらをきれいに取り除くことが大事なのだという。そして朽ちた上板、底板を打ち直し、さらに内部に光がもれ入らぬように肥料袋や遮光のビニールシートで上部を覆うのである。東尾岐のヤマバチの養蜂は、こうしたタッコ掃除から始まる。
ノキバに置かれたタッコに入る分蜂群(福島県東尾岐)
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◎ニホンミツバチの伝統的養蜂◎
 東尾岐に限らず、日本のいくつかの地域では山野に野生する在来のミツバチ−ニホンミツバチ(Apis cerana japonica Rad.)−を用いての養蜂が伝統的に行われてきた。そして今も行われている。
 このニホンミツバチを対象とした養蜂は、私たちが一般に見聞きしている養蜂とは全く異なるものである。今日、私たちの食卓に置かれる蜂蜜、春の訪れを思わせるミツバチが菜の花畑で蜜を集めて飛び回る光景。実はこれらが明治時代以降に日本に移入されたセイヨウミツバチ(Apis mellifera L.)の改良種を用い、その習性を巧みに利用して行われる近代的養蜂によるものであることを、私たちは意外に知らずにいる。
 ニホンミツバチとセイヨウミツバチ、同じミツバチでありながらも、この二種類のミツバチはサイズや習性などにいくつか違いがあり、セイヨウミツバチのサイズや習性を巧みに利用し開発・改良がなされてきた近代的養蜂においては、ニホンミツバチの利用が大変困難なのである註[1]
 このようにニホンミツバチによる養蜂は、セイヨウミツバチを用いた近代的養蜂とは異なる歴史を有し、一般には知られることなく山村を中心として日本のいくつかの地域に継承されるに留まってきたのである。こうした地域の生活文化の中にあってその伝統性を強く示し、また近代的養蜂と区別されることから、学術的にはこれをニホンミツバチの伝統的養蜂と呼んでいるのである。
 いうまでもなく、ニホンミツバチの伝統的養蜂はニホンミツバチの棲息分布と深い関わりの上に成り立っている。ニホンミツバチの分布状況をみると、北は本州青森県下北半島から、南は四国地方、九州地方長崎県対馬、鹿児島県大隅・薩摩半島まで広く棲息し、伝統的養蜂の分布も、ほぼ棲息域と重なるように青森県南部地方から九州宮崎県まで確認され報告がなされている。だが、その分布は、面的な広がりをほとんど示さず、ニホンミツバチが棲息を好む自然環境と深くかかわる生活様式を保持してきた山間地域を中心に点在するという様相を呈している。
タッコ設置の準備(同下・右上、右下、左上、左下の順)
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