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◎巣箱の形態[地域によって巣箱の形態、名称が違う]◎
 巣箱は各地によって形態が違っている。中国山地や紀伊山地地方では、木をくりぬいたドウ型の巣箱が使われている。ドウ型のものは、各地で使用されており、使い方は同じであるが、各地で呼称が違っている。ドウ型の巣箱は、九州地方、中国地方、紀伊山地地方の山地対帯でみられる。長崎県対馬地方、宮崎県椎葉村でも使われており、特に対馬地方では、山肌の岩場や家の周りの何ヶ所も置いてあるのは特筆すべき点である。
 紀伊山地地方の奈良県十津川村では、ニホンミツバチの飼養が広範囲に行われており、この村に隣接する町村の和歌山県本宮町、和歌山県熊野川町、三重県紀和町、和歌山県中辺路町、和歌山県龍神村においてもニホンミツバチの養蜂が行われている。巣箱はドウ型と立方体型の二種類の形態が見られる。
 対馬地方の巣箱は、木をくりぬいたドウ型が比較的多いが、最近は、直方型の箱の巣箱もみられるようになったようである。対馬地方では、巣箱を「ハチドウ」と呼び、スギ材がよく使われている。
表[1]巣箱の形態分類表―( )は巣箱の名称
  A B C D E




ドウ型 長方体型 積み重ね型 立方体型 桶型
  地上設置 吊り下げ 地上設置 吊り下げ 地上設置    



長崎県
対馬
(ハチドウ)
宮崎県
椎葉村
(ウト)
  長崎県
対馬
(ハチドウ)
宮崎県
椎葉
(ウト)
       



島根県
柿木村
(ミツドウ)
広島県
作木村
(ミツドウ)
島根県
旭町
(ミツドウ)
島根県
柿木村
(ミツドウ)
島根県
佐田町
(ミツドウ)
島根県
弥栄村
(ミツドウ)
島根県
三隅町
(ミツドウ)
   





和歌山県
古座川町
(ゴーラ)
和歌山県
熊野川町
(ゴーバ)
和歌山県
熊野川町
(ミツバコ)
奈良県
十津川村
(ウト)
        奈良県
十津川村
(ハコ)
奈良県
熊野町
(ゴバ)
 



愛媛県
美川村
(ミツドウ)
愛媛県
美川村
(ミツドウ)
         



            長野県
大鹿村
(未調査)
長野県
上村
(未調査)
z0050_02.jpg
[7]分蜂のニホンミツバチの一群を採取する道具、ハチトリテボをもって右上のカラドウに入れるところ(長崎県対馬)
(拡大画面: 103 KB)
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[8]ハチトリテボの図
 長崎県対馬地方では分蜂の際、「ハチトリテボ」とよばれる竹籠を採取に使う。ハチドウから出た巣分かれのニホンミツバチの一群が木の枝や幹に留まり、大きな固まりとなる。これを養蜂家は「ハチトリテボ」の中にニホンミツバチの一群をゆっくりと入れこみ、入れこんだ後に「ハチトリテボ」である竹籠の口に付けていた布を下ろして絞り採取する。「ハチトリテボ」に入れたニホンミツバチは、ハチドウの下方からシャモジで静かに入れられる。紀伊山地地方の和歌山県古座川町では、網トリのタモで分蜂群を捕るが、対馬地方と同様な方法でドウの下方からニホンミツバチを入れる。和歌山県古座川町では分蜂時期になると黒く塗られた桶をぶら下げる。ニホンミツバチが巣分かれで、桶にとまればそのまま、ミツバチ群を桶ごと静かに移動させ、ドウの下方から入れる方法をとる。いずれも同じ方法がとられている。ニホンミツバチは、女王バチが巣箱に入れば、それにつられて働きバチ、雄バチも自然に入っていくのである。








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